MENU

16  IBM iのライセンス ~将来的にIBM iのライセンスはすべてサブスクリプションへ移行 |新・IBM i入門ガイド[基礎知識編]

IBM i ソフトウェア・ポートフォリオ

IBM iソフトウェアは、IBM i基本オペレーティング・システムとライセンス・プログラム・プロダクト(LPP)から構成される。

IBM iオペレーティング・システム

 IBM iのOSは、基本部分と有償・無償のオプションから構成される。OSには多くのオプションが存在しているが、IBM iライセンス・プログラムの簡素化により、2023年10月以降オーダーが必要になる有償オプションは、Db2 Data Mirroring(IBM Db2 Mirror、5770-DBMと同時に構成)のみとなった。

ライセンス・プログラム・プロダクト(LPP)

OSのほかに提供されているソフトウェアが、IBM iライセンス・プログラム・プロダクト(以下、LPP)である。IBM iライセンス・プログラムの簡素化により、一部のLPPも無償化され、オーダー不要となった。

現在、オーダーが必要なライセンス・プログラムとOSオプションは、図表1のとおりである。

図表1 オーダーが必要なライセンス・プログラムと OSオプション

図表2にある無償化もしくはオーダー不要となったLPP、OSオプションは、Entitled Systems Support(ESS)Webサイトからのダウンロードや、DVDメディアから導入して使用できる。

図表3 IBM iライセンス・モデル

IBM iライセンス・モデル

ソフトウェアを使用するには、そのソフトウェアの使用権(ライセンス権)を契約(購入)することが必要になる。ライセンス・モデルは複数存在しており、ソフトウェアによって異なるライセンス・モデルが採用されている。

IBM iには、以下のライセンス・モデルがある(図表3)。

図表3 IBM iライセンス・モデル

プロセッサ・ライセンス

ソフトウェアが使用するプロセッサ・コア数に対して、ライセンスを必要とするライセンス・モデルである。IBM i OSライセンスや、PowerHA(5770-HAS)などがプロセッサ・ライセンスである。

ユーザー・ライセンス

ソフトウェアを使用するユーザー数に対して、ライセンスを必要とするライセンス・モデルである。ユーザー・ライセンスには、同時に使用するユーザー数に応じてライセンスが必要なもの(同時アクセス・ユーザー・ライセンス)や、使用する個人に対してライセンス権が与えられるもの(許可ユーザー・ライセンス)などが存在する。

IBM iでユーザー・ライセンスを採用しているソフトウェアは、プロセッサ・グループP05/P10のOSライセンス(同時アクセス・ユーザー)や、Rational Development Studio for i(5770-WDS)、Rational Developer for i(RDi、5733-RDW)(許可ユーザー・ライセンス)などがある。

プロセッサ・グループP05/P10のOSライセンスは、プロセッサ・ライセンスと同時アクセス・ユーザー・ライセンスの併用となる。

プロセッサ・グループ・ライセンス

ソフトウェアを使用するマシン単位のライセンスで、マシンのプロセッサ・グループ別に料金が設定されているライセンス・モデルである。ライセンスは、使用するプロセッサ・コア数やユーザー数には関係なく、プロセッサ・グループで一律である。

無期限ライセンスのBackup,Recovery and Media Services for i (BRMS、5770-BR1)がプロセッサ・グループ・ライセンスである。

仮想サーバー・ライセンス

ソフトウェアを使用する仮想サーバー(LPAR区画)単位のライセンス・モデルである。LPAR区画に構成されるプロセッサ・コア数や使用するユーザー数には関係なく、区画に対して1ライセンスが必要になる。Cloud Storage Solutions for i(5733-ICC)が、仮想サーバー・ライセンスである。

IBM i OSユーザー・ライセンス

プロセッサ・グループP05/P10マシンのIBM i OSライセンスは、プロセッサ・ライセンスとユーザー・ライセンスが必要である。ユーザー・ライセンス数は、一時点で同時にアクセスするユーザーの最大数を用意する。

この「ユーザー」とは、IBM iに直接、あるいはIBM iがサポートするプログラムやミドルウェアを通して間接的に認証情報(ユーザー・プロファイルとパスワード)をやり取りし、1つ以上の接続を介してIBM iにアクセスする個人を指す。

ある1人が、複数のユーザー・プロファイルを使用して、複数の5250エミュレータやWebアプリケーションでIBM iを使用している場合のユーザー・ライセンス数は、1ライセンスである。

10人のユーザーが、同一のユーザー・プロファイルを使用して同時にアクセスしている場合のユーザー・ライセンス数は、10ライセンスである。

IBM i OSライセンスには、通常のユーザー・ライセンスのほかに、社外ユーザー・ライセンスが存在する。社外ユーザー・ライセンスは、IBM iライセンスを所有している企業以外のユーザーが、IBM iを使用するためのライセンスである。

通常のユーザー・ライセンスは企業以外のユーザーに対しても適用されるので、充分な数のユーザー・ライセンス、あるいは無制限ユーザー・ライセンスを所有している場合は、社外ユーザーのアクセスのために社外ユーザー・ライセンスを購入する必要はない。

許可ユーザー・ライセンス

Rational Development Studio for i(5770-WDS)、Rational Developer for i(5733-RDW)、およびARCAD製品は、許可ユーザー・ライセンスである。これは、決められた「個人」に対して許可された固有のライセンスであり、別の人が使用することはできない。

ライセンスの再割り当ては、部門の移動や退職などで永続的に変更する場合を除いて認められない。たとえば、「Aさん」に許可されたライセンスについて、「Aさん」が不在の間、一時的に「Bさん」が使用するといったことはできない。

許可ユーザーは、同時に複数のアクセスを行うことが可能である。同時に複数の5250エミュレータを起動して5770-WDSを使用したり、複数のPCに5733-RDWをインストールして同時に使用したりすることが可能である。

フローティング・ユーザー・シングル・インストール

Rational Developer for iは、eConfigで構成してオーダーする製品(5733-RDW)と、パスポート・アドバンテージ(以下、PA)でオーダーする製品が存在する。

PA版のユーザー・ライセンスは、許可ユーザー・ライセンスのほかに、フローティング・ユーザー・シングル・インストールが選択できる。

PA版のフローティング・ユーザー・シングル・インストールは、使用するユーザーは特定されないが、Rational Deve
loper for iをインストールして使用できるPCは1台となる。複数のPCにインストールして同時に使用する場合には、そのPCの台数分のライセンスが必要になる。

ライセンスの移転

IBM iOSライセンスは、最初にオーダーされたマシンのシリアル番号に対してのみライセンスされる。そのためマシンが転売される際には、IBM i OSもマシンとともに転売されることになる。

IBM i OSライセンスを別マシンへ移転することはできないが、プロセッサ・グループP20以上のマシンで条件を満たす場合、あるいはP05/P10マシンで無期限ライセンスからサブスクリプション・ライセンスへ移行する場合は、別マシンへ移転することが可能である。

OS以外のLPPで、IBM i V5R3以降の場合は、同一ユーザーの別マシンへ移転できる。LPPの移転は、eConfigによる5733-NKYのオーダーでの移転、Entitled Systems Support(ESS)Webサイトからの移転が可能である。

なおCBU登録したマシンについては、登録時に指定した本番機が使用できない場合に、本番機のOSとLPPライセンスをCBU機に一時移転して使用することが可能になる。

ソフトウェア・メンテナンス

ソフトウェア製品のサポートは、ソフトウェア・メンテナンス(以下、SWMA)契約により提供される。SWMAで提供されるサポートは、テクニカルサポートとサブスクリプションである。

テクニカルサポートには、製品のインストールや使用方法に関する質問への回答、プログラムコードに起因する障害に対するサポートがある。PTFの入手には、SWMA契約が必要である。

サブスクリプションでは、最新バージョン/リリースへのアップグレードに対応する。

ソフトウェア購入時の初期SWMAは、eConfigで作成した構成によりオーダーされる(ブランドSWMA)。初期SWMAの期間は1~5年で選択できるが、ハードウェアでExpert Careを購入する場合は、Expert Careの期間と一致させる必要がある。

更新SWMAはCongaシステムを介して、Technology Lifecycle Services(TLS)でオーダーおよび契約される(TLS SWMA)。ただし5733-RDWについては、eConfigで更新SWMA構成を作成したブランドSWMAをオーダーする。

サブスクリプション期間ライセンス

IBM iライセンスは、永続的にライセンス権を所有できる無期限のライセンスとして提供されてきたが、2022年6月にプロセッサ・グループP05のIBM i OSライセンスに対してサブスクリプション期間ライセンスの提供を開始した。

その後、すべてのプロセッサ・グループ (P05/P10/P20/P30)に対してIBM i OSサブスクリプション期間ライセンスを提供し、OS以外のLPPに対してもサブスクリプション期間ライセンスを順次提供した。

そして2024年5月より、プロセッサ・グループP05/P10で新規に購入するマシンのIBM i OSライセンスは、サブスクリプション期間ライセンスのみの提供となった。

今後は、LPPについてもサブスクリプション期間ライセンスのみの提供に移行し、将来的にIBM iはすべてサブスクリプション期間ライセンスに移行することになる。

サブスクリプション期間は1、2、3、4、5年の期間で選択が可能であるが、ハードウェアでExpert Careを購入する場合は、Expert Careの期間と一致させる必要がある。BRMS(5770-BR2)とCloud Storage Solutions for i(5733-ICC)には、移行を目的とした90日間のライセンスも提供されている。

従来の無期限ライセンスでは、サポートを受けるために別途SWMAを契約する必要があるが、サブスクリプション期間ライセンスにはSWMAが含まれているので、別途契約する必要はない。

IBM i OSとLPPライセンスについては、同ソフトウェアの無期限ライセンスとサブスクリプション期間ライセンスを同一サーバー上に共存させることはできない。

たとえば、無期限ライセンスを所有するマシンで一時的に追加のプロセッサリソースが必要となった場合に、サブスクリプション期間ライセンスを追加することで増強することはできない。

一方で、IBM i OSとLPPの間では、無期限ライセンスとサブスクリプション期間ライセンスを共存させることが可能である(図表4)。

図表4 IBM i 無期限ライセンスとサブスクリプション期間ライセンス

仮想シリアル番号

IBM iソフトウェアのライセンスは、物理的なIBM Powerマシンのシリアル番号に関連付けられている。そのため、たとえば Live Partition Mobility(LPM)でIBM i区画を別マシンへ移動する際には、移動先マシンにもIBM i区画を使用するためのIBM iライセンスが必要になる。

そこで物理的なIBM Powerマシンのシリアル番号のほかに、LPAR区画ごとに割り当てるシリアル番号である仮想シリアル番号(Virtual Serial Number。以下、VSN)を提供した。 

IBM iライセンス、ライセンスキーおよびサポートは、VSNが割り当てられた区画単位で所有されるので、LPMでVSNのIBM i区画を別マシンへ移動する場合は、IBM iライセンスも同時に移動することになる。そのため、IBM iライセンスを所有していないマシンへも、LPMでの移動が可能になる。

VSNをサポートするのは、IBM iをサポートするFW950以降のPOWER9マシンと、Power S1012 1コアを除くPower10マシンである。

著者
三神 雅弘氏

日本アイ・ビー・エム株式会社
テクノロジー事業本部
IBM Power テクニカルセールス

[i Magazine 2025 Summer号掲載]

新着