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事例|株式会社フェリシモ ~分析用データの抽出依頼が増加 PHPQUERYで細かな要望にも対応

本 社:兵庫県神戸市
設立:1965年
資本金: 18億6800万円
売上高: 288億8200万円(2019年2月、連結)
従業員数: 800名(2019年2月、連結)
事業内容:総合カタログ通販、オンライン通販
https://www.felissimo.co.jp/
https://bukatsu.felissimo.co.jp/ (フェリシモ部活)

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定期便とクラスター&
トライブ戦略に注力

 

 フェリシモは、幅広い年齢層の女性を主なターゲットとして、ファッション、生活雑貨、手芸、レッスンプログラムなどのバラエティに富んだ商品を販売する総合カタログ通販企業である。

 特色としているのは「定期便」と呼ぶコレクション事業で、顧客が「キッチン・食器」「インテリア」「収納」などのカテゴリのなかから好みをアイテムを選ぶと、毎月1回、フェリシモが色・柄・デザインの異なる商品をセレクトして顧客の元に届ける。「生活をスタイリッシュに、可愛らしく、エコに楽しむ」という同社の価値観を前面に出した、多数の会員を長年にわたって引き付けてきた事業だ。

 この「定期便」と並んで同社が今最も注力しているのが、「クラスター&トライブ戦略」である。ニッチな分野でも熱狂的なファンのいる商品やサービスを事業として立ち上げるための取り組みで、同社ではそれを「部活動」と呼ぶ。

 実際に毎週水曜の午前中は部活動のための時間とし、どの部門の誰でも自由に参加可能で、商品・サービスの企画やテーマを楽しむための活動に参画できる。

 たとえば「猫と人がともにしあわせに暮らせる社会」を目指す「フェリシモ猫部」では、猫の殺処分を減らすための活動として「保護猫譲渡会」の開催や、三井住友カードとの提携による「フェリシモ猫部VISAカード」の発行を実現している。

 カードを利用すると、その0.12%(わんにゃん%)が「フェリシモわんにゃん基金」として寄付される仕組みで、「お買い物で猫助けができるクレジットカード」である。

 同社では、ビジネスとは一見関係のないこうした活動をもとおして、ファンが本当に求めている商品・サービスを企画・開発していく考えという。

 クラブは既に30近く誕生している。同社ではそれを「フェリシモ部活」としてホームページで公開し、顧客の参加も呼びかけている。

 

データの活用・分析に
積極的に取り組む

 

 一方、同社では「定期便」や「部活」を推進するために、ビジネスで蓄積してきたデータの活用・分析に積極的に取り組んできた。消費者やマーケットの動向を独自の視点で捉えるためである。

 その主だったものを挙げると、IBM i上の基幹システムのトランザクションデータは別の分析基盤(以下、DWH)に転送して分析活用を行ったり、マーケティングオートメーション(以下、MA)用のシステムに転送してワン・オン・ワン・マーケティングを実施している(図表1)。

 

 

 いずれも業務部門のユーザーが利用するための仕組みだが、このほか上記のツールでは抽出できないIBM i上のデータの取得や帳票作成の依頼がユーザーからシステム部門へ頻繁に寄せられていた。

「当社ではお客様の動向を捉えるために、IBM i上のさまざまなデータをDWHやMAなどへ転送し、それを専門のデータ分析チームと事業部の各ブランド担当などが活用する体制を敷いてきました。また、本来の分析目的とは別に、社内資料の作成用としてIBM i上の各種マスタ系データも転送しています。しかし近年は、DWHにないデータやDWHに転送される前のリアルタイムなデータに対するニーズが増え、その抽出依頼やデータ転送の開発依頼が頻繁なため、バックログが溜まる一方となっていました」と語るのは、情報システム部の山下直也部長である。

山下 直也氏
プラットフォーム開発本部
情報システム部
部長

 

 このバックログについて山下氏は、「お客様向けのサービス開発や社内業務改善のためのデータ抽出やデータ転送の依頼は突発的で細かいものが多いため、後回しの対応になりがちでした。そのためデータ抽出のシステム化を検討していましたが、依頼のたびに提供していくのは開発リソースとの兼ね合いもあり、なかなか実行に移せないでいました。そこで、データ抽出の突発的な依頼にも対応できるよう内製で機能化することを検討していました」と話す。

 

5250クエリのベテランが
太鼓判を押すツール

 

 そうした折、あるセミナーで出会ったツールがオムニサイエンスのPHPQUERYである。

「PHPで開発されたツールと聞いて動作が軽快なことは想像できましたが、抽出条件を作るデモを見たとき、5250クエリの開発経験がある当社のエンジニアなら何も新たに覚える必要もなく、簡単に使えそうだと確信しました」と、山下氏は振り返る。セミナーの直後にオムニサイエンスの担当者に声をかけ、すぐに3カ月のトライアルを申し込んだ。2018年11月のことである。

 トライアルは、約20名いるシステム部員のうち5名ほどに基幹システムのデータを照会するプログラムを作ってもらい、評価を尋ねた。そのシステム部員たちは日常業務で5250クエリを活用していたので、PHPQUERYの操作方法は1時間ほどしか説明しなかったという。

 そして評価は、全員一致で「有用なツール」というものだった。山下氏は「費用も想定よりはるかに安価であったため、すぐに採用を決めました」と話す。

 2019年2月に導入して、現在までの約半年間に約40本のクエリプログラムを開発し、ユーザーにリリースしてきた。開発したのは、データ抽出の依頼が多い、バックログが貯まっていたものが中心で、そのほか検索機能を集めた照会プログラムなども作成した。

 

 

 その結果、「ユーザーからのデータ抽出依頼は減少し、とくに電話による突発的な依頼が目に見えて減りました」と、山下氏は効果を話す。

「PHPQUERYによるプログラムが100本程度になれば、ユーザーからの依頼はほとんどなくなり手離れするだろうと見ています」(山下氏)

 

カスタマー・データ・プラットフォームを構築中

 

 同社は今、PHPQUERYの導入によって非IT部門がIBM i上のデータを直接活用する環境を充実させる一方、データ分析・活用基盤の抜本的な再構築に乗り出している。

「当社の現状の分析基盤は、基幹システムは基幹システム用、WebサイトはWebサイト用となっていて、データの配置場所や分析・活用方法が乱立している状態です。それでは顧客などを軸にした柔軟な分析が行えないため、さまざまなデータを1カ所に集約し、さまざまなトランザクションデータを顧客軸で横串にする、データ統合基盤としてのCDP(カスタマー・データ・プラットフォーム)を構築中です。この基盤が整えばお客様を軸としたデータ分析・活用が標準化され、データ・ドリブンな意思決定をスピーディに行える仕組みになると考えています」(山下氏)

 

[i Magazine 2019 Winter掲載]