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事例|株式会社オムニサイエンス ~新型コロナを機に、どこででも仕事ができるデジタルワークプレースを一挙に実現

COMPANY PROFILE

本 社:東京都中央区
創立:1987年
設 立:2005年
資本金:3000万円
従業員数:40名
事業内容:PHPQUERYの開発・販売・サポート、Zend Server for IBM iの販売・サポート、IBM i系・オープン系のシステム受託開発、システム要員の派遣など
https://www.omni-s.co.jp/
https://phpquery.jp/(PHPQUERY)

受託開発、技術者派遣、PHPQUERY販売の3つを柱として事業展開してきた。ここ数年はサブスクリプション制を採用するPHPQUERYが好調という。またIBM i・PHP絡みの受託開発も堅調。「今後はPythonとPostgreSQLを駆使するようなIBM iの開発案件を意欲的に手がけていきたい」と、代表取締役社長の藤井星多氏。藤井氏は「OpenSource協議会 -IBM i」の会長も務める。

 

 

ツール・サービスを多数導入し、業務をデジタル化・統合化・オンライン化

 

 

受託開発のなかから
PHPQUERYを製品化

 

 オムニサイエンスは、IBM i市場で33年の経験をもつソフトウェア開発ベンダーである。会社設立からしばらくは技術者派遣や基幹システムの受託開発をビジネスの中心に据えていた。

 同社が転機を迎えたのは、2008年にPHPをIBM i用構築ツールの1つとしてラインナップしてからである。PHPを活用する受託開発は、当初こそグリーン画面のWeb化が大半だったが、徐々に業務システムへの適用が増え、最近は「PHP on IBM iのシステム開発ならオムニサイエンス」と評されるまでになった。2018年からはZend社(現・Perforce Software社)の正規代理店としてZend Server for IBM iの販売・サポートも手がけている。

 現在、主力製品に成長しているIBM iのデータ活用プラットフォーム「PHPQUERY」も、PHP on IBM iの取り組みのなかから生まれたものである。ユーザーの求めに応じて開発したデータ照会システムが高い評価を受けたのをきっかけに、その部分を製品化したのがPHPQUERYである(2014年リリース)。

 PHPQUERYは、「2017年度以降、売上高・利益とも年50%増で伸びています」と、代表取締役社長の藤井星多氏は話す。ライセンス販売数は50本を超えるところまできた。

「その半面、技術者の派遣事業は減少傾向にあり、堅調な受託開発を含めて、事業の選択と集中に着手する時期がきたと考えています」(藤井氏)

 

 

いち早く変化を察知し
圧倒的なスピードで対応する

 

 同社が今年4月から進める施策は、「事業の選択と集中」と「物理資産の最小化」「デジタルを駆使したワークプレイス」の3つである。

「新型コロナのような予期せぬ事態が突如として起きたり、変化の激しい時代を企業として生き抜くには、いち早く変化を察知し圧倒的なスピードで対応していくしかありません。そのためには、それを可能にする企業文化や風土が必要で、4月からの施策は当社が理想とする文化や風土に近づくための取り組みです。持たざる経営を進めて身軽になり、俊敏に動ける企業体質を実現するのが『物理資産の最小化』、デジタルツールを駆使して物理的な場所に制約されない仕事環境を整備するのが『デジタルを駆使したワークプレイス』です。これらの命題は以前から考えていたことですが、新型コロナの影響でビジネス環境が激変したのを受け、踏み切ることにしました」と、藤井氏は説明する。

「事業の選択と集中」では、「PHPQUERYへの投資強化」を掲げ、その1つとして、これまで以上のスピードでPHPQUERYをIBM iのユーザーに浸透させる計画を立てた。

 IBM iビジネス事業部を担当する取締役の下野皓平氏は、「今後、人員は増やしていきたいと思いますが、顧客満足度を向上させながら、3倍の売上高・利益を現在の人員でも達成できるよう、生産性を3倍に高めることを目指しています」と、次のように述べる。

「ごく単純化して言えば、マーケティング力の強化によってお客様からの問い合わせ数を増加させ、案件化からクロージングまでの営業力を向上させ、技術面でお客様満足を向上させることによって3倍の売上高・利益を実現します。そのためにはビジネスプロセスの思い切った再構築が必要で、4〜5月はその再定義と新しい仕組み作りに没頭していました」

 

 

ツール・サービスを導入し
ビジネスプロセスを再構築

 


 図表1・図表2は、PHPQUERY関連のビジネスプロセスの再構築前と再構築後である。マーケティングから営業活動へ、そして技術サポートと業務処理へ、という大きな流れは再構築の前後でも変わらないが、従来が現地へ赴くとか手作業など物理的かつ個別対応が中心であったのに対して、再構築では複数のツールを導入し、オンライン化、データベースの一元化、気づきやメモを共有ツールに残すルーティン化、自動化、ダッシュボード化を一挙に実現した。

 

 

 下野氏は、 「お客様からのお問い合わせが増え営業・業務・技術サポートの仕事量が急増しても現在のメンバーでスケールアウトでき、お客様満足の向上も図れる仕組みです」と語る。

 オンライン用として、Zoom、Webex、Google Meetという3種類のツールを導入した。オンライン営業やWeb会議、Webセミナーなどに使用する。3種類も揃えたのは、「お客様のご都合に合わせるため」という。

 データベースの一元化にはSaaS型のCRMツール「HubSpot」を採用した。顧客管理・マーケティング支援・営業支援の3つの機能をあわせもつツールで、コンタクト(顧客)の基本情報・行動・応答の記録から商談の推移(パイプライン管理)まで一連の情報を統合的に管理できる。

「お客様にメールをお送りすると自動的にデータベースに登録されるので、特別な入力を行わなくてもお客様情報がどんどん蓄積されていきます。それを個別のお客様ビューで見ると、これまでのやり取りやステータスが一目瞭然なので、次のアクションを的確に行うことができます」と、下野氏はツールのよさを話す。

 またHubSpotにはメールマーケティング機能があり、テンプレートによるHTMLメールの作成や一斉配信、追跡・通知が行える。同社ではこの機能をフルに活用して、5月から月3〜4回のペースでPHPQUERYのWebセミナーを実施してきた。従来と比べて7〜8倍の開催頻度という。

「HubSpotの機能を使うと、お送りしたメールをどなたが開封し、そのうちのどなたがセミナーに参加されたかがわかるので、お客様ごとのアプローチが可能になります。また、メールの開封件数やセミナーへの応募状況でDMやWeb広告などの効果が図れるので、マーケティング計画にも生かすことができます」と、経営企画室マーケティング担当の関戸佑希子氏は話す。

 

 

気づきやメモの共有を
ルーティン化する

 

 気づきやメモを共有するためのツールとしては「Notion」を採用した。「ユーザーインターフェースや機能が抜群によいので無理なく簡単に情報共有が行えるだろう、と判断しました」と、藤井氏は採用の理由を語る。「見た目が美しい」(関戸氏)ことも理由の1つだったという。

「お客様と会話したときのメモや気づきを貯めていって、3カ月ごとに予定しているPHPQUERYのバージョンアップや次の製品計画に活かすことを考えています。ちょっとしたメモや気づきでも蓄積し共有し合うことによって、いろいろなインサイトが得られることを実感しています」(藤井氏)

「KIMERA」は、サブスクリプションで提供しているPHPQUERYの請求書発行用に導入したSaaSサービスである。PHPQUERYは前受け料金制なので残額が毎月変わり、請求書を発行するタイミングも顧客ごとに異なる。その煩雑な作業(残額管理と毎月の請求発行作業)を従来は人手で行っていたが、KIMERAの導入によりすべて自動化した。顧客により紙の請求書が必要な場合は、KIMERAの代行サービスを利用することにした。

 またKIMERAのデータを同時期に導入した「Money Forwardクラウド」へ反映させることによって、そのまま会計処理することも可能になった。

 さらにユーザーに、オンラインの打合せだけでPHPQUERYのトライアルを開始してもらうための取り組みも強化した。インストール自動化機能の提供や「TeamViewer」によるリモート・インストールへの対応である。そしてトライアル導入後も、ユーザーとのコミュニケーションを密にするために、タスク管理用として「Backlog」、情報共有ツールとして「Intercom」を導入し、オンライン上でのサポートも厚くした。

「お客様を訪問せずにさまざまなサポートが行えるうえに、お客様からのファーストコンタクトから営業、導入、サポートに至るまでをオンラインで行える体制が整いました」(下野氏)

 そして経営意思決定支援用の仕組みとして、導入したのが「ダッシュボード」である。2016年に自社開発した予実管理システム「OmniPlan」と、HubSpot、Googleカレンダーの3つを情報ソースとする情報可視化ツールで、自社のPHPQUERYを使って情報を一元化した。

 藤井氏は、「ダッシュボードを利用すると、感覚的に理解していたことや想像でしかなかったことがグラフや数値ではっきりと示されます。それをオープンにして社員全員で共有すれば、全員が納得のいく形で意思決定でき、次の行動に活かすことができます。また、その継続によって仕事の精度もスピードも断然上がっていくはずです。そうしたリテラシーとアクションを当社の文化にしたいと考えています」と、ダッシュボードの狙いを述べる。

 

 

オフィスは仕事をする場ではなく
コミュニケーションの場へ

 

 同社は11月にオフィスを移転する。藤井氏は、「オフィスは仕事をする場ではなく、社員のコミュニケーションの場に変わります」と話す。今後は、在宅を通常の勤務形態とし、部門によって「出社可能日」を設ける。出社可能日は出社が許可される日で、出社する・しないは個々の判断に任される。オフィスの広さは現在の2/3ほど。仕事スペースはフリーアドレスになり、ゆったりと寛げる空間を用意する予定という。

「4月から在宅勤務を原則としてきましたが、出社する社員が予想外に多く、今後も依然として多ければ、実情に合わせて制度を作り変えるつもりです。社員がどこにいても仕事をしコミュニケーションできる環境が整ったので、これからは仕事に対するモチベーションを維持し、よりいきいきと楽しく働ける環境をどう作っていくかが課題だと思っています」(藤井氏)

 

[i Magazine 2020 Autumn(2020年10月)掲載]