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東北インフォメーション・システムズ|電力自由化と「その後」を見据え、既存事業の盤石化と新分野への挑戦を継続

by kusui

東北インフォメーション・システムズは、電力システム改革に総力を挙げて取り組むとともに、電力自由化後を見据えた新たな取り組みを開始している。ニアショア開発の拠点づくり、高度なセキュリティ・サービスの提供、LCMサービスのためのセンターの設置など、従来の殻を破る展開である。

 

東日本大震災後に
「長期戦略ビジョン2020」を策定

 東北電力の100%子会社である東北インフォメーション・システムズ(以下、トインクス:TOiNX)は、2011年の東日本大震災の後、「長期戦略ビジョン2020」を策定し、2012年度から取り組んできた。そのミッションは、「電力の安定供給に向けて、その情報システムをしっかり支え・きっちり守ること」と「東北地域の復興・発展に向け、IT面から最大限の貢献をすること」の2つで、5年目となる2016年度は「新たな成長軌道へ   構造改革の進化と事業領域の拡大・深耕」をスローガンとして掲げ、取り組んでいる。

 

 電力市場は現在、かつてない改革の時期を迎えている。今年4月からは電力小売の全面自由化が始まり、4年後の2020年4月に向けて、今後は電力システム改革の第3段、法的分離対応へとシフトしていく予定である。トインクスでもここ数年、大規模な開発体制を敷き対応してきたが、その考え方について取締役の高橋紀幸 営業本部 営業部長は次のように話す。

「電力システム改革対応はかつて経験したことのない状況で、今後も大規模かつ高難度なシステム案件が目白押しに計画されています。当社では、これまでの電力システムの開発・運用で培った経験と技術力を活かして、歴史的な改革の計画実現へ向けてIT面から貢献したいと考えています。そのためには、開発プロジェクトの先進的な品質対策や、より一層の開発生産性の向上、コスト低減対策が不可欠です。また、この取り組みを成功させることによって、次世代へ向けた当社の基盤強化も進められると確信しています」

 

高橋 紀幸氏 取締役 営業本部 営業部長(職位は取材当時)

 

電力自由化後を見据えた
セキュリティ・LCMなどへの新展開

 同社が今、特に注力し考えていることは、電力システム改革への貢献と、もう1つは電力自由化「後」への対応である。その対応の中には、東北とともに成長してきた同社の「地域への貢献と責任の意識が強くあります」と高橋氏は述べる。

 同社がメンバーとなって昨年3月に開設した宮城県情報サービス産業協会(MISA)の「仙台開発センター」は、その具体的な展開の1つである。宮城県のITベンダーが連携してニアショアの開発拠点とするのが狙いである。その中で同社は代表企業として、営業活動も中心になって行っている。

「ソフトウェアの開発案件は首都圏に集中しているため、東北の一企業が継続的に受注していくのはなかなか困難です。そこで複数の企業が得意分野をもち寄り、1社単独では難しい案件の獲得へ向けてタッグを組み、受け皿を作ろうという取り組みです。東北に足場を置き、東北の技術者と一緒になって成長していこうという当社の基本的な考え方を具体化したものです」と説明するのは、営業本部の遠藤篤識 営業部副部長である。

 

遠藤 篤識氏 営業本部 営業部 副部長(職位は取材当時)

 

 またこれとは別に同社独自の取り組みも、多方面で進めている。同社は仙台市内に大型データセンターをもち、情報システムの企画・コンサルティングから開発・運用・保守サービスまでをトータルに提供しているが、それに加えて新しい分野に乗り出すのは、「2020年以降を見据えた新しい事業展開のための布石」と高橋氏は語る。

「標的型メール対応訓練サービス」は、同社が拡充を進めるセキュリティ分野の取り組みである。疑似的な攻撃メールを訓練対象者に送信し、開封した対象者に注意を促すとともに、開封結果をレポートするサービスである。中央省庁を中心にすでに30万人以上の利用実績がある。

 また、昨年4月に設置したSOC(セキュリティ・オペレーション・センター)も、新たな取り組みの1つである。現在は、大手セキュリティベンダーが提供するセキュリティ監視サービスの仙台拠点としての位置づけだが、「ゆくゆくは当社独自のSOCへと成長させたいと考えています」と高橋氏。

 さらに、NFC対応のAndroidスマートフォンのSIMカードに電子証明書を格納しセキュアな端末に変えるセキュリティ・サービスの開発を進めている。スマートフォンのSIMカードを利用する同社の特許に基づくサービスで、ICカードに代わる画期的なソリューションである。この利用により、「セキュアな認証を必要とするスマホ・アプリの構築が容易になります」と遠藤氏は言う。

 一方、企業のIT機器を対象とするライフサイクル・マネジメント(LCM)サービスも注力している分野の1つである。昨年4月に「LCMセンター」を設置し、本格的な業務をスタートさせた。サービス範囲は、ヘルプデスクから機器の導入・維持・保守、障害復旧までIT機器全般をカバーする。

 「専任のIT担当者を配置できない東北地域企業の相談窓口となり、お客様のITに関する悩みや課題を解決に導いていくことが目的です。LCMサービスを通じてお客様の課題を把握し、その先の提案へつなげることで、お客様のIT基盤を強くし、その発展に寄与したいと思っています」(遠藤氏)

 同社は、前身の企業を含めると60年以上の歴史をもつ。その歩みの中で、数々の基幹システムを開発してきたが、その1つを汎用化してパッケージ化したのが人事労務総合パッケージ「Co.人労(コジロー)」である。人事・給与・就業管理・人労諸申請・汎用検索などの一連の機能と高いカスタマイズ性が特徴で、オンプレミス版とクラウド版がある。昨今の取り組みとして、警備や清掃業などブルーカラー層を多く抱える企業向けの勤怠・人事管理機能を充実したという。

 また、「テロップ速報」も同社開発のユニークなシステムである。緊急性の高い通知や重要なお知らせを、指定のPCにテロップで表示できる。音や色の設定、配信先のグループ設定、配信の予約、Webサイトへのリンクなど多彩な機能を備える。既存資産の積極的な外部提供も、同社が取り組む戦略の1つである。

「長期戦略ビジョン2020」の2016年度のスローガンは「新たな成長軌道へ」。将来への布石を着々と打つ同社は、成長の軌道を着実に進んでいるようだ。

 

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Company Profile

東北インフォメーション・システムズ株式会社

本社:宮城県仙台市 
設立:2001年
資本金:9680万円
売上高:169億4300万円(2014年度)
従業員数:678名(2015年7月)
事業内容:東北電力グループのシステム開発・運用で培った技術力と経験をもとに、情報システムの企画・コンサルティングから開発・運用・保守までトータルソリューションを提供
http://www.toinx.co.jp/

[i Magazine 2016 Summer(2016年5月)掲載]

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