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12 Power10のポートフォリオ ~Power S1012からPower E1080まで多様なラインナップ、9モデルを展開 |新・IBM i入門ガイド[基礎知識編]

Power10搭載モデルの特徴

Power10プロセッサを搭載したIBM Powerのモデルは、小~中規模システム向けのサーバーであるスケールアウト・モデル、大規模システム向けのサーバーであるエンタープライズ/スケールアップ・モデルで構成される。

それぞれのモデルには、以下のマシンタイプ・モデルが存在する(図表1)。

図表1 IBM Power 最新ポートフォリオ


◎スケールアウト・モデル

Power S1012(9028-21B)
Power S1014(9105-41B)
Power S1022s(9105-22B)
Power S1022(9105-22A)
Power S1024(9105-42A)
Power L1022(9786-22H)
Power L1024(9786-42H)

◎エンタープライズ/スケールアップ・モデル

Power E1050(9043-MRX)
Power E1080(9080-HEX)

*IBM iは、Power E1050 を除くマシン上で稼働する。

スケールアウト・モデルとエンタープライズ・モデル

スケールアウト・モデルは、1ソケット2U/タワーのPower S1012、1ソケット4U/タワーのPower S1014、2ソケット2UのPower S1022/S1022s/L1022、2ソケット4UのPower S10
24/L1024の7モデルで構成される。

Power L1022、Power L1024はLinux用に提供されているモデルであるが、コアの25%まではAIX、IBM i区画を構成することが可能である。

Power S1012、Power S1014、Power S1022sは、エントリーモデルの位置づけとなる。これら3モデルのPower10プロセッサはシングルチップ・モジュール(SCM)、Power S1022/L1022、Power S1024/L1024はデュアルチップ・モジュール(DCM)である。

一方のエンタープライズ/スケールアップ・モデルは、Power E1080がIBM iでサポートされる。

Power10プロセッサの概要は、図表2のとおりである。

図表2 Power10プロセッサの概要

Power10プロセッサの機能であるAI推論、機械学習を実行するMatrix Math Accelerator(MMA)、透過的なメモリ暗号化は、すべての Power10モデルで利用可能である。

ZLIB

IBM i 7.5で追加されたデータ圧縮のためのZLIBアルゴリズムは、Power10プロセッサのオンチップNest Accelerator(NX)GZIPを自動的に使用することで、少ないCPU負荷で、より高速に圧縮オプションを実行できる。

メモリ

メモリは、Differential Dual Inline Memory Module(DDIMM)テクノロジーを採用し、業界標準のISDIMMと比較してメモリ可用性が2倍に向上している(Power S1012 は ISDIMMを使用)。

DDIMMは、Power10マシン発表の時点ではDDR4であったが、2024年7月よりDDR5メモリが提供されるようになった。DDR5 DDIMMメモリは2つのDRAMポートを備え、DDR4 DDIMMメモリと比べてバンド幅やエネルギー効率、ロードのレイテンシーが大幅に向上している。

メモリに関しては、POWER9ではエンタープライズ・モデルのみで利用可能であったActive Memory Mirroring(AMM)が、Power10ではスケールアウト・モデルでも構成可能になった(Power S1014、S1012 を除く)(図表3)。

図表3 新しいPower10 メモリ・テクノロジー

AMMの構成によってPowerVMハイパーバイザーで使用される重要なメモリ領域が2重化され、システムの可用性が向上する。AMMを構成する場合は、メモリDIMMを最低8枚(4フィーチャー)構成する必要がある。

PCIeスロット

Power10マシン本体の PCIeスロットは、Gen5が採用されている(一部スロットはGen4)。I/O拡張ドロワーは、PCIe Gen4用およびGen3用のドロワーが接続可能である(Gen3用ドロワーは営業活動終了済み)。

I/O拡張ドロワーには6スロットのFanOutモジュールが2台搭載可能で、合計12スロットを提供する。ただし、FanOutモジュールを1台接続するためには本体にPCIeアダプターが1枚必要になるため、I/O拡張ドロワーを1台接続することで増加するPCIeスロットは、10スロットとなる。

内蔵ディスク

Power10マシン本体の内蔵ディスクは、NVMeドライブのみとなる。

Power S1014、S1024/L1024では、NVMe U.2ドライブが8スロットのバックプレーンを2台まで構成可能で、最大16ドライブを搭載できる。

Power S1022、S1022sでは、NVMe U.2ドライブが4スロットのバックプレーンを2台まで構成可能で、最大8ドライブを搭載できる。

IBM iではNVMeドライブはIBM i 7.4 TR1以降でのサポートであるが、Power10 SCOモデルではIBM i 7.3でもサポートされるようになった。

Power E1080は、システム・ノードに15mm NVMe ドライブ2スロット、または7mm NVMe ドライブ4スロットのバックプレーンを構成できる。

NVMeドライブ用の拡張ドロワー(NED24)により、ドロワーあたり24ドライブを構成できるが、NED24を接続するにはプロセッサが2ソケット以上の構成が必要になる。また、NED24を接続するために必要となる本体側のPCIeアダプターが、I/O拡張ドロワーを接続するためのPCIeアダプターと共通であるため、NED24を接続することでI/O拡張ドロワーの台数が減ることになる。

HDD、SSDドライブは、EXP24SX SASストレージ・エンクロージャを接続することで構成可能になる。

EXP24SXを接続するためのSASアダプターは、従来のアダプターがPower10 SCOモデルでもサポートされる。EXP24SXおよびSASアダプターは営業活動終了済みである。

サービス・プロセッサ

Power10モデルのサービス・プロセッサは、これまでのFSPに代えてenterprise Baseboard Management Controller(eBMC)が搭載される(Power E1080を除く)。eBMCはPCIeアダプターで、HCM/ASMIを接続するEthernetポート、UPSケーブルを接続するUSBポートが提供される。

FSPを使用するシステムでは、仮想化を管理する情報はFSPを介してHMCと通信されるASMIが、eBMCでは、HMCがサーバーのFWスタックと直接通信する。また、ASMIを使用する際の画面が一新されている。

IBM iで構成可能なPower10の各モデルの特徴

次に、IBM iで構成可能なPower10の各モデルを見ていこう。

Power S1012(9028-21B)

Power S1012 は2024年5月発表の最新モデルで、2Uハーフサイズまたはタワーのコンパクトな筐体が特徴である。

Power10プロセッサは、シングルチップ・モジュール(SCM)の1コア、4コア、8コアが提供される。メモリは最大256GB、内蔵NVMeは800GBまたは1.6TBドライブを4ドライブまでの構成で、最大容量は 3.2TBである。

1コア・プロセッサはIBM iのみで構成が可能で、1区画のみとなる。メモリは64GB、内蔵NVMeは800GBまたは1.6TB ドライブを2ドライブまでの構成で、最大容量は3.2TBである。

4コア、8コア・プロセッサでは、AIX/IBM i/Linuxの構成が可能である。4コア・プロセッサで IBM iを構成する場合は、メモリは32GBまたは64GBの構成となる。

Power S1012 の筐体は、1コアではタワー型のみ、4コアではラック型、タワー型の選択が可能、8コアではラック型のみとなる

Power S1014(9105-41B)

Power S1014は1ソケットのエントリーモデルで、4Uラックマウントまたはタワー型の筐体が選択可能である。

Power10プロセッサは、シングルチップ・モジュール(SCM)の4コア、8コア、24コアが提供される。IBM iが使用できるのは、4コア、8コアのモデルである。

メモリは最大1TB、内蔵NVMeは最大16ドライブ搭載可能である。

4コア・プロセッサのIBM i構成では、メモリは最大64GB、内蔵NVMeドライブは最大6.4TBとなる。また、拡張I/Oドロワー、拡張ディスク・エンクロージャは接続できない。

Power S1014の4、8コア構成では、200V/100V電源機構を選択できるので、100V電源で使用することが可能になる。

Power S1022s(9105-22B)

Power S1022sは、2Uラックマウント・モデルである。

Power10プロセッサはシングルチップ・モジュール(SCM)の4コアまたは8コアで、2ソケットの構成が可能である。

メモリは最大2TB、内蔵NVMeは最大8ドライブ搭載できる。

IBM iでのサポートは、4コア2ソケット構成の場合はネイティブ環境でサポートされる。8コア1、2ソケット構成ではVIOS仮想環境でのサポートで、最大4コアまでのIBM i区画を複数構成可能である。4コア1ソケットの構成では、IBM iはサポートされない。

プロセッサが4コア1、2ソケットまたは8コア1ソケットで、内蔵NVMeドライブが4ドライブまで、拡張ドロワーを接続しない構成の場合は、200V/100V電源機構を選択できるので、100V電源で使用することが可能になる。

Power S1022(9105-22A)
Power L1022(9786-22H)

Power S1022/L1022は、2Uラックマウント・モデルである。

Power10プロセッサはデュアルチップ・モジュール(DCM)の12コア、16コア、20コアで、12コアは1ソケットまたは2ソケット、16、20コアは2ソケットの構成である。

メモリは最大4TB、内蔵NVMeは最大8ドライブ搭載可能である。

IBM iはVIOS仮想環境でのサポートで、1区画に構成できるコア数は最大4コアに制限される。

Power S1022s/S1022/L1022は奥行きが812mmと長いため、ラックへ搭載する際の考慮点がある。IBM S42ラックへ搭載する場合には、下記のいずれかの対応が必要になる。

● ラック・エクステンションを構成して、ラックの奥行きを伸ばす
● ケーブル・マネージメント・アームを取り付けない
● ラックの背面ドアを取り外す

Power S1024(9105-42A)
Power L1024(9786-42H)

Power S1024/L1024は、4Uラックマウント・モデルである。

Power10プロセッサはデュアルチップ・モジュール(DCM)の12コア、16コア、24コアで、12コアは1ソケットまたは2ソケット、16コアと24コアは2ソケットの構成である。

メモリは最大8TB、内蔵NVMeは最大16ドライブ搭載可能である

Power S1022、S1024は、スケールアウト・モデルで初めてプロセッサのCapacity Upgrade on Demand(CUoD)をサポートした。CUoD のサポートにより、将来のワークロードの成長に合わせて、プロセッサの活動化コードを段階的に追加することで、サーバー導入時の初期投資を抑えられる。

Power S1022、S1024は、Power Private Cloud with Dynamic Capacity(PEP 2.0)をサポートする。PEP 2.0 のサポートにより、プール内のサーバー間でプロセッサ・リソースを共有して効率よく使用できる。

また、プール内のリソースを超えたワークロードが発生した場合には、分単位の従量制でダイナミックにリソースを追加して使用することが可能になる。PEP2.0のプールは、Power S922、S924のGモデルと混在が可能なので、POWER9からPower10への移行の際にも活用できる。

Power E1080(9080-HEX)

Power E1080はエンタープライズ/スケールアップ・モデルで、5Uのシステム・ノードと2Uのコントロール・ユニットで構成される。システム・ノードは最大4台までの構成が可能で、マルチノードによる高度な可用性を実現する。

Power10プロセッサは、シングルチップ・モジュール(SCM)の10、12、15コア、ノードあたり4ソケットの構成で、4ノード構成では最大240コアとなる。

メモリはノードあたり最大16TB、4ノードで最大64TBとなる。

内蔵PCIeスロットは、ノードあたりLow ProfileのGen5スロットが8スロットある。また、Gen4拡張I/Oドロワーをノードあたり4台接続できる。

内蔵NVMeは、ノードあたり15mm厚のドライブを2ドライブまたは7mm厚のドライブを4ドライブ構成できる。また、NVMe拡張ドロワー(NED24)をノードあたり2台接続することが可能である。

Power E1080のプロセッサ、メモリはCuDに対応しており、Capacity Up
grade on Demand(CUoD)による段階的なアップグレード、Elastic CoDにより一時的なワークロード増加への対応が可能である。また、PEP 2.0 のサポートにより、プール内でのリソースの共有や、分単位の従量制での一時的なリソース拡張に対応する。

プロセッサ・グループ

IBM iソフトウェアのライセンスは、ハードウェアモデル/マシンサイズに基づいて決定される。Powerハードウェア・プラットフォームには、3つのマシンサイズ・グループ(Small、Medium、Large)が存在する。IBM iの場合、マシンサイズ・グループにマップされるプロセッサ・グループ(別名「ソフトウェア層」)が存在する。

・Small:プロセッサ・グループ P05、P10、P20
・Medium:プロセッサ・グループ P30
・Large:プロセッサ・グループ P50(現在は使用されていない)

Power10マシンのプロセッサ・グループは、図表4のように分類される。

図表4 Power10搭載マシンのマシンサイズとプロセッサ・グループ

これらのすべてのグループは、IBM iライセンス移転グループにもマッピングされる。

プロセッサ・グループ P05/P10 のマシンは、IBM iライセンスはプロセッサ・ライセンスとユーザーライセンスの両方が必要になる。

プロセッサ・グループP20/P30のマシンは、IBM iライセンスはプロセッサ・ライセンスのみであるが、5250対話型ワークロードを使用する場合には、ハードウェアの5250 Enterprise Enablement機構を使用するプロセッサ・コア数分が必要になる。

 

 

 

 

著者
三神 雅弘氏

日本アイ・ビー・エム株式会社
テクノロジー事業本部
IBM Power テクニカルセールス

[i Magazine 2025 Summer号掲載]