日本IBMは7月11日、IBM Institute for Business Value(IBV)が実施した最新の調査であるCEOスタディ2025「ビジネス成長を飛躍させるための5つの意識改革」の日本語版を公開した。
日本を含む世界の最高経営責任者(CEO)2000名を対象とした同調査によると、調査対象となったCEOは、テクノロジーの導入の加速という課題に直面しつつも、自社全体でAIソリューションの活用をさらに推進していく意向を明確にしている。
具体的には、CEOはAI投資の拡大が今後2年間で2倍以上になると予測していることが明らかになった。また回答者の約6割(世界61%、日本55%)が、すでに自社でAIエージェントを積極的に採用しており、その全社導入も準備中であると回答した。
調査結果によると、CEOの6割以上(世界68%、日本64%)が、部門横断的な連携を可能にしてイノベーションを推進するには、統合された企業データ・アーキテクチャが不可欠であると認識しており、約7割(世界72%、日本68%)は自社固有データが生成AIの価値を引き出す鍵になると回答している。
一方で、同調査は、企業が効果的なデータ環境の整備に苦慮している可能性があることも示している。実際に、回答者の半数(世界50%、日本43%)は、近年の急速な投資の影響により、自社のテクノロジーが分散された状態にあると認めている。
その他の主な調査結果は、以下の通りである。
短期的ROIと長期的イノベーションのはざまで揺れるCEO
・過去3年間に実施されたAI施策のうち、期待通りのROIを達成できたと回答したのは約4分の1(世界25%、日本26%)にとどまり、全社展開に成功したと回答した割合は2割(世界16%、日本18%)にも満たなかった
・世界のCEOの65%は、ROIを基準としてAIのユースケースを選定していると回答した一方で、日本のCEOで同様に回答したのは53%だった。また、約7割(世界68%、日本69%)は、自社にはイノベーションのROIを効果的に測定するための明確な指標があると回答している
・生成AI投資が単なるコスト削減以上の価値をもたらしていると回答したのは、世界のCEOでは約半数(52%)だったのに対し、日本のCEOでは64%と大きく上回った
・CEOの約3分の2(世界64%、日本67%)が、出後れるリスクを避けるために、テクノロジーがもたらす価値が完全に見極められていなくても投資を決断すると認めている。一方で、テクノロジー導入に関して、「遅くても正しい」より「誤りがあるが速い」方が望ましいとするCEOは4割以下(世界37%、日本38%)にとどまっている
・CEOの約6割(世界59%、日本60%)は、予期せぬ変化が起きた場合、自社の既存業務用の資金とイノベーション用の投資との間でバランスを取るのが難しくなると答えている。さらに、世界の67%(日本57%)のCEOは、長期的な成長とイノベーションの推進につながるデジタル機会を活用するには、予算の柔軟性を高める必要があると認識している
・CEOの9割弱(世界85%、日本86%)が、AIの効率化とコスト削減に投資することで2027年までにプラスのROIを実現できると期待している。また、CEOの約8割(世界77%、日本81%)は、同じく2027年までに、AIの拡大と成長を推進するプロジェクトについても良好なROIが見込めると回答している
AIの価値を引き出すには、戦略的リーダーシップと専門人材が不可欠──スキルと専門知識のギャップが浮き彫りに
・CEOの7割弱(世界69%、日本65%)は、自社の成功を左右するのは、戦略を深く理解し、重要な意思決定を行う権限を持つ幅広いリーダー層を維持できるか否かであると考えている
・CEOの6割以上(世界67%、日本61%)は、適切な専門家を適切なポストに配置し、適切なインセンティブを与えることが差別化につながると回答
・世界、日本ともにCEOは、イノベーションを妨げる主な障壁として、組織内のサイロ化による連携の欠如、リスクや変化(ディスラプション)を回避する姿勢、ノウハウや知識の不足を挙げている
・CEOによれば、今後3年以内に従業員の約3割(世界31%、日本33%)は、再トレーニングやリスキリングが必要になる見通しであり、CEOのおよそ3分の2(世界65%、日本69%)は、スキル・ギャップの解消に自動化を活用していく予定だと述べている
・世界のCEOの54%、日本のCEOの43%が、1年前には存在すらしなかったAI関連業務のために人材採用を進めていると回答した
同レポートは以下から
https://www.ibm.com/thought-leadership/institute-business-value/jp-ja/c-suite-study/ceo
[i Magazine・IS magazine]