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06 IBM iのインターフェース ~5250エミュレータ、ACS、Navigator for i、API対応・モバイル対応など多様な選択肢 | 新・IBM i入門ガイド[基礎知識編]

IBM iのインターフェース

IBM iのユーザー・インターフェースは時代とともに進化し、多様なニーズに対応している。初期はダム端末が主流であったが、PCの普及に伴い5250エミュレータが登場し、現在ではWebブラウザを活用したインターフェースも利用可能となっている。

主なインターフェースには、5250エミュレータ画面、Navigator for i、Access Client Solutions(ACS)があり、特にNavigator for iやACSはGUIを採用し、直感的な操作を可能にしている。

最近ではスマートフォンやタブレットからもIBM iにアクセスできるようになっている。また、REST APIを活用することで外部システムとの連携も容易になり、IBM iの利便性がさらに向上している。CUIからGUI、モバイル、API連携まで、IBM iのインターフェースは多様な選択肢を提供している。

5250エミュレータ画面

いわゆる「黒地に緑色の文字」の画面であり、UNIXのシェルやWindowsのコマンドプロンプト画面に相当するものである。

AS/400の時代においては、AS/400本体と直結された画面制御用のプロセッサやメモリを内蔵する専用端末であり、キャラクターベースのパネルを通じた物理的なユーザー・インターフェースであった。その専用端末はダム端末(略してダム端)と呼ばれたが、現在は販売されておらず、PCに導入した上でその動きをエミュレーションする5250端末ソフトウェアに置き換えられている。

5250エミュレータソフトが普及した現在、その数は多数あるが、IBM製の代表的なものはIBM i Access Client So
lutions(ACS)、IBM Personal Communications(PCOMM)である。

5250エミュレータ画面からの操作では、CUIのメニュー画面からオプション番号を指定する方法と、コマンドラインに各種CLコマンドを直接打ち込む方法の2通りがある(図表1)。

図表1  5250エミュレータソフトの画面

Access Client Solution

IBM i Access Client Solution(ACS)は、これまでのIBM i Access for Windows(IAW)やIBM i Access for Webに代わって、PCをIBM iに接続するための強力な機能セットを集約したインターフェースである。

ACSは、プラットフォームに依存しないJavaベースの製品であり、Javaをサポートするほとんどのオペレーティング・システム環境(Linux、Mac、Windowsなど)で稼働する。

IBM i Access for Windows(IAW)に同梱されていた5250エミュレータ機能やデータ転送機能に加えて、iSeriesナビゲーターの機能の大部分もサポートされている。SQLおよびCLの実行、データベース、プリンタ出力、統合ファイルシステム、OSS管理、LAN およびHMCコンソール用のIBM i仮想コントロールパネルなどの機能が提供され、多彩な機能を備えている。

また、追加アプリケーションパッケージのODBCドライバーを導入すれば、ODBCでDb2 for iのデータを取得できる。

IBM i(OS)のメジャー・バージョンアップや新しいTechnology Refresh(TR)のリリースに伴い、ACSのさまざまな機能が拡張されており、「IBM i運用担当者や開発担当者は、ACS1つでほとんどの操作が完結する」と言える(図表2)。

図表2  IBM i Access Client Solutionの画面

最近行われたSQLスクリプト実行機能強化により、ACSではIBM iサービスが利用できるようになった。IBM iサービスとは、システム API や CL プログラミングなしに、SQL で IBM iシステム情報を参照できる機能である。アプリケーションサービス、ジャーナルサービス、セキュリティサービス、システムヘルスサービスなどの情報を参照するための SQLスクリプトのサンプルが提供されるため、SQLコマンドに詳しくなくても簡単に活用できるようになった。システム標準で提供されているため、開発者ごとの属人性を排除し、システムの可視化が向上する(図表3図表4)

図表3 IBM i サービスの使用方法
図表4 IBM i サービスの使用例:適用済みグループPTF情報

Navigator for i

Navigator for iは、IBM iシステムの監視および管理をGUIで行えるようにするWeb ベースのインターフェースである。i Access for Windowsに同梱されていたSystem i ナビゲーター(i ナビ、オペナビ)の代替として利用でき、System iナビゲーターで利用可能な大半のタスクがサポートされている。IBM i 7.4 TR5およびIBM i 7.3 TR11以降で新しいUIのNavigator for iが利用可能である。

5250端末エミュレータ・ソフトウェアとは異なり、Navigator for iはPCへの導入作業が不要である。実体としてはIBM iオペレーティング・システムに含まれるWebアプリケーションであり、サポートされるWebブラウザに若干の制約はあるものの、Webブラウザから http://<サーバー名または IP アドレス>:2002/Navigatorを指定するだけで、簡単にアクセスできる。また、ACSのメイン画面にある「Navigator for i」からログインすることも可能である。

Navigator for iはOSの標準機能として搭載されており、Technology Refresh(TR)やメジャーリリースとともに、機能や操作性が拡張されている。

5250端末で行えるほぼすべての運用・管理機能を提供しており、ジョブ管理、ネットワーク管理、CPUやストレージの利用状況の監視、パフォーマンス分析、セキュリティ設定などの常用作業を幅広くサポートする。さらに、Navigator for iでしか利用できない独自の機能も存在する。たとえば、Web Administration for iから行うIWSのREST APIサービスのデプロイなどがある(図表5)。

図表5 Navigator for iから利用できるIBM i管理機能

Navigator for iでは、システムのCPU、メモリ、ディスク、ジョブの状況といったシステムタスクの状況を1つの画面で確認できる。また、パフォーマンスカテゴリーの「データ調査」から、そのデータを基にしたグラフや分析結果(CPU、メモリ、ディスクなどのパフォーマンス指標)をブラウザ上で確認できるため、日々のシステム状況を視覚的に把握できるようになっている。そのため、5250のグリーン画面に慣れていない世代でも、直感的にIBM iの管理を行うことが可能である。

また、Navigator for iでは、IBM iサービスを使用してシステムから情報を取得している。Navigator for iのすべての画面の右上にSQLボタンがあり、このアイコンをクリックすることで、Navigator for iがシステム情報を取得する際に使用しているSQLステートメントを確認できる。SQLボタンの活用により、SQLを用いたシステム操作や情報取得を簡単に学ぶことができる。これにより、システム管理者がIBM iを効率的に操作できるだけでなく、システムの透明性と操作性が向上する(図表6)。

図表6 IBM iサービスを利用してシステムから情報を取得

API対応

近年、IBM iを基幹システムとして採用する企業では、内部データを外部システムと連携させて参照・活用するニーズが高まっており、API連携が簡便で効果的な方法として注目されている。

IBM iには、API連携に必要なアプリケーションサーバー(APサーバー)が標準で搭載されており、追加料金なしでREST APIの構築が可能である。この機能はIBM i 7.2以降(IBM i 7.2 HTTPグループPTFレベル6以降)でサポートされており、以降のバージョン(IBM i 7.3、7.4、7.5)でも継続的に機能が拡張されている。

そのアプリケーションサーバーは、統合APサーバー(Integrated Web Application Server/IAS)、IBM iの統合Webサービスサーバー(Integrated Web Service/IWS)、LWI(Light Weight Integration Server)などとも呼ばれるが、実態はWebSphere Application ServerベースのAPサーバーである。このAPサーバー上で動作するJavaアプリケーションが外部からhttp/httpsでRESTリクエストを受け取り、Toolbox for JavaのPCMLクラスを使用してIBM i上の機能・プログラム・データベースを呼び出し、処理する(図表7)。

図表7 外部からRESTリスクエストを受け取りIBM iで処理

Web Administration for i(http://“サーバー名”or“IPアドレス”:2001/HTTPAdmin) を使用することで、Webサービスを簡単にデプロイできる。この管理ツールを利用すれば、Webサービスサーバーの作成やREST APIの配置を、GUIベースで直感的に実施できる。また、APIの構築ではSQLを用いてデータベースアクセスだけでなく、既存のILEプログラムやオブジェクトを再利用することも可能である。

IBM i上でAPIを利用することで、IBM iの専門知識がなくてもIBM i内部のデータを簡単に活用できる。

たとえば、SQL文だけでAPIを作成できるため、IBM iのプログラムがを書けなくても外部システムとの連携が可能である。また、既存のRPGやCOBOLで構築された資産を活かしてWebサービスを開発できるため、これまでの知識を活用しつつ短期間での開発が実現できる。外部システムが増えた場合でも、新たなプログラムを作成する必要がなく、APIを通じて既存の機能を他のシステムやアプリケーションから再利用できるため、コードの重複を避けて開発効率が向上する。さらに、IBM iのOS標準機能として提供されており、追加のコストを抑えつつ効率的にAPI化を進めることができる。

モバイル対応

近年のアップデートによりモバイルデバイスへの対応が強化されている。特に、Navigator for iはWebブラウザベースの管理ツールであり、PCだけでなくスマートフォンやタブレットからもアクセス可能である。また、APIを活用することで、モバイルアプリから直接IBM iの情報を取得し、システムデータを確認し、操作を実行することも可能となる。

そのほかのIBM i向けモバイル対応製品として、LANSA LongRangeやDel
phi/400、aXesなど、COBOL、RPGといった既存資産プログラムの活用を前提とした業務アプリケーションのWeb化/モバイル化を実現する他社製品も豊富に用意されている。

著者
李 馥岑氏

日本アイ・ビー・エム株式会社
テクノロジー事業本部 
IBM Power テクニカルセールス

[i Magazine 2025 Spring号掲載]