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事例|大月真珠~SP4iを活用し、RPGスキルでスマートフォンアプリを開発

 

 

 

RPGスキルを活用して
スマートフォンアプリを開発

 大月真珠は1986年の導入以来、基幹システムをIBM i上で運用してきた。現在は本社で管理する真珠製品の加工、卸し販売、百貨店販売、経理までをカバーし、製造管理および販売管理システムとしてIBM i上で運用している。また画像を取り扱う宝飾システムでは、GUI化ツールを導入して開発してきた。

 同社では営業担当者を中心に携帯電話を支給してきたが、2016年にiPhoneへ切り替える際、ユーザーから以下のような要望が寄せられたという。

・販売系システムを外出先で利用したい
・販売した商品の画像を即時に登録したい
・場所を問わず棚卸しを行いたい
・移動中に報告系の入力を行いたい

 システム室ではIBM iと連携しながら、上記の課題をどのように解決するかの検討を2016年3月にスタートさせた。

 結論から言うと、同社がスマートフォン・アプリケーションの開発ツールとして選択したのは、ミガロ.の「SmartPad4i」(以下、SP4i(JC/400から製品名を変更)である。

 現在、システム室には6名が所属し、RPGを中心にシステムの開発・保守をほぼ内製で担っている。IBM iの運用歴が長く、全員がRPGの開発スキルを備えていることから、ツール検討に際しては、スマートフォンのカメラ機能などを活用したネイティブアプリをRPGで開発できるツールに着目した。

 選定候補はいくつかあったが、SP4iはそのなかで、HTMLを使って画面をデザインすれば、開発の初期段階からユーザーが画面の使い勝手を確認できる点などを評価し、採用を決定した。正式導入は2016年6月である。

 この導入に先立ち、システム室ではホームページビルダーを入れてHTMLを、またRational Developer for iを入れてILE RPGを学習し、ミガロ.のサポートを受けながら、手始めにログイン画面やメニュー画面(図表1)を作成して基本ルールやパーツの内容を理解していった。

図表1 メインメニュー(一般用)

 

 SP4iでは作成済みのHTMLをもとにSP4iデザイナーでRPGのひな型を作成し、生成されたRPGプログラムをもとに業務ロジックを開発する。現在はシステム室の島本佳昭課長代理が仕様決定と動作チェックを担当し、SP4iを利用した実際の開発業務はスタッフ1名が行っている。

 iPhoneのアプリケーションでは基本的にIBM i上で稼働している宝飾システムとダイヤ卸し系システムを対象に、社内で利用しているGUI画面の内容を踏襲し、モバイル環境で必要な機能に絞って開発している。

 最初に実現したのは、百貨店に勤務するスタッフのシフト状況を確認する画面(図表2)。

図表2 シフト確認の画面

 

 それから催事一覧照会、催事報告入力(および各種検索画面)、属性照会、画像登録・照会(図表3)と画面数を増やしていった。

図表3 画像確認の画面

 

 2016年7月には部長、店長、営業担当者の約50名を中心に、必要とする全拠点のメンバーがiPhoneで上記のアプリケーションを使用できる体制が整った。

 

さまざまな工夫により
操作性や開発生産性を向上

 ログイン機能については、iPhoneの初期画面でSP4iのシステムアイコンをタップしたあとに、アプリケーションの実行をタップすると、SP4iアプリの固有メニュー表示を省略して、初期業務メニューに直接遷移するようにしている。

 VPNアプリを起動する際に、ユーザーごとに固有のIPアドレスを付与して個人を識別する仕組みを入れたことで、ユーザーの職階に応じた初期メニューを表示し、外出先で煩雑なログイン作業を実行せずに済むよう工夫している。

 「また画面サイズの小さいiPhoneで、照会だけでなく入力作業もスムーズに進められるよう、文字入力をできるだけ減らし、各入力画面には共通の標準ルールを設けて、ユーザーがわかりやすく操作できるように工夫しました」と、島本氏は語る。

 

島本 佳昭氏
システム室 課長代理

 

 たとえば入力系のルールとしては、(1)各項目への入力後に「次へ」ボタンをタップ、(2)入力項目に保護がかかり確認画面に遷移、(3)確認後に「更新」ボタンをタップすることで入力完了、という流れを共通化させている。

 さらにSP4iでは、多数の画面に対応したRPGプログラムをいかに効率的に開発するかがカギになる。そこで宣言部、自由記述部、構造体、テーブルなどにソースを分割し、コピー句を多用してソースコードの標準化を図ることで、開発生産性の向上に努めた。

 こうした工夫により、今では1本のSP4iアプリケーションを3~4日で開発できるようになっている。

 同アプリケーションの稼働後、入力や参照の使用頻度は着々と増えており、確実にユーザーに浸透しつつある。現在では60種類以上の画面が利用されており、今も定期的にユーザー部門からの要望を受け付け、新規開発を進めている。

 また毎月1日に店舗ごと、担当者ごとに各プログラムの利用状況を分析するための統計表を作成し、これをもとに使用頻度の低い入力や照会作業を洗い出すことで、改善につなげている。

 システム室では今後の新規システムはIBM i上でILE RPGにより開発すると決めており、SP4iでの開発も積極的に推進していく計画である。

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Company Profile

本 社:兵庫県神戸市
創業:1930年
設立:1952年
資本金:1億円
売上高:117億7500万円(2019年11月期)
従業員数:286名
事業内容:真珠の加工・販売・輸出および宝石・宝飾品の販売
https://www.otsuki-pearl.co.jp/

主要業務は真珠の加工・販売・輸出および宝石や宝飾品の販売。多様なニーズに応えて、生産・加工・販売の一貫体制を構築することで、高い競争力と信頼を築いている。抜群の製品取り扱い量を誇り、アコヤ真珠の1級入札会シェアや真珠輸出額は業界第1位。アコヤ貝の養殖などの生産活動も積極的に展開している。

 

[i Magazine 2020 Summer掲載]

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