Home ハイパーコンバージド-システム基盤改革 新型コロナ対応:テレワークの次は何が必要か  ~Withコロナ・New Normal時代の企業システムを考える

新型コロナ対応:テレワークの次は何が必要か  ~Withコロナ・New Normal時代の企業システムを考える

by kusui
COVID-19

本レポートを執筆している5月20日現在、
新型コロナウイルス(以下、新型コロナ)の感染者数は全世界で490万人以上、
死亡者数は32万人を超え、今なお増え続けている。
日本では政府による緊急事態宣言が一部の都道府県を除いて解除され、
収束の方向へ向かいつつあるように見えるが、ワクチンの開発は1年以上先になると見られ、
第3波・第4波の感染流行も強く懸念されている。
そして新型コロナの終息後も、コロナ以前の世界には戻れないとの見方が大勢だ。
こうしたなか、企業情報システムはどのような対応が必要だろうか。

 

 

テレワークが急速に普及
その利用実態は?

 

 新型コロナウイルスの感染流行が日米欧で問題となり始めた2月以降、従業員・顧客・取引先の安全確保のために在宅勤務への切り替えが進み、テレワークの導入・利用が活発になった。とくに政府「緊急事態宣言」の発令(4月7日)以降は、急速に導入・利用が進んだものと見られる。

 一方、テレワーク製品・サービスを提供するベンダーの動きも活発だ。ビデオ会議サービス「Zoom」は昨年12月のユーザー数が今年4月には30倍の3億となり(全世界)、日本でも爆発的にユーザー数を伸ばしている。同様に、マイクロソフトの「Teams」やシステムシステムズ「Webex」などの販売数も高い伸びを見せている。

 しかし、日本のユーザー企業の間で急速に普及しつつあるとは言え、その実際の利用率(実施率)は全企業の20〜30%程度のようだ。3月と4月の2回、市場調査を行ったパーソル総合研究所によれば、4月中旬時点のテレワーク実施率は全国平均で27.9%。また4月初旬に調査したNTTデータ経営研究所によると、テレワークに取り組む企業は2月以降、毎月6.5%以上増加し、1月・4月の対比で2倍以上となったものの、週3〜4回以上利用する人は全国平均で20.0%という結果だった(東京は36.5%)。

 

テレワークが業務・ビジネスを
変革する起爆剤になる

 

 とはいえ、今回のテレワーク利用が一過性のものに終わらず、働き方や業務、ビジネスのやり方を根本的に変革する起爆剤になりそうな兆しが見えている。

 トヨタ自動車の豊田章男社長は、4月7日の政府「緊急事態宣言」以降、愛知県の研修センターに籠ってテレワークを行った。そしてその結果として、「移動時間が80%減、人との接触時間が85%減、会議時間が30%減、会議資料が50%減」になったが、その経験から「新型コロナを機に、(事業・業務の中で)一気に止めること、一気にやり方を変えること、新しいトヨタに向けてアクセルを踏むものが出てくる」と、5月12日の同社決算発表会で語った。

 また、日本電産の永守重信会長兼CEOは、「50年、自分の手法がすべて正しいと思って経営してきた。だが今回、それは間違っていた。テレワークも信用していなかった。収益が一時的に落ちても、社員が幸せを感じる働きやすい会社にする」と、日本経済新聞のインタビューに答えている(4月20日)。

 もっとも、今回のテレワーク利用は応急措置的な意味合いが強く、本格的な活用・定着のためには、改善の余地が多々ありそうだ。

 コンサルティング会社のマッキンゼー・アンド・カンパニーは4月3日発表の緊急レポートで、在宅勤務者の生産性と仕事への関与を高めるには、社内体制(勤務制度、目標管理など)、プロセス(業務としてのワークフロー)、テクノロジー(人間工学的に効果的な環境)の充実と人へのケアの4つが重要性であると指摘している(「COVID-19:ブリーフィング・ノート」)。今後、テレワークが働き方・業務の1つのベースになるには、その経験と技術の進展を踏まえて、それ自体も改善していく必要がありそうだ。

これからの企業システムは
人命を守ることが最重要

 

 新型コロナの先行きが予断を許さず、ワクチンの開発も1年以上先になると予測されている現在、従業員・取引先・顧客の安全を守りつつ業務・ビジネスを遂行するという状況が長く続くのは確実だ。そして、「Withコロナ」「ニューノーマル(New Normal)」という言葉が象徴するように、コロナ以前の世界へ戻るのは困難という見方が大勢である。

 企業システムが新型コロナのような状況に直面するのは、1950年代にシステム化の歴史が始まって以来、初めてのことである。10年ほど前に、新型インフルエンザの世界的な大流行への備えとして「パンデミック対策」が唱えられたが、日本における死亡者数が感染者数(推定900万人超)の割に少なかった(68人、疑いを含む)こともあり、一過性の備えに終わった経緯がある。

 新型コロナのような生命への脅威が日常的に身近にある世界の企業システムは、利用者・開発者・運用担当者の人命を守ることが最重要の鉄則となり、それへの対応が必須となるだろう。今回のテレワークも、人から人への感染を防ぐ、人命を守るための仕組みとして使われている。従来の、主として通勤難の解消や育児・要介護者を抱えた従業員向けの在宅勤務用の使い方とは本質的に意味が異なる。

 

ニューノーマル時代の
デジタル基盤の再構築へ

 

 これから到来するニューノーマル時代の企業システムは、企業にとって真の事業継続性は何か、競争力を創出するものは何かをあらためて問い直すところから始まると思われる。

 3月以降、筆者の周りで「営業ができなくなった」「開発プロジェクトが遅れている」「在宅勤務となったため業務を継続できなくなった」という声をたくさん聞いた。

 こうした3月以降の経験と教訓は、今後、企業の全領域において業務・システムの再点検を促し、たとえばオンライン営業やリモートから操作可能な業務システムの構築など、新しい仕組みの導入を活発化させるだろう。それは、言い換えれば、企業のデジタル基盤の再整備・新規構築ということである。

 既に、エンタープライズ・アーキテクチャから見直しを図るべきとの議論も起きている。そのなかには、危機・変化への対応力を高めるための全社的なコンポーネント・ベースの仕組みや、AI・iPaaS・RPAなど複数のツール/サービス/技術を組み合わせるハイパー・オートメーションなどの提唱もある。

 新型コロナへの対応は、企業において現在も続けられている。新しいシステム基盤への取り組みという点では、まだ緒に就いたばかりであり、これからという段階にある。今後のシステムの最重要事項が「人命を守る」ことにあるならば、より人間的なシステムを構築する端緒でもある。

COVID-19 i Magazine future Sytems

[IS magazine N0.27(2020年5月)掲載]

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