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事例|ハーゲンダッツ ジャパン 5250をオープン化・拡張したシステムで、社内のデータ活用・分析が活性化

ドリルダウンやExcel連携を追加したBIライクなシステムを導入

 

「大人向け高級スイーツ」へ
アイスクリームの概念を変える

日本のアイスクリーム市場は2012年以降、右肩上がりで成長を続けている。2016年の市場規模は4939億円となったが、これは対前年比で約300億円、10年前(2007年)と比べて約1200億円の増加である。こうしたなかでとくに顕著な伸びを見せているのが「プレミアム・アイスクリーム」で、そのシェアトップを長年にわたって保持してきたのがハーゲンダッツ ジャパンである。

ハーゲンダッツ ジャパンは1984年に設立され、それまで「子供用のおやつ」と考えられていたアイスクリームを「大人向けの高級スイーツ」として認知させ、新しい市場を開拓してきた輝かしい歴史をもつ。「Shall we Haagen-Dazs?」という粋なテレビ・コマーシャルを記憶している人も多いだろう。従来は、自社店舗での販売(ショップ事業)とスーパーやコンビニエンスストア向けのグロッサリー事業を展開していたが、現在はグロッサリー事業に集中し、業績を伸ばしている。

同社のシステム化は会社設立時から始まり、1992年にメインフレームをAS/400に切り替えて以降は、代々、IBM i上で基幹システムを開発し運用してきた。情報システム部マネージャーの竹下新一氏は、「IBM iのよいところは、抜群の安定性に加えて、サーバーの処理性能をCPWで明示している点です。これによって、次にどのサーバーを選択すべきか、ユーザーの視点で的確に判断できます」と、IBM iを支持する理由を話す。今年2月には基幹サーバーをPower 720(IBM i 7.2)へグレードアップし、ストレージをオールフラッシュのIBM FlashSystem 900へ切り替えるなどの大幅な基盤強化を実施した。

 

情報システム部マネージャーの竹下新一氏

単なるオープン化ではなく
プラスαを求める

同社のIBM i利用は25年を超えるが、そのなかで大きな節目となったのは、5250画面のオープン化である。

「5250は社員全員が利用する安定した環境でしたが、リッチなGUIをもつPCやタブレットが普及するのに伴い、5250のユーザーフレンドリーでない部分が目立つようになりました。そこで、“5250からの脱却”をスローガンに2011年にスタートさせたのが、5250画面のオープン化です」(竹下氏)

ただし、この取り組みは「単純なオープン化では投資効果が小さいと考え、当初からプラスαのオープン化を念頭に置いていました」と、竹下氏は述べる。そして折よく5250のオープン化を提案してきたSIベンダーのソフラにシステムの一部の改修を委託し、プラスαの内容を確認することにした。情報システム部の小高友二氏は、「ソフラの開発ツールであるSOFLAへの期待と、SOFLAが既存システムのロジックを変更せずにオープン化できる点が、選択のポイントでした」と振り返る。

 

情報システム部の小高友二氏

 

SOFLAを用いてオープン化されたシステムは、両氏が「期待以上の出来栄え」と口を揃える内容で、マウスによる画面スクロールやグリッドの自由な並べ替えなどOfficeツールに似た機能と操作感を実現していた。同社ではこの成果を高く評価し、ソフラを外注先として、全基幹システムの5250画面のオープン化と「BIライクなシステム」の開発に踏み出すことになった。

BIライクなシステムとは、既存システムのオープン化と同時に、ドリルダウンやExcel連携などBI的な機能を追加したシステムである。

実は同社には、1990年代にBIツールを導入して20年近く利用してきた経験がある。アイスクリーム市場は、季節の移り変わりや気候の変動、人々の嗜好の変化に敏感に反応するので、マーケットの多角的な分析が欠かせないのである。従来は、営業や企画担当者などが5250で販売実績や在庫データを確認し、必要に応じてBIツールを利用していたが、「操作が煩雑で、やや難解」(竹下氏)だったため、広くは利用されていなかった。「ユーザーのITスキルによって活用のレベルに大きな差が生じてしまうBIシステムでした」(竹下氏)

AI活用のデータ抽出・
分析システムを構想

新たに開発したBIライクなシステムには、商品別・得意先別・店舗別などでデータを簡単に抽出でき、ドリルダウンによる詳細情報の確認や、グラフ表示を容易に行える機能をもたせた。さらにレスポンスに「3秒ルール」を設け、すぐに結果を表示できるようにした。

「BIライクなシステムの導入以降、ユーザーの間でデータの利用・分析が活発に行われるようになりました。この導入は、当社にとって大きな転換点となりました」と、竹下氏は総括する。

ただし同社では、5250のクエリーメニューを現在も利用中である。小高氏は、「BIライクなシステムによって多様な分析が行えるようになりましたが、それでもカバーできないデータがある場合、システム部門でクエリーを作成し、汎用性のあるものをメニュー登録しておけば、ユーザーは簡単に利用できます。この簡便性が5250を手放せない理由で、BIライクなシステムでこうした要求にどう対応していくかが今後の課題です。ユーザーからのデータ抽出の要求は、以前は多数あり、年間100本程度のクエリーを作成していましたが、BIライクなシステムの導入以降は半減しました。導入効果の1つと見ています」と説明する。

竹下氏は現在、「将来的な構想」として、AIを活用した情報検索・分析システムの検討を進めている(図表1)。

 

図表1 画像をクリックすると拡大します】

 

「当社の業務データは社内のさまざまなシステムに分散していますが、それらを取り出せるのはデータの所在と、システムごとに異なる抽出方法を知っている人のみで、その2次活用もユーザーのITスキルによってばらつきがあります。そこで、テキストや音声でリクエストすれば、データの所在を意識せずに抽出でき、スキルにかかわらず高度な分析を行えるシステムを構想しています。AIの活用によって、そう遠くない将来に実現できるのではないかと考えています」(竹下氏)

このシステムが実現すれば、同社にとってまた新たな転換点となりそうである。

 

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COMPANY PROFILE

ハーゲンダッツ ジャパン株式会社
本社:東京都目黒区
設立:1984年
資本金:4億6000万円
売上高:502億円(2016年度)
従業員数:224名(2016年12月末)
事業内容:アイスクリームなど乳製品、氷菓および菓子その他食料品の製造・販売
http://www.haagen-dazs.co.jp/

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i Magazine 2017 Winter(11月)掲載

 

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