エンジニアとは課題を探し出し その課題を解決する/したいと思う人|TEC-Jプレジデント 倉島菜つ美氏に聞く

TEC-J

IBM TEC-J (Technical Expert Council-Japan)は、日本IBMの自由な技術者コミュニティである。米国のIBM技術アカデミーと連携しながら、多様なテーマを研究し、ボランティアベースの研究チームを編成するなど、活発に活動している。そのプレジデントである倉島菜つ美氏に、TEC-Jの意義とその活動内容を聞く。

喉が渇くと水を欲するように
エンジニアは技術情報を求める

 

IS magazine(以下、IS) 倉島さんご自身はいつからTEC-Jに関わっていらっしゃるのですか。

倉島 15年以上も前のことですが、スタッフ専門職に昇格したときに、会社からTEC-Jというグループがあることを案内され、初めてTEC-Jのことを知りました。当時はスタッフ専門職になると自動的に案内がきていたのです。それで面白そうだと思って、「要求工学SIG」というワーキンググループに参加しました。

 私は入社以来、ほとんどサービス部門に所属し、システムズ・エンジニアとしてお客様への提案から導入支援までを担当してきたのですが、入社して10年目あたりから、アーキテクトになりたい、エンジニアリングを究めたいと思うようになりました。

 それは、お客様への提案をまとめるにしても上流工程でやるべきことをきちんと理解し身につけないとうまくいかないということを、入社以来の経験で痛感していたからです。言い換えれば、お客様の業務要件をどう整理して解決するか、要件定義をどう詰めていくかということに、難しさと同時に興味も覚えていたのですね。

 要求工学SIGでは、大先輩のアーキテクトや先輩・同僚のSE・技術者からいろいろなことを学びました。それまでは、仕事に関わるスキルは仕事のなかで習得するものと考えていたのですが、要求工学SIGに参加して、それ以外の方法もあることを実感しました。本当にいろいろな刺激を受け、自分から本気で勉強しようと思ったのも、そのときが初めてです。

IS 日本IBMのなかで、TEC-Jという技術者コミュニティを運営する意義は何でしょうか。

倉島 私のなかでは、喉が渇くと水を欲するように、エンジニアは技術情報を求めるものだという感覚があります。ふだんの仕事だけだと、どうしても技術や知識が偏ってしまいますから、ほかでどのようなことをやっているのか、どんな技術が使われているのかについてとても敏感で、そうした情報に常に飢えていると思っています。

 それと、私のいるサービス部門のようなお客様に向き合う現場では、機能や品質が実証されているProvenな(確かな)技術しか扱いませんので、先端的な技術やその動向に関する知識が乏しくなりがちです。反対に、基礎的な研究をやっている人たちは、お客様が今何を望んでいるのか、どちらの方向を向いているのかがよくわからないと言います。

 TEC-Jは、そのような思いを抱いているエンジニアたちの交流の場として機能しています。通常の業務では接点のない人たちと、立場や年齢、世代を超えて自由に話ができ、人的ネットワークを広げることができます。そして自分を高め、テクニカルバイタリティを発揮できる場ともなります。

 

 

ITの主要テーマをカバーする
ワーキンググループの活動

 

IS 情報を得るためだけではなく、自分を啓発する場でもあるのですね。

倉島 もう1つのメリットは、グローバルと直接つながるチャネルでもあるということです。IBMはグローバルな会社ですが、日々の仕事は必ずしもすべてがグローバルな組織と関わるというわけではありません。むしろ、日本のお客様をご支援するようなプロジェクトなど、国内の組織で完結するものも多く、人によってはなかなかグローバルとつながるチャンスがないと感じている人もいるのではないでしょうか。それがTEC-Jという場を通してなら、自分でドアを開けてグローバルとつながることが可能です。

IS 今年は69のワーキンググループが活動しているとのことですが、何か感想はありますか。

倉島 昨年より10ほど増えましたが、世の中の主要なトピックスをほとんどカバーしているという印象です。TEC-Jはとにかく、やりたい研究があれば自主的に名乗りを上げるか、すでにあるワーキンググループに参加するという自由な活動スタイルですから、自ずからバラエティに富んだワーキンググループが揃う結果になります(図表1、図表2)。

IS TEC-Jの今年の活動テーマは何ですか。

倉島 まず活発であろう、ということです。TEC-Jのようなコミュニティは活発でなければ人が集まりませんし、なかから新しい動きも出てきません。元気よく活動していることを多くの人に知ってもらい、存在感を高めていきたいと考えています。

IS 具体的にはどのような活動ですか。

倉島 1つは情報発信です。社内外のブログへの投稿を精力的に増やしていくつもりです。社外向けの「THINK Blog」にはメンバーが定期的に投稿していますが、もう少し柔らかい話題も含めて、社内外のブログへの投稿頻度を上げていきます。

 さらに、中途入社の人に対して参加を促す活動に取り組みます。IBMでは最近、中途入社する人が増えていますが、そのなかにはIBMの技術力やグローバル企業であることに魅力を感じて入社した人もたくさんいるようです。そうした人には、ぜひTEC-Jに参加してもらい、IBMならではの醍醐味を味わってほしいと思っています。

 

 

課題発見へのマインドと
テクニカルバイタリティ

 

IS 倉島さんにとって、あるべきエンジニア像はどのようなものですか。

倉島 エンジニアとは何かの課題を解決する人、あるいは解決したいと考えている人だと思っています。サービス部門にいるのならお客様の業務課題を解決する人がエンジニアであり、研究・開発部門なら技術の基礎的な課題を解決する人がエンジニアです。

 しかし、課題が最初から明らかになっていることはほとんどありません。だからエンジニアとは、解決すべき課題を自分で探し出してくる人だとも言えます。

 開発のプロジェクトに入ると、お客様自身さえ認識していない課題がたくさんあることに気づきます。また、お客様が考える課題解決の方向が私たちから見て正しくない、と思えることもよくあります。そういうときは、課題自体を徹底して洗い直すことが必要になってきます。

 その端的な例が、デジタルトランスフォーメーションでしょう。世の中にまだないものを創造するときは、既存の枠組みのなかで課題を設定しても、何も新しいものは生まれてきません。考え方や着眼点を転換し、課題を発見していくことが必要です。TEC-Jは、そういうマインドとテクニカルバイタリティをもつエンジニアが活発に、いきいきと活動できる場にしたいと思っています。

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TEC-Jワーキンググループのカテゴリー(2019年)
TEC-Jワーキンググループ(2019年)

[IS magazine No.23(2019年4月)掲載]