2026年の生成AI市場動向
i Magazine 2023 SUMMER号で、筆者は「検証 ChatGPT〜ChatGPTはRPG開発にどこまで使えるか」という記事を書いた。
当時、生成AIとのインターフェースはWebブラウザであり、自然言語で指示を出し、回答された内容を別のツールに貼り付けて利用するといったごく初歩的な操作方法であった。あれから約2年半が経過した2026年現在、生成AIや開発系AIの機能の進化は目を見張るものがある。
まずはこの間の急速な技術進化を「一般ユーザー体験」と「エンジニアリング環境」の2つの視点から総括し、2026 年の市場トレンドを予測してみたい。
一般ユーザー視点
「体験」から「行動」へのシフト
2024 年までのAIは「賢い相談相手」であったが、2025年のAIは「行動を伴うアシスタント」へと進化した。
「指示待ち」からの脱却
最大の変化は、AIがWebブラウザやアプリを横断して操作する権限を持ったことである。
「来週の京都旅行を計画して」という指示に対し、かつてはプランのテキストが表示されるだけであった。しかし現在は、予算に応じて最適な宿を提案したり、Googleカレンダーへの登録まで行ってくれる。将来は、新幹線や飛行機、宿の予約までをAIが行い、ユーザーの役割は最終的な「承認ボタン」を押すだけになると予測される。
AIとのインターフェースの変化
2024年までは、AIとの対話はすべて文字によるものであった。ユーザーはキーボードから文字を入力し、AIがそれに対して文字で応答する形式が一般的であった。
誰もが当然と考えていたこのインターフェースは、2025年に大きな変化を遂げる。音声によるAIとの会話が可能となったのである。スマートフォンに話しかけることでAIが応答し、普段の何気ない会話から調べ物の依頼まで、キーボード入力が困難な状況下でもAIの利用が可能となったのは、大きな転換点であったと言える。
OpenAIおよびGoogleは、AIとの対話機能として、2024年後半にはそれぞれOpenAI Advanced Voice Mode、Google Gemini Liveというサービス名でリリースしている。
しかし、これらが一般的に利用され始めたのは2025年以降である。2026年現在では、音声のみならず、写真や動画も共有しながら自然言語による対話が可能となっている。
開発者視点
ツールの二極化
一般ユーザーがAIを実生活で当たり前のように利用し始めた一方で、開発現場ではコーディング体験の再定義が起きていた。2025年のAI利用を一言で表すなら、開発環境の二極化である。
AIとのペアプログラミング
2025年前半は、Cursor、Windsurf、Cline、DevinといったVisual Studio Code(以下、VS Code)ベースのツールに人気があった。これらは「エディタの中にAIがいる」形であり、人間がAIとともにコードを書く「ペアプログラミング」のスタイルである。
もちろん、これまでも統合開発環境(IDE)には、事前に組み込まれたコードサジェストの機能などはあった。しかし現在は、人間が入力した文字の先を読み、最適なロジックを提案したり、すでに書かれている前後のコードから不足しているロジックを追加できるようになるなど進化している。
CLIエージェントの台頭
コーディングにおけるAIの機能は、すでに「コードの追加・補正」から自然言語の指示でプログラムあるいはシステムを作成する段階にきている。つまり人間が直接コードを書かなくてもよい時代が、すでにそこまで来ているのだ。
そうなると、「人間がコードを書くためのエディタさえ不要」との発想がでてくるのは当然である。それを具現化したのが、2025年後半に主流となった、Claude Code、Gemini CLI、Codex(CLI)といったGUIインターフェースをもたないツールである。開発者はターミナルで指示を与え、ツールがさまざまな処理を非同期に実行する。
たとえばユーザーが、現在のバグの内容とそれを修正するように指示を出すと、AI は裏側で対象のファイルを特定して修正し、テストを実行し、コミットまで完了させる。人間は実装の細部を見る必要がなくなり、結果(ログ)だけを確認するスタイルへと移行していく。すべての開発現場がそんな時代へ突入していくことになるのではないか。
IBM i開発におけるAIの展望
IBM iの開発について言えば、AIを使った開発という視点で見る限り、2025年度は大きな動きは見られなかったと言える。
しかし2026年にはIBM Bobが登場し、RPGやCOBOLによるこれからのシステム開発にパラダイムシフトをもたらす可能性を秘めていると筆者は考えている(IBM Bobについては「開発ツール編」で詳細を解説する)。
著者|
小川 誠 氏
ティアンドトラスト株式会社
代表取締役社長 CIO CTO
1989年、エス・イー・ラボ入社。その後、1993年にティアンドトラストに入社。システム/38 から IBM i まで、さまざまな開発プロジェクトに参加。またAS/400 、IBM i の機能拡張に伴い、他プラットフォームとの連携機能開発も手掛ける。IBM i 関連の多彩な教育コンテンツの作成や研修、セミナーなども担当。2021年6月から現職。
新・IBM i入門ガイド [コード生成編]
<基本用語>
01 生成AI&IBM i市場動向
02 生成AI
03 大規模言語モデルとマルチモーダルモデル
04 プロンプトとコンテキスト
05 AIエージェント
06ハルシネ―ションとセキュリティ
07ファインチューニングとRAG
08 APIとMCP
<基本ツール>
01 コード生成AIの思考プロセスと主要ツール
02 IBM i開発環境構築ロードマップ
03 Visual Studio Code
04 Code for IBM i
05 Git
06 Markdown
<開発ツール>
01 AIファースト開発環境
02 IBM Bob
03 対話型・CLI型AIツールの戦略的活用術
04 学びを止めないための次の一歩 リンク集
[i Magazine 2026 Spring掲載]






