事例|辰巳鋼業株式会社 ~国産オフコンからIBM iへ COBOLのストレートコンバージョンを実現

本 社:愛知県小牧市
設立:1965年
資本金:3000万円
売上高:19億円
従業員数:31名
事業内容:各種鋼材・鋼板の販売および加工、シャーリング加工、レーザー切断加工、曲げ加工など
http://sheetmetal.jp/tatsumi/

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国産オフコンが販売を終了
新しいサーバー環境へ移行

 辰巳鋼業は2019年3月、国産オフコン上で長年にわたり運用してきたCOBOLプログラムのストレートコンバージョンを完了した。コンバージョンの新しい受け皿となったのは、Power SystemsとIBM iである。

 新たなシステム環境を得て、これまでは実現が難しかった新規ニーズへの対応が可能になり、一気に取り組みが進んでいる。IBM iへのマイグレーションの経緯を、以下に詳しく紹介しよう。

 同社が国産オフコンを導入し、販売管理を中心とする基幹システムをCOBOLで構築したのは1987年である。それ以降の約30年間、プログラムの改良と追加開発を重ねつつ、基幹システム用ミドルウェアを利用して、国産オフコン上で開発したCOBOL資産を継承してきた。

 これまでは約6年のサイクルでハードウェアリプレースを実施しており、直近では2013年に新規マシンに更新した。しかしそのリプレースからいくらも経たないうちに、オフコンメーカーが該当製品の販売終了を発表した。製品販売は2015年1月、保守用部品のサポートは2020年3月に終了すると伝えられた。

 今までのリプレースサイクルに沿うならば、次期更新のタイミングを迎える2019年までには、新しいサーバー環境への移行を完了せねばならない。そこで2017年秋ごろから、宮原幹郎取締役を中心に、本格的な移行検討・計画策定作業をスタートさせることになった。

 同社には、ほかの業務と兼業しながらITを担当するスタッフ1名が総務部に所属しているが、基本的に情報システム部門をもたない。ハードウェア面からはリコージャパンが運用を支え、アプリケーション面の開発・保守は、名古屋に本社を置くニューロン・ネット・ジャパンが担当してきた。両社と緊密に連携しながら、これまで一度も社内に情報システム部門を擁することなく、システムの運用を円滑に継続してきた。

  そこで次期プラットフォームの検討は、この2社と相談を重ねながら進めることになった。

 

業務要件の反映と導入コスト削減
資産継承をクリアする

 検討対象となった移行案は、以下の4つである。

(1)IBM iを対象にしたCOBOLのストレートコンバージョンを実施
(2)IBM i上で新規に業務システムを開発
(3)オープン系サーバーを対象にしたCOBOLのストレートコンバージョンを実施
(4)オープン系サーバー上で業務パッケージ製品を導入

 つまりサーバー環境としてはIBM i、もしくはオープン系サーバー。システムの実現手法としてはCOBOLのストレートコンバージョン、業務パッケージ製品の採用、スクラッチでの新規システム開発という選択になる。

「国産オフコンメーカーが製品販売を終了しなければ、今もそのままオフコンを使い続けていたと思います。そのぐらい業務要件をきめ細かく反映しており、完成度の高いシステムとして運用してきました。業務パッケージを採用しても、おそらく同じレベルでは要件を満たせず、カスタマイズ開発が増えて費用が膨らむと予想されました。またスクラッチで新規開発すれば、想定していたよりコストが嵩むことが判明し、リスクも生じると考えました」と語る宮原氏は、さらに以下のように続ける。

「WindowsではOSのバージョンアップのたびに、アプリケーションの改修作業が生じることも問題でした。業務要件の踏襲、導入コストの削減、今後のアプリケーション保守や資産継承性、そして今まで利用してきたオフコンの運用性と近いなどの点を考え合わせた結果、IBM iへのストレートコンバージョンが当社にとって最もふさわしい選択であると判断しました」

宮原 幹郎氏
取締役

 

 ちなみに、イグアスの販売パートナーであるリコージャパンはPower SystemsとIBM iの導入実績が豊富で、COBOLのストレートコンバージョンについても多くの実績があったこと。さらにニューロン・ネット・ジャパンがIBM iのアプリケーション開発・保守にノウハウがあったことも、最終決定に至る大きな判断材料になったようだ。

 
半年間の作業で
ストレートコンバージョンを完了

 リコージャパンがIBM iへのストレートコンバージョンを提案したのは2018年3月、正式決定は同年10月である。約半年のコンバージョン作業を経て、2019年3月に無事に本稼働を開始した。その間のスケジュールと作業内容は、図表1のとおりである。

 

 コンバージョンに伴うアプリケーション移行などの全作業は、NCS&Aが担当している。同社が提供するプログラムの可視化・分析ツールである「REVERSE COMET i」により、既存のCOBOL資産を解析し、移行対象プログラムを絞り込んだ。さらに独自のマイグレーションツールにより、既存のCOBOL資産を、IBM i上のILE COBOLに変換している。

 またデータの移行やテストシナリオの作成、単体テストや受け入れテストなどはニューロン・ネット・ジャパンが担当した。ツールでは自動変換できない一部のプログラムに対する手作業の変換作業や、モジュールと異なるバージョンのソースが存在した場合の対処なども、ニューロン・ネット・ジャパンが実施し、本稼働後のアプリケーション保守も、以前と変わらずに同社が担当することになった。

 国産オフコン時代とできるだけ違和感のないように5250画面やメニューの操作性を設計しているが、本稼働直後は、30年近く運用されてきた画面との違いに当惑するユーザーもいたようだ。しかしすぐに新しい操作環境に慣れて、今では順調な運用が続いている。

 

ロット管理による
トレーサビリティの実現へ

 業務要件の変更を一切加えないストレートコンバージョンを実現した2018年10月?2019年3月を第1フェーズとするなら、第2フェーズに位置づけられるのが、本稼働後から今年夏までの約半年間である。

 ここでは、基幹データを自由に加工・分析できるBIツールとして「WebReport 2.0」(JBCC)を導入。国産オフコン時代もデータ加工を実施していたが、IBM i導入後はさらに高いレベルのデータ活用が可能になると期待されている。

 またドットプリンタからレーザープリンタへ移行し、カット紙の利用によるコスト削減やペーパレスの実現も、第2フェーズで予定されている。

 さらに第3フェーズの大きな目標として掲げられているのが、鋼材のロット管理を実現することである。

 出荷した鋼材に何らかの品質不良や不具合が万一発生した場合、製造から納品までの履歴を管理するトレーサビリティシステムがあれば、いち早く該当製品の所在を明らかにし、安全性を担保し、問い合わせにも迅速に対応できる。

 同社では数年前から、経営陣よりこうしたロット管理を軸とするトレーサビリティシステムの実現を要請されていた。今回、IBM iへの移行により先進的なIT環境を確立できたことで、トレーサビリティシステム実現への扉が大きく開いたと考えられている。

「ただしロット管理によるトレーサビリティシステムを実現するには、工場内への無線LANやバーコードプリンタ、ハンディターミナルなど新たなハードウェア機器の導入に加え、アプリケーションプログラムの改修や追加開発が必要となります。さらに製造から出荷までの現場作業を見直すなど、運用面での変更も不可欠です」と語る宮原氏。

 時期は未定としつつも、こうした検討や業務改善の取り組みを慎重に進めながら、できるだけ早いタイミングでロット管理を実現したいと考えている。

 IBM iへの移行により、最新技術に対応する新たなシステム環境を確立した同社は、こうした新しいニーズに、今後積極的に取り組んでいくことになりそうだ。

 

[i Magazine 2019 Autumn掲載]