Home Watson-AI フィールド・テクニカル・アドバイザー | 故障や不具合に応じた最適な修理情報をフィールドワーカーに提供 ~現場からのフィードバックを学習データとして取り込む | Watson Solution Book●日本IBM

フィールド・テクニカル・アドバイザー | 故障や不具合に応じた最適な修理情報をフィールドワーカーに提供 ~現場からのフィードバックを学習データとして取り込む | Watson Solution Book●日本IBM

by kusui

 

Discoveryを中心に
多彩なAPIを組み合わせる

 現場で故障や不具合の内容を確認し、そこから類似する過去の履歴や対応マニュアル、ドキュメントなどを探して、現場作業員、いわゆるフィールドワーカーを支援するのが「フィールド・テクニカル・アドバイザー」である。

 昨今は1人のフィールドワーカーで担当する製品の領域が広がり、種類が増え、複雑さも増している。それに伴い必要な知識やノウハウ、担当者に求められるスキルは高度化している。

 しかし誰もが、担当する全製品に関して十分な知識やノウハウ、経験を備えるわけではない。現場で解決できない場合は、バックエンドに控える技術支援部隊に問い合わせることになるが、必然的に修理の工数が増え、バックエンド部隊の負荷も増大していく。そこで個人の力量に左右されずに、できるだけ現場でスムーズにトラブルシューティングを完了させたいというのが、フィールド部門を有する企業が共通に抱える課題である。

「フィールド・テクニカル・アドバイザー」は、こうした課題解決に向けて誕生した。基本的には導入を検討する企業に要件をヒアリングし、APIとアプリケーション開発を組み合わせることでそれらの要件を実現する、IBMではいわゆる「ソリューション」と呼ばれる提供形態である。

 中心的な役割を果たすAPIは、「Watson Discovery Service」(以下、Discovery)である。Discoveryのなかに、現場で必要なマニュアルやドキュメントなどのコンテンツを、インデックスという形で蓄積し、検索した結果をランキング付けして表示する。

 Discoveryでは自然言語による検索が可能だが、フィールドワーカーへの質問を繰り返し、検索のための情報を的確に引き出すナビゲーションの仕組みが必要な場合は、「Assistant」を利用してチャットボットを作成し、Discoveryと連携させることも可能である。

 また物理的な故障である場合は、現場で撮影した画像を「Visual Recognition」で認識させ、故障の種類を特定し(たとえば部品の欠損や劣化・腐食の具合など)、それに役立つコンテンツを探し出す。

 こうしたAPIはすべてIBM Cloud上で利用するが、企業によっては、個人情報などを含む一部のセキュアな情報についてはクラウドでの運用をためらう場合がある。そうしたケースでは、「Watson Explorer」をオンプレミスで導入し、情報の性質に応じてDiscoveryと使い分ける(なかにはWatson Explorerのテキストマイニング機能を評価し、その分析機能と組み合わせて使用するケースもある)。

 さらに「Watson Knowledge Studio」(以下、WKS)を組み合わせるケースもある。Discoveryは検索の精度を高めるために、テキストに意味付けする「Natural Language Understanding」(以下、NLU)というAPIを内蔵している。

 しかしフィールドエンジニアが現場で使用するのは、業界・業種の特殊な、あるいは企業独自の専門用語や製品名・部品名であり、NLUの備える標準モデルでは対応できないケースが多い。そこでWKSにより、専門用語に対応できるように機械学習ベースのカスタム言語認識モデルを作成し、これをDiscovery(もしくはWatson Explorerなど)に取り込んで利用する。

「フィールド・テクニカル・アドバイザー」では、Discoveryが中心APIとなるが、それ以外は上記のようなAPIをユーザー個々の要件に応じて組み合わせることになる。

 

 

本番運用をスタートしたあとが
Watsonの本番である

 現在は、現場に紙の分厚いマニュアルやドキュメントを携行せず、タブレットなどのモバイルデバイスで検索しながら参照可能にするケースも見られる。

 しかし単純な検索では、該当するトラブルに最適な対応方法を探し出せるとは限らない。また分厚いマニュアルのどのページに、求める参考情報があるかもすぐにはわからない。そこでDiscoveryのようなAI検索・分析エンジンが効果を発揮する。

 Watsonは「本番運用をスタートしたあとが、本番である」と言われる。本番開始後も学習を継続し、役に立つ仕組みとして育てていくことに価値がある。

 W&CP事業部 ワトソンソリューション担当の田中孝氏は、単純な検索と比べてDiscoveryのような仕組みを使用するメリットは2つあると、次のように指摘する。

 

田中 孝氏 日本アイ・ビー・エム株式会社 W&CP事業部 ワトソンソリューション担当

 

「まず通常の検索では、頭のなかで情報を整理し、目的の情報を探すのに適切なキーワードを考える必要があります。それで探せなければ、何度もキーワードを考え直さねばなりません。しかしWatsonであれば、目の前で確認した状況や不具合の内容を、自然な言葉で入力していけば情報を探してくれます」

 つまり頭のなかで、適切なキーワードに変換する必要がないわけだ。さらにもう1つのメリットについて、田中氏はこう続ける。

「得られた回答に対して、常に現場から『この情報は役に立ったかどうか』をフィードバックしていくことで、Watsonは学習していきます。フィードバックを学習データとして取り込むことで、今蓄積しているコンテンツのなかから最適な回答を選ぶ精度を高められるのに加え、質問文そのものを分析していくことで、今足りていない情報は何かがわかります。つまり『今あるコンテンツでは現場の役に立たない』、あるいは『現状のコンテンツでは対応できない障害が増えている』ことに気づけるわけです。Watsonが学習することと並行して、情報を新たに加えコンテンツを補強できるという点でも有効です」

「フィールド・テクニカル・アドバイザー」は海外での利用が先行したものの、最近は国内でも導入事例が見られ始めた。PoCで検証を進め、有効な結果を得て次の段階に進むケースも増えている。フィールドサポートの現場で、Watsonが活躍する日も遠くなさそうだ。

[IS magazine No.21(2018年9月)掲載]

 

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