IBM Power Virtual Server(以下、PowerVS)は、IBMが提供するIBM iのクラウドサービスであり、IBM Cloudとともに利用するIBM Power上のLPAR環境である。IBM PowerをLPAR単位の従量課金で利用可能である。
IBM Cloudのコロケーションサイトに物理的にIBM Powerが配置されており、オンプレミスでのIBM Powerと同じテクノロジーで構成れている。オンプレミスで認定を受けているインフラストラクチャと同一であり、主要なソフトウェアの認定とサポートを維持できる環境として提供されている(図表1)。

PowerVSのメリット
PowerVSには、以下のようなメリットがある。
柔軟性
・必要なタイミングでCPU/メモリ/ディスクを追加できる。使用しないときは、インスタンスを削除して無課金とすることも可能である。
高可用性
・全世界にデータセンターがあり、局地的な災害や障害に対してはロケーションを切り替えて運用できる。
・バックアップをとることで、障害時にクラウド内でのアプリケーション環境の復元が可能である。
接続性
・複数の接続手順と複数箇所の接続ポイントが用意されており、冗長化が可能である。
即時性
・いつも最新OS環境を使って技術検証できる。
・数分でLPARのデプロイが可能である。
運用容易性
・ディスクに保管し、いつでもどこからでもデータを復元可能である。
・リモートから操作できる。
PowerVSのユースケースと責任分解点
PowerVSのユースケースには、図表2の例が考えられる。

またPowerVSの責任分解点は、図表3のようになる。

基本的な考え方は、以下のとおりである。
•利用者が操作できる領域は利用者の責任
•利用者が操作できない領域はクラウド事業者の責任
PowerVSの場合は、インフラの責任はIBM、OS以上(fix適用などを含む)の責任は利用者となる。
PowerVSでIBM iをデプロイする
PowerVSでIBM iをデプロイする手順は、以下のとおりである。それぞれの操作内容を見ていこう。
Step1 IBM Cloudにログインする
IBM Cloud(https://cloud.ibm.com/login)に、IBM IDとパスワードでログインする。
Step2 ワークスペースを作成する
ユーザーはワークスペースから、サポートされているPowerのオペレーティングシステム(のブートイメージ)を使用して、個々の区画(VM)を作成できる。
ワークスペースは、リージョン内のすべての仮想サーバー、サブネット、およびブートイメージをはじめとするクラウドリソースを含む。
IBM Cloudにログインした後のダッシュボード画面で、アカウントが間違っていないことを確認し、メニューバーの「カタログ」をクリックする。
カタログで「Workspace for Power Virtual Server」を検索して、クリックする。
Workspace for Power Virtual Serverで、「ワークスペースの作成」をクリックし、ワークスペースを作成する。
ワークスペースの作成で、「ロケーション」「詳細」「統合(オプション)」に適宜内容を入力する(図表4)。

入力内容を確認して「使用条件に同意する」にチェックを入れ、「作成」をクリックする。
数分でワークスペースが作成され、状況が「アクティブ」になったら、ワークスペースの作成は完了する。
Step3 インスタンスの作成
ワークスペースを確認して、「仮想サーバー・インスタンス」から「インスタンスの作成」をクリックする。
仮想サーバー・インスタンスの作成で、「一般」の項目に適宜入力して「続行」をクリックする。今回は下記のように入力している(図表5)。
インスタンス名:test
インスタンスの数:1

続いて、「ブートイメージ」の項目に適宜入力をして「続行」をクリックする。今回は下記のように入力している(図表6)。
オペレーティング・システム:IBM i
イメージ:IBMi-75-04-2984-1
層:層3(3 IOPs/GB)
ストレージ・プール:プールの自動選択

続いて「プロファイル」の項目に適宜入力して、「続行」をクリックする。今回は下記のように入力している(図表7)。
マシン・タイプ:e1080
コア・タイプ:上限なし共有
コア:0.25
仮想コア:1
メモリ:2

続いて「ストレージ・ボリューム」で、必要であれば「ボリュームの作成」をクリックしてボリュームを追加する。必要なボリュームの「VSIでの名前」「サイズ」「数量」「層」、その他の項目を適宜入力して、ボリュームを作成し接続する(図表8)。

さらに、「ネットワーク・インターフェース」を設定する。パブリック・ネットワークが必要であれば「オン」にする。プライベート・ネットワークが必要であれば、別途サブネットを作成して接続する。
すべての項目が設定できたら、入力内容を確認して「使用条件に同意する」にチェックを入れ、「作成」をクリックする(図表9)。

数分でインスタンスが作成され、状況が「アクティブ」になったらインスタンスの作成は完了する(図表10)。

著者
中田 久美子氏
日本アイ・ビー・エム株式会社
テクノロジー事業本部
IBM Power テクニカルセールス
[i Magazine 2025 Summer号掲載]







