カネサ藤原屋|本社移転に合わせて、中型UPSの導入と発電機のレンタルで、「完全ではないが最適解」のBCP対策を実施

 

酒類などをホテル・飲食店向けに販売するカネサ藤原屋は、この3月に本社を移転した。移転のタイミングでIBM iを新しいモデルに切り替え、BCPに関して新しい対応策を講じた。システム担当の富樫修平氏は「完全なBCPではなく、ある程度妥協したBCP。しかし最適解」と言う。

 

 

IBM iを最新モデルに切り替え
スムーズな移設を完了

 ホテル・飲食店などへの酒類・飲料水・食料品の販売を行うカネサ藤原屋は、今年3月に仙台市宮城野区に建設した新社屋に本社を移転した。それまでの若林区にあった本社屋・物流センターの3倍以上の広さをもつ社屋で、「今後の事業拡大の足がかりとなる拠点」(業務部システム課の富樫修平課長代理)である。

 

富樫 修平氏 業務部 システム課 課長代理(職位は取材当時)

 

 同社は、1916(大正5)年に仙台市で酒類・食料品店を開業したのがスタートである。それから今年で100年目を迎えた。1960年代までは地域の小売店として事業を営んできたが、1970年代に入ってから営業網の積極的な拡大に転じ、東北地方の各地に拠点を開設してきた。現在、本社のほかに10拠点あり、業務用酒類の販売では東北随一の実績を誇っている。

 システム化は、営業網の拡大が本格化した1970年代から始まり、1980年代にシステム/36を導入して以降は、IBM iを継続的に使用してきた。富樫氏は、「主要な基幹システムに関しては継続的に改修や拡張を行ってきたので、ほぼ完成の域に近づいています」と語る。

 そのため今回の本社移転では、基幹システムの改修や拡張は行わず、移転のタイミングで新しいIBM iに切り替えるという方針で臨んだ。

「半年前から準備を進め、1月に新しいIBM i(Power S814)を新社屋へ搬入して、事前に移行可能なプログラムとデータを移行し、稼働テストなどを行ってきました」(富樫氏)

 それ以外のデータについては、引っ越し当日の朝10時にネットワークを遮断してIBM iからデータを抜き出し、新しいIBM iへ移す作業を行った。

「データを新しいIBM iへ入れるのに、当初は夕方までかかると想定していましたが、午後2時前には終了してしまい、2時からシステムを利用できるとアナウンスしたほどでした。新しいIBM iは旧マシンの5〜6倍の性能と説明を受けていましたが、実際にそのとおりのパフォーマンスで驚嘆しています」と富樫氏は言う。

 たとえば、1年分のトランザクションデータの消去では、従来2時間近くかかっていたが、20分たらずで済んでいる。「マシンのスピードが速いと、業務がはかどり楽だということを実感しています」(富樫氏)

 新しいIBM iのOSは、1月の搬入時点では7.2(IBM i 7.2)だった。しかし、引っ越しの直前になって7.3のリリースを知らされ、アップグレードを決めた。

「新しいOSにはバグがあるのが付きもので、その点を懸念しましたが、本番稼働が始まると簡単に入れ替えられないので今しかないと判断し、7.3に上げることにしました」と富樫氏は語る。

 運用を開始してみると、案の定、印刷できないトラブルが起きた。しかしこれは、プリンタセッションの削除により、すぐに解決できた。前マシンのOSが5.3で、IBM i 6.1を飛び越して7.3へ一気に上げたことによる「パッチプログラムの不具合」だった。

 

3.11からの学びをもとに
現実的なBCP対策

 基幹システムの移設に際しては、プログラムに手を付けないことを方針としたが、「BCPについてはいろいろと検討しました」と富樫氏は言う。同社は東日本大震災の時に基幹システムが約1週間停止し、営業を継続できた仙台以外の拠点で大混乱に陥った経験をもっている。折しも経営層から、自家発電装置を導入すべきか検討するよう指示もあった。

 さまざまな検討の結果、富樫氏が出した結論は、自家発電装置は導入せず、UPSをそれまでの小型製品から中型製品に変え、停電時にレンタル会社から発電装置を借りられるよう契約を結び、あとは運用でカバーするというものである。

「3.11とそれ以降の学びは、大規模停電が発生した時、2時間を超えたら停電は長期化し、2時間以内なら早期の復旧が期待できるということです。そこで最低2時間、電源を供給できるUPS装置を導入し、長期の停電に対してはその時点で発電装置を使うことを考えました。BCPを検討している時に、知り合いの方から発電装置を会社の受電設備につなぐ方法を示唆され、調べた結果、当社にとっての最適解が見えてきました」と富樫氏は話す。

 富樫氏が受けた示唆は、キュービクルと呼ばれる受電装置に端子台(端子ボックス)を介して発電機を接続すると、スイッチの切り替えだけで簡単に電源を得られるというものだ。これであれば、高額で維持費もかかる自家発電装置を常備しなくてもよく、必要な時に発電機を借りられる準備をしてさえおけば済む。同社はレンタルのニッケンと契約を結んだ。

 また、新社屋の設計段階でもあったので、建設会社と交渉し、サーバールームの電源を受電装置から直接とれるようにもした。

 富樫氏は昨年12月末に、新社屋に発電機をもち込んで受電装置と接続し、通電するかどうかのテストを行っている。

「発電装置の電圧が220Vに安定したところで、電力会社からの商用電源を切り、発電機へ切り替えましたが、館内が真っ暗な中、サーバールームの電灯だけ点灯し、2台のエアコンも動き始めました」と振り返る。

「BCPは、ある意味できりがなく、いくらでも対策を講じることが可能です。しかしそれは現実的ではなく、企業の実情に合った対策が必要です。当社が導入したBCPは

完全なBCPではなく、ある程度妥協したBCPですが、最適解だと考えています」(富樫氏)

 これで、大規模停電に対する備えは整った。

「今後は、当社がもう1つの事業の柱としている新しい倉庫業のためのシステム構築を予定しています。新しい環境の中で、さらなる最適解を見つけていくつもりです」(富樫氏)

 

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Company Profile

株式会社カネサ藤原屋

本社:宮城県仙台市
創業:1916年
設立:1982年
資本金:9300万円
従業員数:253名(パート・アルバイトを含む
     グループ計、2016年3月)
事業内容:全酒類・清涼飲料水・食料品の販売、飲食物件に特化した不動産の賃貸業務およびコンサルタント事業など
http://www.kanesa-f.com/

 

[i Magazine 2016 Summer(2016年5月)掲載]