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14 IBM iのLPMとCoD ~実行中のLPAR区画を別サーバーへ移動するLPM、プロセッサやメモリのリソースを動的に活動化するCoD |新・IBM i入門ガイド[基礎知識編]

Live Partition Mobility

Live Partition Mobility(以下、LPM)を使用して、実行中のLPAR区画を別のサーバーへ移動できる。サービスを中断することなく、ある物理サーバーから別のサーバーにアプリケーションを移行することが可能になる。

移動の操作ではシステム・トランザクションの整合性が完全に維持され、プロセッサとメモリの状態、接続された仮想デバイス、および接続されたユーザーを含むシステム環境全体が移動される。

LPMでは、無停止で別サーバーへLPAR区画を移動できるので、プロセッサやメモリなどパフォーマンス増強の対応や、新サーバーへの移行を容易に実行することが可能になる(図表1図表2図表3)。

図表1 Live Partition Mobility 初期状態
図表2 Live Partition Mobility マイグレーション中
図表3 Live Partition Mobility 完了後

LPMを使用するには、IBM i区画はVIOS仮想環境で構築し、ディスクは外部ストレージで移動元と移動先サーバーのどちらからも接続できる構成が必要である。

移動先サーバーには、移動するIBM i区画を実行するために充分なプロセッサとメモリが使用可能であること、移動元サーバーと同様なネットワーク環境が使用可能であることが条件となる。

またIBM i区画を移動する場合には、IBM i区画が制限付き入出力モードであること、移動先サーバーが制限付き入出力モードをサポートしていることを確認しておく。

LPMのための移動元、移動先サーバーの確認については、下記の IBM Documentation を参照のこと。

◎パーティション・モビリティー のソースおよび宛先サーバーの準備

https://www.ibm.com/docs/ja/power9/9009-42A?topic=mobility-preparing-source-destination-servers-partition

IBM i区画をLPMで移動する場合は、移動先サーバーにもIBM iライセンスが必要になる。移動先サーバーにIBM iライセンスがない場合は70日間の暫定使用となり、この70日間の使用期限までにIBM iライセンスを購入するか、他のサーバーで移動する必要がある。

Capacity on Demand

Capacity on Demand(以下、CoD)は、プロセッサ、メモリのリソースを動的に活動化する。

CoDは、現在は以下の3つが提供されている(図表4図表5)。

図表4 各CoD の機能と特徴
図表5 Power10 サーバーでサポートされる CoD 機能

Capacity Upgrade on Demand

Capacity Upgrade on Demand(以下、CUoD)は、プロセッサまたはメモリの活動化フィーチャーを購入し、提供されたアクティベーション・コードをサーバーに入力することにより、サーバー上の非アクティブなプロセッサ・コアまたはメモリを恒久的に活動化できる。

現在から将来へのワークロードを見積もり、プロセッサ、メモリのリソースをCUoDにより段階的に増強することで、初期投資を抑えられる。

アクティベーション・コードは、IBM Entitled Systems Support(ESS) Webサイトから入手し、HMCを使用してサーバーへ入力する。

Elastic Capacity on Demand

Elastic Capacity on Demand(以下、Elastic CoD)は、非アクティブなプロセッサ・コアまたはメモリを一時的に活動化することで、ビジネスのピーク時のワークロードに対応する。

必要な日数だけ非アクティブなプロセッサ・コアまたはメモリをアクティブにすることで、ビジネスのピーク時に必要なプロセッサ、メモリのリソースを確保できる。

Elastic CoDで提供される一時キャパシティは、プロセッサ日数またはメモリ日数と呼ばれる単位で使用される。プロセッサ日数は1コアに日数を掛けたもの、メモリ日数は1GBに日数を掛けたものである。

Elastic CoDは、事前にマシンタイプ(4586-COD)のプロセッサまたはメモリの専用機構を購入する。Elastic CoDの機構は、プロセッサ、メモリそれぞれ1ユニット単位で購入が可能で、プロセッサの1ユニットは1プロセッサ・コア日、メモリの1ユニットは8GB日である。プロセッサのユニットは、IBM iとAIX/Linuxで異なるので、Elastic CoDを使用するOS環境に合わせて購入する必要がある。

Elastic CoDのアクティベーション・コードは、ESS Web サイトで購入済みのユニットから必要なユニット数を引き出す形でコードを発行し、HMCを使用してサーバーへ入力する。Elastic CoDとCUoDの活用ケースについて図表6にまとめた。

図表6 Elastic CoD と CUoD

Trial Capacity on Demand

Trial Capacity on Demand(以下、Trial CoD)は、サーバーでプロセッサまたはメモリのリソース追加による効果を評価したい場合に、非アクティブなプロセッサ・コアまたはメモリを一時的に無償で活動化する。

Trial CoDの試用期間は30日間の電源オンの期間で、サーバーが電源オンの間のみ試用期間に計算される。Trial CoDを試用期間の満了前に使用を停止した場合は、その時点で試用期間は終了となる。

Trial CoD には、標準リクエストと例外リクエストがある。標準リクエストでは、8コアおよび/または64GBのメモリを30日間アクティブ化する。CUoDの恒久的なプロセッサ・アクティベーションを購入すると、再度Trial CoDの標準リクエストが可能になる。

一方の例外リクエストでは、すべての非アクティブなプロセッサ・コアまたはメモリを30日間アクティブ化する。例外リクエストは、サーバーで1回限り使用できる。Trial CoDのリクエストは、ESS Web サイトから行う。

著者
三神 雅弘氏

日本アイ・ビー・エム株式会社
テクノロジー事業本部
IBM Power テクニカルセールス

[i Magazine 2025 Summer号掲載]

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