新生IBM FlashSystemファミリー、IBM Storwizeを統合してさらなる進化へ

 

 

IBMストレージ製品の変遷と
統合化されたIBM FlashSystem

 IBMは1956年に世界初のディスク装置であるIBM RAMAC 305を市場投入して以来、ストレージに関する製品やソリューションに対して継続的な研究開発投資を行い、新機能や新製品を発表し続けている。
 
 現在販売されているIBM FlashSystemファミリーは、第1世代が2003年に発表されたIBM SAN Volume Controller(以下、SVC)のストレージ制御ソフトウェアを起源にもつIBM Spectrum Virtualizeを組み込んだ製品群である。
 
 現在のようにFlashSystemとして統一される以前、IBM Spectrum Virtualizeを組み込んだ製品群はIBM Storwizeファミリーと呼ばれていた。
 
 エントリーからミッドレンジまでをカバーするエントリータイプのIBM Storwize V5010、V5020、V5030、ミッドレンジからハイエンドをカバーするIBM Storwize V7000など、ユーザー要件に対応できる豊富なラインナップ、製品群を揃えていた。
 
 またIBMではこれとは別に、FlashCoreテクノロジーを採用したFlashSystemファミリーやXIV Storage、DS8000シリーズなど多彩な製品ラインナップを用意していた。
 
 しかしラインナップが多彩であると、その製品選択が難しいとのユーザーの声を反映し、2020年2月にはStorwizeファミリーとFlashSystem ファミリーを統合し、簡素化した新生FlashSystemファミリーが誕生している。

 

 

 ホスト接続可能なDS8900シリーズはハイエンド・マシンとして引き続き提供するが、オープン系ストレージ製品(SAN)の中核主体はFlashSystemファミリーが担うことになった。
 
 新FlashSytemファミリーは単に既存製品をリネームしただけでなく、たとえばStorwize V7000の後継機種となるFlashSystem 7200と、FlashSystem 9100の後継機種であるFlashSystem 9200についてはハードウェアの一新を図っている。
 
 当然ながら、制御用ソフトウェアであるIBM Spectrum Virtualizeも最新版が提供され、3サイト・ミラーなど新機能の追加拡張や品質の向上が図られている。
 
 また、FlashSystemファミリーには名称上含まれていないが、同じIBM Spectrum Virtualizeソフトウェアを利用しているIBM SVCにも新モデルが提供されている。

 FlashSystemファミリーはIBMがハイエンド機器で長年培った先端技術をハイエンドのみならず、エントリーやミッドレンジ、果てはパブリッククラウドにも利用可能とした点が他の機種にないユニークな点であろう。

 ファミリー製品であるがゆえに、どの製品も同じような使い勝手で利用できるというメリットもある。
 
 たとえば高速コピー、遠隔コピー、Easy Tier、移行機能など先進的な機能をファミリー間で共通に利用できる。また他社製品を含むストレージ外部仮想化など、通常ではハイエンド製品でのみ提供される高機能をミッドレンジ製品でも装備しているため、ユーザーは利便性を重視したストレージ環境をより廉価に利用できる。

 また同じファミリー製品でありながら、あえて提供形態を変えているものもある。たとえば、比較的単純な構成や小規模な構成での利用を想定したエントリーモデルのFlashSystem 5010、5030については、制御用ソフトウェアに対するソフトウェア保守(SWMA)がなく、ハードウェア保守と一体化した設定となっている。ユーザーにとってよりシンプルで、トータルコストを抑えられる提供形態である。
 
 昨今、ハイパーコンバージド・インフラストラクチャ(以下、HCI)構成でIAサーバーを連結接続させ、外部共有ストレージをもたない構成も増えているが、HCI採用されたユーザーの声を聞くと、容量効率が悪く、増設時のコストが予想外に嵩むため、共有ストレージ構成に戻すケースも出ている。
 
 HCIはハードウェアが汎用のIAサーバーだけで構成でき、管理・運用面でTCOが低いと考えられがちであるが、企業規模の大小、用途、アプリケーションを問わず、データは増大していくため、FlashSystemファミリーをはじめとした外部ストレージを検討、採用したほうが真の運用効率性、TCO削減に貢献できると考えている。

 

 
豊富なFlash Driveの提供と新しいSCMの登場

 ここ数年でHDD(磁気ディスク)に代わり、NAND型フラッシュ・メモリを利用したSSDをはじめとするFlash Driveが広く利用されている。
 
 すでに高速HDD(1万5000 rpm)と比較しても、容量単価でFlash Driveのほうがコスト的にメリットのある状況となっているため、積極的に高速HDDを採用する理由は見当たらない。
 
 IBM FlashSystem ファミリーではFlash Drive の選択肢が他の機種に比べて豊富であり、SAS接続SSD、NVMe対応SSDに加えて、IBMが独自開発したFlashCoreモジュール(以下、FCM)が選択可能である。
 
 FCMは、フラッシュ・チップの制御に高性能なFPGAを搭載している。暗号化と圧縮をデータ転送経路上に配置したFPGAで実現しているので、暗号化や圧縮の際もパフォーマンスの劣化が起きない設計となっている。
 
 FCMは今回の発表でリリース2.0となり、モジュールとしては従来から提供している4.8TB、9.6TB、19.2TBに加えて38.4TBも選択できるようになった。

 これらに加え、今回の発表ではさらに高速なストレージ・クラス・メモリ(以下、SCM)がドライブとして追加発表された。これにより、さらに応答時価を短縮できる低レイテンシーな構成が組めるようになった。
 
 SCMは容量が小さく、かつ相対的に高価である。その能力を最大限に無駄なく発揮させるため最大4本までの搭載となる。これを効率的に活用するために、Easy Tierと呼ばれる自動階層化機能を利用できる。
 
 Easy Tierを使えば内蔵されたAIの判断で、アクセス頻度の高いデータはSCMに配置されるので、より高速かつ効率的な構成を採用できる。
 
 データ保護・可用性の観点からはDistributed RAID (以下、DRAID)構成を組むことで、従来のRAIDよりも高速なリカバリーが可能となり、かつ専用のスペア・ドライブを置かないことから容量効率を高められる。フラッシュの書き込み寿命を長くできる点も、DRAIDのメリットの1つである。

 

 

パブリッククラウドとの連携

 昨今、オンプミス環境からパブリッククラウドへ移行させたいと希望するユーザー、あるいは利用を検討したいユーザー、すでに移行を実施しているユーザーが増えている。
 
 IBM Spectrum Virtualize for Public Cloud (SV4PC)は、IBM FlashSystemファミリーで提供する豊富な機能をソフトウェア化し、パブリッククラウド上で提供するSDS製品である。
 
 ユーザーはオンプレミスと同様に、クラウドでもIBM FlashSystemと同じ使い勝手でストレージ環境を利用でき、その利便性を享受することが可能となる。
 
 オンプレミス環境のみ、あるいはパブリッククラウド環境のみでなく、ハイブリッドクラウドとしてクラウド連携を図ることで、より効率的にストレージを運用・管理できる。

 

 

 以上のように、SVCからの流れをくむ旧IBM Storwizeファミリーは2020年2月、新生IBM FlashSystemファミリーとして統合され、ラインアップ全体がよりシンプルで選択しやすいよう進化している。
 
 企業や団体ユーザーの増え続けるストレージの運用・管理負荷の軽減や企業競争力の向上に、IBM FlashSystemファミリーが少しでも貢献ができれば幸いである。


著者
玉木 実氏

日本アイ・ビー・エム株式会社
パートナー・アライアンス事業本部

2001年、日本IBM入社。ビジネス・パートナーへのストレージ製品販売支援を担当後、IBMストレージ事業部とネットワンシステムズで設立したプロストレージ株式会社へ出向。2003年からストレージ事業部で新製品の立ち上げや営業支援、2009年からはストレージセールスを担当。

 

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