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新型コロナ下のシステム動向を映し出す ~JUASが「第2回 緊急実態調査」結果を発表

 

JUAS(日本情報システム・ユーザー協会)は11月25日、今年度2回目の「第2回 緊急実態調査」の結果を発表した。

今回の調査は、7月30日発表の「第1回 緊急実態調査」(調査期間は6月25日~7月3日)に続くもので、新型コロナが企業経営や情報システム運営にどのような影響を与えているかを調査した。調査期間は、2020年10月15日~23日。

調査対象は、JUAS会員のユーザー企業および情報子会社で、対象企業数335件に対して116件の回答があり(回答率35%)、うち67.2%がユーザー企業、32.8%が情報子会社だった。またはユーザー企業のうち63%が製造業、37%が非製造業という結果だった。非製造業には、商社・流通、金融、社会インフラ、サービスなどの企業が含まれている。従業員規模は、売上高100億円未満が16.8%、100億~1000億円未満が28.3%、1000億~1兆円未満が28.3%、1兆円以上が26.5%という内訳だった。

最初に、「第2回 緊急実態調査」の主な調査項目を列記する。

・売上高とIT投資の見通し
・在宅勤務の状況
・保守・運用、システム開発の動向変化
・DXとデータ活用状況
・セキュリティの動向変化

この調査項目でわかるように、情報システム運営に絞った新型コロナの影響が映し出されている。

2021年度のIT投資の見通しとしては、約半数(47.5%)が「軽微な影響(±5%未満)」とし、「増える」としたのが33.6%、「減る」が18.8%という結果だった。

 

図表 IT投資の見通し

 

 

 

「IT投資で解決したい経営課題」のうち「取り組み中の課題は」のトップ5は、次のような順位だった。

・働き方改革(ニューノーマル、テレワーク)(80.2%)
・業務プロセスの効率化とスピードアップ(72.4%)
・セキュリティの強化(66.4%)
・社内コミュニケーション強化(56.0%)
・顧客チャネル・営業力強化(44.0%)

一方、「IT投資で解決したい経営課題」のうち「今後の課題」のトップ5は、次のような順位である。

・業務プロセスの効率化とスピードアップ(64.7%)
・働き方改革(ニューノーマル、テレワーク)(58.6%)
・セキュリティの強化(56.0%)
・顧客チャネル・営業力強化(46.6%)
・社内コミュニケーション強化(43.1%)

 

図表 IT投資で解決したい経営課題

 

この「今後の課題」についての調査結果を第1回と第2回で比較すると、次のような増減があった。

●第2回調査でポイントが増加した項目(カッコ内は増減のポイント)

・迅速な業績把握(リアルタイム経営)(+16.7)
・業務プロセスの効率化とスピードアップ(+14.7)
・セキュリティの強化(+8.2)
・顧客チャネル・営業力強化(+6.0)
・社内コミュニケーション強化(+2.5)
・ビジネスモデルの変革(+2.0)
・商品・サービスの 差別化・高付加価値化(+1.5)

●第2回調査でポイントが減少した項目(カッコ内は増減のポイント)

・BCPの見直し(-16.1)
・働き方改革(ニューノーマル、テレワーク)(-7.3)
・企業としての社会的責任の履行(CSR、SDGs、ESGなど)(-3.4)
・サプライチェーンの見直し・強化(-3.0)

以上の増減から、新型コロナへの応急的・緊急的な項目が減少し、業務系の課題が増加していることが確認できる。

 

新型コロナ以前と以後のシステム開発生産性の変化を尋ねた項目では、「大きく変わらない」が73.3%、「低下した」と「大幅に低下した」の合計は20.8%で、限定的な影響にとどまっている。

 

図表 システム開発生産性の変化

 

 

リモート下のシステム開発について、次のような「対策・悩み」が紹介されている。

 

開発生産性の向上要因として、「通勤時間のストレスがなくなった、周囲にいる生産性の低い社員の影響を受けることが少なくなり、業務に集中できるようになった」という回答が紹介されている。。

●システム開発は、リモートで実施すると、要件定義や設計レビューの際の指摘事項への理解度がどうしても低くなる傾向があり、生産性低下に繋がる
●オフショア開発の際の生産性確保に苦慮
●プロジェクトの立ち上がりなど、知識習得ステージでのコミュニケーションが対面と違い、非効率、また遠慮がちになり、悩みを抱える人が出てきた。 新人や経験の浅いメンバーがこれが普通だと捉え、出社してこない。テレワークは楽だと思ってしまっている。 その結果人脈が広がらず、先輩から指導を受けることも減り、成長が
鈍化、将来的に業務生産性・スキル低下を懸念する。
●問い合わせなどが少なくなり個人の作業に集中できるようになった。 反面、コミュニケーションが手薄になりがち
●コミュニケーションと人材育成が課題だと認識しており、それに対する対策について悩んでいる。

「テレワークを拡大するためのセキュリティ対策」を尋ねた項目では、「ゼロトラスト・セキュリティ」について「今後対策を行う」が第1回調査よりも5.1ポイント増加し、31.9%となった。対策が「できていない」を含めると、60%強の企業がゼロトラスト・セキュリティに未対応である。「できている」は12.1%。

 

図表 テレワークを拡大するためのセキュリティ対策

「新型コロナで見直しや強化を行った情報セキュリティ施策」は、衝撃的な結果、と見ることもできる。「見直す予定はない」を除くと、すべての項目で「見直し・強化」か「検討中」という結果である。新型コロナによって従来からのセキュリティ対策の全面的かつ抜本的な見直しを迫られている、とも言えるだろう。

 

図表 新型コロナで見直しや強化を行った情報セキュリティ対策

 

JUAS「企業IT動向調査2021 ~第2回緊急実態調査結果」はこちらから参照・ダウンロードできます。

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