独立行政法人情報処理推進機構(以下、IPA)は6月26日、日本・米国・ドイツ企業におけるDXの取組とその成果、技術利活用、人材育成などについて調査した結果をまとめた「DX動向2025」を公開した。
IPAでは、日本企業のDXに関する状況や課題等について調査した結果を速やかに公表することを目的に「DX動向2024」を2024年6月に公表した。今回、日本だけでなく米国およびドイツの企業におけるDXの取組や成果、技術利活用、人材育成などについての調査を今年2月から3月まで実施し、「DX動向2025」として公表している。
同調査の結果、米国、ドイツと比較するとDXの取組割合は日本と大きく傾向は変わらないが、日本は米国やドイツに比べ、DXによる成果が出ている割合が低くなっている。
DXによる経営面の成果は、日本がコスト削減や製品提供日数削減の回答が多いのに対し、米国とドイツでは利益や売上高の増加、市場シェア率や顧客満足度の向上の回答が多くなっている。
業務プロセス最適化の取組状況では、日本が個別の業務の最適化に取組んでいる割合が高いのに対し、米国とドイツでは全社最適化に取組んでいる割合が高くなっている。
総じて日本のDXは部分最適に止まり、業務効率化や生産性向上といった“内向き“の取組を行う一方、米国・ドイツのDXは全体最適を志向し、顧客・市場に価値を提供といった“外向き”の取組を行っている傾向が明らかとなった。
1 DXの取組状況
日本のDXの取組状況は米国とほぼ同程度になっており、「全社戦略に基づき、全社的にDXに取組んでいる」の割合はドイツよりも高くなっている。日本の経年比較でみると「全社戦略に基づき、全社的にDXに取組んでいる」「全社戦略に基づき、一部の部門において取組んでいる」を合わせた割合は、2024年度は2022年度よりも増えているが、2023年度とほとんど変わらない、頭打ちの傾向にある。

2 DXの成果
DXの取組において、設定した目的に対する成果が出ているかを尋ねたところ、米国とドイツは「成果が出ている」の割合が8割を超えているのに対し、日本は6割弱と低くなっている。また「わからない」の割合が米国とドイツは5~6%であるのに対し、日本は26.2%と大きな差が出ている。日本の経年比較でみると、「成果が出ている」の割合は一進一退の状況にあることが分かる。「わからない」が増加傾向にあり、DXの成果が測られていないといった課題が出ている。

3 DXによる経営面での成果内容
DXによる経営面での成果についてどのようなものがあるかを尋ねたところ、日本は「コスト(人件費・材料費等)削減」「製品・サービス等提供にかかる日数削減」といった生産性向上や業務効率化のような内向きの取組みに関する成果が多い傾向があった。他方、米国とドイツは「売上高増加」「利益増加」「市場シェア向上」「顧客満足度」といったバリューアップを中心とした外向きの取組みに関する成果が多い傾向があることが分かった。

4 DX成果を把握するための指標の設定
DXによる成果を把握するための指標を設定しているかを尋ねたところ、日本は「設定している」(「自社独自の指標」と「外部から提供されている指標」の合計)の回答割合の合計は3割以下でしたが、米国とドイツは共に8割以上となっており、指標の設定において大きな差が見られました。

5 業務プロセス最適化への取組
業務プロセスの最適化に関する取組方針について尋ねたところ、日本は個別の業務プロセスの最適化に取組む割合が高く、米国とドイツは業務プロセスの全社最適化に取組む割合が高いことが分かった。

6 DXを推進する人材の過不足状況
DXを推進する人材の「量」の確保状況について尋ねたところ、日本は不足している割合(「やや不足している」「大幅に不足している」の回答割合の合計)が8割超えており、大半の企業でDXを推進する人材が不足している状態となっている。2023年度調査の結果と同様の傾向となっており、状況に大きな変化はないことが分かった。また、米国とドイツにおいては「やや過剰である」「過不足はない」の回答割合の合計がそれぞれ7割と5割程度となっており、人材不足が日本ほど深刻な状態にはなっていないことが分かった。

このほか、同調査では、データの利活用や生成AI、システムの内製化、レガシーシステムの刷新といった技術の利活用状況の面や、DXを推進する人材の過不足や育成といった人材に関する面についても日本・米国・ドイツ間での比較分析をしている。
[i Magazine・IS magazine]