事例|株式会社トーホービジネスサービス ~30年来のメインフレームをIBM iで一新 将来のクラウド化へ向けた基盤を構築

本 社:兵庫県神戸市
設 立:2008年
資本金:1億円
従業員数:120名(うち正社員101名)
事業内容:トーホーグループの各事業会社向けに、経理、総務、情報システム、品質管理などのバックオフィスサービスを提供。株式会社トーホーの100%子会社。
http://t-biz.to-ho.co.jp/
 
親会社は総合食品卸グループの持株会社、トーホー。旧トーホーが2008年に持株会社制を導入したのを機に、トーホービジネスサービスが誕生した。同社はトーホーグループ向けバックオフィスサービスを提供しているが、トーホーグループが事業内容を拡大させているため、そのサービス基盤であるシステム基盤の強化・拡充が大きな課題になっていた。
 
・・・・・・・・
 

メインフレームの保守切れを前に
次期システム基盤の検討へ

 
 兵庫県神戸市の六甲アイランドに本社を置くトーホービジネスサービスは、業務用・家庭用食品の販売事業を幅広く展開するトーホーグループの1社で、グループ企業向けにバックオフィス・サービスを提供する会社である。グループ企業には、業務用食品卸の「トーホーフードサービス」や、飲食店向け食材販売の「A-プライス」(84店舗)、食品スーパーの「トーホーストア」(36店舗)などがあり、近年はシンガポールやマレーシア、香港へも進出を果たしている。
 
 トーホーグループがユニシス製メインフレームを導入して基幹システムの運用を開始したのは1985年。以来、5~6年ごとに機種を更改してきたが、2011年導入のマシンが2017年末に保守切れとなるのを前に、次期システム基盤の検討を進めることになった。
 
 その理由について情報システム部の田畑義勝氏(IT開発シニアマネージャー)は、「当社は2008年の持株会社制への移行以降、M&Aと多店舗展開を積極的に進め、事業領域を大きく拡大してきました。しかし、それを支えるシステム基盤は1985年のメインフレーム導入当初とほとんど変わらず、経営基盤の強化や各事業会社に対する支援機能の強化、全体の最適化を図るためにはシステム基盤の見直しが必須となっていました。メインフレームは安定稼働しているとは言え、高コストで、かつ経営・業務のニーズに柔軟に対応できない難点を抱えていました。メインフレームをこのまま使い続けていていいのか、という問題意識が、システム基盤見直しの動機でした」と説明する。2014年のことである。
 
 

田畑 義勝氏
情報システム部
IT開発 シニア マネージャー
 

汎用機、Windows、IBM iという
3社からの移行提案

 
 同社ではさっそく、ベンダー6社へRFPを依頼した。その結果、書類選考で3社に絞り、残った3社からさらに具体的な提案を受けることにした。
 
 この3社を仮に、A社、B社、日本IBMとしよう。A社の提案はユニシスの後継メインフレームへの移行案(後に、Windowsパッケージのカスタマイズ案へ切り替え)、B社のはWindowsサーバーへの移行とパッケージのカスタマイズによる再構築案、日本IBMの提案はメインフレーム上のCOBOLプログラムをストレートコンバージョンでIBM i上へ移行させる案、である。
 
 従来、同社では図表1のシステムを運用してきた。メインフレーム上には、受発注・在庫管理・買掛・売掛・マスター管理などの基幹プログラム(COBOL、WFL)が約6500本あり、Windowsベースのブレードサーバー上にストア系基幹システムや印刷、電子帳票用のサーバーなどを配置する構成であった。
 
 
 
 2017年末の期限までの時間は約2年半。この間に、移行案の選定から経営層の承認、詳細計画の詰め、実際の移行・構築作業などをこなす必要がある。システム部員全員が「時間的な余裕はほとんどない」(田畑氏)という意識だった。
 
「3社からの提案のうち、当社が最初に絞り込んだのは、基幹プログラムの再構築と移行の2案でした。そしてさまざまな角度から検討を進めましたが、これだけ大きなシステムを期限までに作り直すのはリスクが大きいとの判断に至り、最終的にIBM iへのストレートコンバージョンに決めました。ストレートコンバージョンならば従来のプログラムの踏襲なので、業務ロジックに手を加えずに短期の移行が可能です。選考の過程ではシステムの安定稼働と安全を最も重視し、その確証を得るために複数のIBM iユーザー企業を訪問してヒアリングも行いました」と、田畑氏は話す。
 
 

基幹プログラムを棚卸し
従来の6500本を5900本に絞る

 
 移行プロジェクトは、大きく2つのフェーズに分けて進められた。Phase1は設計フェーズで2016年9月~2017年2月、Phase2は変換・テスト・移行フェーズで2017年3~12月である。
 
 実作業の最初に、プログラムの調査・分析・棚卸しを行った。今回のプロジェクトでホスト系インフラとプログラム開発のリーダーを務めた情報システム部の中村英隆氏(IT開発グループ)は、「プログラムの利用状況を踏まえて、メインフレーム上にあった6500本から未使用のプログラム約600本を除外し、約4300本のCOBOLプログラムと、約1600本のWFL(CLに相当)を移行対象としました」と述べる。
 

中村 英隆氏
情報システム部 IT開発グループ
 
 
 プログラムのコンバージョンはCOBOLからILE COBOLへの変換ツールを開発し、実施した。そしてコンバージョンしたプログラムをIBM i上で走行させ、その結果とユニシス・メインフレームでの結果とを比較する方法でテストを進めた。
 
 移行先のメインサーバーは、Power Systems S814とした。その4コアのうち、3コアを基幹系に、1コアを情報系と開発用に使用する。そして同じ内容のS814をバックアップ機として用意し、Quick-EDDによるHA構成を組んだ(図表2)。
 
 
 
 またIBM i上ではWebサーバーやJavaがネイティブで稼働するので、従来別建てのブレードサーバー上に配置していたプログラムの多くを取り込んだ(図表3)。
 
 
 
 田畑氏は、「IBM iへの移行によってデータベースが階層型からリレーショナル型へと変わるのを移行の検討段階から注目していましたが、IBM iと外部SQL Serverとの連携によって、グループ全体でBI・データ活用を推進する基盤を効率よく実現できました」と話す(図表4)。
 
 
 

基幹システムの大半を
クラウドで稼働させる構想

 
 サービスインは2018年1月。最初の1?2カ月こそ、ユニシス・メインフレームとIBM iの10進数データに対する制約の違いによってエラー(10進数データエラー)が起きたりしたが、現在は「CPUパワーが格段に上がったこともあり、快適に利用できています」と、田畑氏は評価する。
 
 同社では将来的に、「基幹システムの大半をクラウドで稼働させる」という構想を描いている。
「従来は業務の効率化を主眼にシステム化を進めてきましたが、次世代向けのシステム基盤が整ったこれからは、経営への貢献がテーマです。それにはシステム資源を可能な限りもたず、経営・業務の変化には、その時どきのベストを社内・社外から選択し対応していくことが必要です。今後は、今回導入したIBM iの保守サービスが切れるまでに基幹プログラムを順次、クラウドやオープン系システムへ切り出していき、できるだけ身軽にしていく計画です。まだ移行したばかりですが、時間はそんなに残っていないと考えています」(田畑氏)
 
 
[i Magazine 2019 Summer掲載]