MONO-XからAI事業部が分離独立し
kozokaAIが誕生
MONO-XはIBM i市場のソリューションベンダーの中でも、生成AIの活用に積極的な企業として知られている。
そのMONO-Xが2025年10月、AIソリューション事業を専門に展開する新会社、株式会社kozokaAI(コゾカエーアイ)を設立した。代表取締役は今年6月までMONO-Xの代表取締役社長であった藤井星多氏(同年6月にMONO-Xの代表取締役社長には下野皓平氏が就任)である。
新会社のミッションは生成AI技術を活用し、FAXやPDF、メールなどの非構造化データを業務データとして構造化データに変換・連携することにより、製造業・物流業・卸売業を中心とした企業のデジタル変革を支援することである(図表1)。

もともとMONO-Xは、「PHPQUERY」「MONO-X One」「API-Bridge」「PVS One」など、一連のIBM i向けソリューション/サービスを開発・販売するIBM i事業部と、IBM iユーザーであるかによらず、幅広くAIソリューションを提供するAI事業部の2つで構成されていた。このAI事業部が分離・独立する形で誕生したのがkozokaAIであり、2026年4月をめどに、MONO-Xの社員の約半数がkozokaAIに移り、本格的に動き出す計画である。
あえてMONO-XからAI部隊を分離・独立させ、新会社を設立した狙いを藤井氏はこう語る。
「設立の狙いは主に2つあります。MONO-XはIBM iビジネスに強いベンダーというイメージがあり、それは事実なのですが、kozokaAIが提供していくAIソリューションは、IBM iに依存するわけではありません。多種多様なユーザーにAIソリューションを提供していきたいと考えています。そこで新しい会社として、IBM iカラーをあえて払拭したかったのが設立理由の1つです。もう1つの理由は、技術や営業、顧客サポートといった社内の仕組みをAIネイティブに作っていきたかったこと。ゼロからスタートさせるなら、MONO-Xではない新会社を立ち上げたほうがやりやすいと判断しました」
新会社のネーミングは、あらゆる企業が豊富に抱える「非構造化データをAIで扱えるようにする」ことに由来する。帳票、PDF、商談記録など、企業に多く存在する非構造化データと、基幹システム内の構造化データを生成AIで分析し、相互に関連付けてシームレスに活用できる形へと変換する。非構造化データを構造化データへ、あるいは構造化データを非構造化データへ変換・連携するわけだ。
生成AIが誕生して以来、藤井氏は生成AI市場で優位に立てる自分たちの強みは何かを考え続けてきた。そして、IBM iには依存しないとはいうものの、MONO-Xのソリューションを導入する多くのIBM iユーザーと会話し、課題解決の手法を模索してきた。その結果、企業内にさまざまな形で存在する非構造化データ、なかでも「画像」の存在に注目した。画像、つまり紙やPDFなどの形で基幹システムが出力する帳票類である。
これを起点にAIソリューションの開発に着手し、kozokaAIシリーズの各ソリューションを開発していった。現在は「kozokaAI FAX受注入力」「kozokaAI インサイト」「kozokaAI 商談ログ」の3製品を提供している。順番に詳しく見ていこう。
kozokaAI FAX受注入力
マスターとの連携で読み取り精度を向上
kozokaAI FAX受注入力は、FAXを受信したら自動的に基幹システムへのデータ入力を完了させるAIエージェントである(図表2)。

通常、FAXで注文書が届いた場合、担当者がそれを元に基幹システムへ入力する。IBM iであれば、注文書を見ながら5250画面を使ってキーボードを叩いている風景がよく見られる。
これを効率化・自動化させる場合は、まずFAXで届く注文書をOCRでスキャンしてデータ化し、RPAツールなどを利用して、そのデータを自動的に基幹システムへ入力する。昨今はAI-OCRの登場で、手書き文字や特殊なフォント、レイアウトの複雑な文書なども読み取れるなど、精度が向上している。
これに対しkozokaAI FAX受注入力は、基幹システムが備える商品、得意先、納品先といったマスターデータをあらかじめ学習し、FAXから読み取ったデータと自動的に照合することで、AI-OCRなどと比較して、各段に高い読み取り精度を実現する。
つまりFAXを受信した瞬間から、AIが自動的かつ正確に内容を読み取り、データ化し、即座に基幹システムへ入力するというプロセスを一元的に実行する。OCRやRPAなど、いくつものツールを組み合わせる必要はない。
基幹システムとの連携には、WebAPI経由でデータを送信し、外部システムに自動登録する「データ入力API連携」、指定フォルダにCSVファイルを出力する「CSV取り込み連携」、外部システムの入力チェック処理を実行し、不正データをブロックする「チェックロジック連携」という3つの方法が用意されている。
IBM iに依存せず、幅広い基幹システムや販売管理システムと接続可能であるが、MONO-XがIBM iユーザーに多数の販売実績をもつことから、MONO-X時代の藤井氏はIBM iユーザーとAIの活用方法についてディスカッションを重ねてきた。そしてFAX受注入力の現場から寄せられる課題への対応策を考えた結果、kozokaAI FAX受注入力が生まれることになったようだ。
今のところ、IBM iユーザーへの導入実績が多い。現在5社がPoCを推進中であるが、そのうち4社がIBM iユーザーである。いずれのユーザーからも、「AI-OCR製品と比較して、精度が高い」との意見が寄せられている。
kozokaAI インサイト
基幹データの集計から分析結果を示す
kozokaAI インサイトは同様に、BIソリューションであるPHPQUERYを利用するユーザーの声を端緒に開発が始まった。
これは基幹システムに蓄積された販売・顧客データなどをAIで分析し、需要予測や意思決定を支援するAIソリューションである(図表3)。

PHPQUERYでは、IBM iで稼働する基幹システムの販売データなどを抽出・集計し、ExcelやBIツールなどを使ってグラフ化する。そしてどういった傾向や変化、予測ができるかを分析する。この分析は今のところ、人が行う仕事である。
しかしkozokaAI インサイトでは、この分析を自動的に実行する。実際には基幹データを加工・集計し、この実行結果に対してユーザーが自然言語でやり取りし、データ分析の結果をインサイトとして示し、PowerPointのファイルなどに出力するまでの一連の作業を実行する。
これも現在、数社のユーザーでPoCが進行中。チャット形式でインサイトを出す「カスタム分析」と、AIが想定したクエリーで分析結果を示す「AI分析」の2つを用意し、どちらがより有効であるかを比較したり、分析結果に対してユーザーが「いいねボタン」を使うことで、AIにフィードバックして学習させる機能をサポートするなど、開発が続いている。
kozokaAI 商談ログ
これまでの商談内容から今後の提案方法を示す
kozokaAI 商談ログは、音声データなどの商談内容から自動的に要約・構造化し、営業活動の記録やナレッジ活用を効率化するAIソリューションである(図表4)。

たとえば営業担当者が顧客と商談した際の音声データをkozokaAI 商談ログに読み込ませる。するとそのデータから文字起こしを実行し、要約を作成する。この段階で、作成した要約を営業日報や議事録として活用することで、担当者の業務負担を軽減できるだろう。しかしkozokaAI 商談ログの狙いはそれだけにとどまらない。
kozokaAI 商談ログは、kozokaAI FAX受注入力と同様に、基幹システムのマスターデータと連携できる。たとえば取引先マスターを紐づけし、その取引先との過去の商談データ一覧や購買履歴などを分析し、これからどのような商品を提案し、どのようなプレゼンテーションであれば効果的か、などを示してくれるところまで実現したいと同社では考えている。
現状では文字起こし、要約、マスターデータ連携の各機能が搭載済み。kozokaAI 商談ログも、あるユーザーとPoCが進行中で、搭載機能の強化が行われている。ちなみにこのユーザー企業では、社長直々のトップダウンでAIソリューションのPoCが進んでおり、「営業担当者をレベルアップさせたい」という社長の熱い思いがきっかけで、開発が進んだという。
基幹システムを熟知する強みが
AIソリューションに反映される
こうして見ていくと、IBM iビジネスを軸に基幹システムを熟知している強みがAIソリューションの開発に活かされていると言えるだろう。
同社ではこれ以外にも、kozokaAIシリーズにラインナップする5~10個程度の製品案を温めているという。効果をイメージしやすいAIソリューションとして、kozokaAI FAX受注入力に最も手応えを感じているという同社では、来年春に向けて、MONO-Xからの人員異動を進め、開発リソースを集約していくことで、開発の優先順位をつけていきたい考えだ。
企業に溢れる非構造化データに意味を与え、構造化データと連携する。そして人手に依存していた入力や記録作成、データ分析などを自動化し、正確かつ迅速な業務処理と高度なインサイトの提供を実現する。「答えるAI」から「手を動かすAIへ」。それが同社のAI戦略を物語るようだ。
[i Magazine 2025 Winter掲載]







