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事例|第一貨物株式会社 ~「配達時間通知サービス」を試験運用中、顧客サービス向上をシステム化で推進

国内貨物輸送量の減少と競争激化の環境の中、第一貨物はシステム化による顧客サービスの向上とコスト削減、事業品質の向上を進めている。国内で最初に「貨物追跡システム」を構築・導入した同社は、新たな顧客サービスとして「配達時間通知サービス」を試験運用中だ。

 

Webに強いzBC12導入を機に
配達時間通知サービスの構築へ

 日通総合研究所の調査によると、日本国内の総輸送量は1991年の69億トンをピークに減少を続け、2016年(見通し)は前年比0.7%減の46.7億トンになった。ピーク時と比べると、この25年間に30%以上の減少である。また、「特積み(特別積合せ貨物運送)」と呼ばれる自動車貨物輸送の事業者数は、1991年以降、270〜290社の間で推移しており、大きな変化はない。つまり貨物の輸送量が減少し続けているのに対して事業者数に変化はないため、貨物輸送の事業者は競争力強化を目的に、顧客サービスの向上とコスト削減、事業品質の向上をさらに求められている。

 山形県山形市に本社を置き、全国69カ所に拠点展開する第一貨物は、現在、一部の顧客を対象に、配達時間を通知するサービスを試験的に運用中である。言うまでもなく、顧客サービス向上の一環である。

 情報システム室の工藤隆雄室長は、「貨物がどこまで届いているかは当社のWebサイト上の貨物追跡システムで確認していただけますが、その貨物がいつお客様のもとに届くのかについては、システムでサポートされていません。テスト運用は、配達時間通知サービスを完成させるためのもので、さまざまなチェックと検証を行っています」と説明する。

 

工藤 隆雄氏 情報システム室 室長(職位は取材当時)

 

 配達時間通知サービスの仕組みは、顧客への配達実績を統計的に処理して算出した配達時刻を参考として、各事業所で設定した配達予定時刻をベースにしている。配達予定時間帯に加えて異常気象時の配達遅延情報も顧客にメールが飛び、顧客は送られてきたメールで貨物の配達時間帯を確認できるというものだ。そのサービスが、過去の配達実績を活用しているところを見れば、稼働中の貨物追跡システムなどと連携して構築されているのがうかがえるだろう。将来的にはドライバーが当日の貨物の量や配達件数、交通、天気などの状況を考慮してシステム上で配達予定時間帯を修正することも考えられている。

 同社では1980年に、他社に先駆けて全店オンライン化を行い、貨物追跡システムを導入した。当時は送り状の追跡で、顧客からの発送と配達先への到着の日時を伝票レベルで追跡するシンプルなものだった。それを1989年に全面改築して完成させたのが「貨物オンラインシステム(POSシステム:Parcel Online System)」で、このシステムでは貨物1個ずつにバーコードラベルを貼り、それを「荷主からの貨物の預かり時」「集荷店から配達店への発送時」「配達店への到着時」「配達先への出発時」「配達完了時」のたびにハンディターミナルで読み取り、貨物を追跡する仕組みを構築した。ただし、当初は端末の機能とネットワーク回線の帯域が十分ではなかったので、スキャンしたデータをハンディターミナルに蓄積し、事業所に戻ってからサーバーに吸い上げる方式とした。データをスキャンして携帯電話経由でホストへ送信するリアルタイムシステムを完成させたのは、2003年の改築時である。そして2007年にPOSシステムを全面的に再構築し、現在に至っている。

 現在、同社が扱う貨物量は、平日1日あたり約1万1400トン。トラックによる拠点間の幹線運行は約1300便もあり、顧客先へ荷物を届ける集配車は約2500台に及ぶ。

 この膨大な業務量を処理するPOSシステムは、当初からIBMメインフレーム上で構築されてきた。工藤氏は、「当社のPOSシステムは、メインフレームの性能向上とネットワークのブロードバンド化、そしてハンディターミナルの性能向上を追いかけて改修を繰り返してきたようなものです」と言い、「テスト運用中の配達時間通知サービスも、新しいメインフレームが登場したからこそニーズに応えて構築に踏み切れたところがあります」と、次のように語る。

「当社は2014年に、従来のメインフレームの保守切れとソフトウェア使用料金の改定を機にzBC12に切り替えましたが、このマシンはインターネットやWeb系技術との相性が特によく、これならばWeb系技術をベースとする配達時間通知サービスで利用できると判断し、システムの構築をスタートさせました」

 同社では今後も試験サービスを継続し、「3年以内に全店へ展開する計画です」と工藤氏は続ける。

 

 

デジタコ搭載とASPサービス導入により
燃費管理などを推進

 一方、運行管理などの業務面の改善も、ここ数年取り組んできたテーマである。そのキーとなる仕組みは、拠点間を走る幹線運行車(1100台)へのデジタコの搭載とASPサービスの利用である。

 デジタコとは、車両の走行速度や運転操作などを記録する装置。ASPサービスはGPSと連動し、車両の位置や運行状況などをリアルタイムに把握できるサービスである。同社では、運行記録や走行記録のデータをASPベンダー(富士通)のクラウドセンターに蓄積し、センターからデータを毎日ダウンロードしてさまざまな管理に活用している。

 その1つは、車両やドライバーごとの燃料消費管理である。デジタコは、ドライバーが急ブレーキをかけたり急発進すると、そのまま記録する。そうした乱暴な運転は燃料をより消費するので、ドライバーごとの運転特性の分析によって燃費低減のための指導やトレーニングが可能になる。

「当社の幹線運行用トラックは平日だと1000台が走っているので、車両単位の燃費改善でも積算すると大きな効果をもたらします。またこのことは、ドライバーの安全確保と貨物の安全輸送にも直接つながるので、運行データ分析の精度を上げる取り組みを進めています」(工藤氏)

 もう1つの取り組みは、デジタコ・ETCの高速道路乗り入れデータと社内システムを連動させる管理システムである。これは目下、検討開発中だが、ドライバーが利用した高速道路の区間・距離・料金などを自動的に記録する仕組みとする予定だ。「現在、事務所で行っている高速道路乗り入れ入力が不要になれば作業の省力化にもなります。正しい安全な運転をシステムで確認可能にすることで、ドライバーの安全を担保でき、経費の無駄を抑えられます」と工藤氏は述べる。

 システムによる顧客サービスの向上とコスト削減に対する同社の取り組みは、まだまだ続いていきそうだ。

 

 

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Company Profile

第一貨物株式会社

本社:山形県山形市
設立:1941年
資本金:1億円
売上高:681億8000万円(2015年3月)
従業員数:4252名(2015年3月)
事業内容:国内69カ所に事業拠点を置き、貨物自動車運送事業、3PL事業などを展開。
http://www.daiichi-kamotsu.co.jp/

 

[i Magazine 2016 Summer(2016年5月)掲載]