生成AI(Generative AI)とは、テキスト、画像、音声、コードなど、さまざまな種類の新しいコンテンツを自律的に生成できる人工知能モデルの総称である。
従来のAIがデータ分析やパターン認識、予測といったタスクに主眼を置いていたのに対し、生成AIは学習したデータの特徴や構造を理解し、それに基づいて「創造的な」アウトプットを生み出す点に最大の特徴があると言える。
生成AI以前のAI
従来型のAIは我々の生活にすでに浸透しており、知らず知らずのうちに利用されている。従来型が提供する機能には、以下がある。
① 判別および分類:顔認証、迷惑メールのフィルタ、レントゲン写真などの画像診断、製品の検品
② 予測:売上予測、市場予測、与信審査
③ 推薦・提案:動画サイトのおすすめ、ECサイトのおすすめ
上記を実現するために、従来のAIは大量の情報を事前に学習(機械学習やディープラーニング)しておく。そしてそれぞれの条件にあった最適解を、学習した多くの数ある候補のなかから提案する。
「知らず知らず」と前述したが、ほとんどの場合、従来型AIは裏方として動いている場合がほとんどで、その存在を意識しながら利用していることは皆無と言ってよい。
生成AI
生成AIは従来型のように判別・分類、予測、推薦・提案だけでなく、新しいものを創り出す機能を提供する。従来型のディープラーニングをさらに大規模化し、より高機能なものを提供できるようにしたと考えてよい。
生成AIの基本的な仕組み
生成AIの多くは、大量のデータを学習し、そのデータが持つパターンや構造を抽出する。この学習プロセスにおいて、データの表現を内部的に構築し、その表現を用いて新しいデータを生成する。
トランスフォーマー(Transformer)という言葉を聞いたことがあるだろう。「03 大規模言語モデルとマルチモーダルモデル」の項で解説する大規模言語モデル(LLM)は、インターネット上の膨大なテキストデータを学習することで、人間が話すような自然な文章を生成したり、質問に答えたり、要約を作成できる。
トランスフォーマーは、このLLMの基盤となる技術で、文章内の単語間の関係性や、文脈の繋がりの重要度を並列処理で学習し、その知識を使って次に来るべき最も確率の高い一語を選び出す(図表1)。

学習している言語はインターネット上のテキストなので、必然的に多言語を「しゃべる」ことが可能になる。翻訳機能として生成AIを利用しているのも、このトランスフォーマーのおかげだ。「文脈の繋がりの重要度を学習」しているおかげで、言語による語順の違いという壁を越えて内容を理解し、文章を生成してくれる。インターネット上のテキストは約半数が英語と言われている。日本語のコンテンツはまだまだ少ないが、それでも最近は、英語でも日本語でも文法的に間違った文章を生成することは皆無になってきた。
生成AIがもたらす変革と利用事例
生成AIの登場は、多岐にわたる分野で大きな変革をもたらしている。以下に主な利用事例を挙げる。
① コンテンツ生成:記事作成、広告コピー、ブログ記事、詩、小説、脚本などのテキストコンテンツの生成など
② 画像・デザイン:プロンプト(指示文)から画像を生成、あるいは既存の画像を編集・加工、Webサイトのデザイン案やイラスト、製品モックアップの生成など
③ ソフトウェア開発:プログラミングコードの生成、デバッグ支援、テストコードの作成、ドキュメント生成など
④ パーソナライゼーション:ユーザーの行動履歴や好みに基づいて、パーソナライズされたコンテンツやおすすめを提供
⑤ 教育・研究:個別の学習教材の生成、論文の要約、アイデア出しのサポートなど
IBM i開発における生成AIの可能性
IBM i環境でも、生成AIの活用は非常に大きな可能性を秘めている。まずは最新情報を入手するスピードが格段に速くなることが挙げられるだろう。IBM iの世界では昔から、「知りたい情報が少なく入手が困難」と言われてきた。これは、日本語での情報発信が少ないこと、日々の疑問を質問する場所が少なかったことが原因だ。
だが、実は最新情報は英語では公式・非公式を問わず、昔からさまざまな情報が発信されている。生成 AIを活用すれば、ほしい情報が英語だとしても、それを日本語に翻訳したり要約することが簡単にできるようになる。
日々の疑問についても完璧ではないが、ChatGPTやGemini、ClaudeへIBM iに関する質問をすれば、回答が帰って来る。「でも間違った回答が多くて」との不満も聞くが、人に聞いたとしても常に正解が返ってくるとは限らない。聞き方を工夫することで、十分活用できるレベルにあると思う。
プログラミングでは、レガシーコードの解析とモダナイゼーションの支援、RPGやCOBOLといった特定の言語でのコード生成、テストシナリオの自動作成、技術ドキュメントの効率的な生成などが考えられる。
これにより、IBM i開発の生産性向上、新規開発者の学習コスト削減、そしてより高度なシステム構築への道筋が開かれるだろう。
著者|
小川 誠 氏
ティアンドトラスト株式会社
代表取締役社長 CIO CTO
1989年、エス・イー・ラボ入社。その後、1993年にティアンドトラストに入社。システム/38 から IBM i まで、さまざまな開発プロジェクトに参加。またAS/400 、IBM i の機能拡張に伴い、他プラットフォームとの連携機能開発も手掛ける。IBM i 関連の多彩な教育コンテンツの作成や研修、セミナーなども担当。2021年6月から現職。
新・IBM i入門ガイド [コード生成編]
<基本用語>
01 生成AI&IBM i市場動向
02 生成AI
03 大規模言語モデルとマルチモーダルモデル
04 プロンプトとコンテキスト
05 AIエージェント
06ハルシネ―ションとセキュリティ
07ファインチューニングとRAG
08 APIとMCP
<基本ツール>
01 コード生成AIの思考プロセスと主要ツール
02 IBM i開発環境構築ロードマップ
03 Visual Studio Code
04 Code for IBM i
05 Git
06 Markdown
<開発ツール>
01 AIファースト開発環境
02 IBM Bob
03 対話型・CLI型AIツールの戦略的活用術
04 学びを止めないための次の一歩 リンク集
[i Magazine 2026 Spring掲載]






