IBMは5月26日、年次イベントThinkにて、AIエージェントのネットワークを構築・管理するための新しいツールおよびフレームワークのほか、すぐに使用できる機能を備えた新しい領域特化型の事前構築済みエージェントを発表した。
これらはAWS Marketplaceで利用可能な主要技術と統合されている。さらに、IBM Graniteモデルへのアクセス拡大やAWSを通じた自動化ソフトウェアの提供も進めている。
AIは単なる生産性向上のツールを超え、自律的に推論し、行動し、学習するエージェントの新たな時代を迎えている。IBMとAWSは、AIに関する経験の有無を問わず、すべてのユーザーがこれらのエージェントを容易に導入可能になることを目指している。
両社は、Amazon Q インデックスとIBM watsonx Orchestrateの新たな統合計画を発表した。
watsonx Orchestrateは、AIエージェントやアシスタントの作成、展開、管理を支援するIBMのエージェント型AIおよび自動化ソリューションである。一方のAmazon Q インデックスは、複数のサードパーティー・アプリケーションに基づいたデータの中央リポジトリーの作成を可能にし、AIの意思決定を支援し、さまざまな企業データ・ソースから関連コンテンツを取得するための強力な基盤となる。
watsonx Orchestrateは、人事、調達、営業などの重要なビジネス領域に特化した事前構築済みエージェントも提供している。これらのエージェントにAmazon Q インデックスを組み合わせることで、ユーザーは各データ・ソースに手動でアクセスすることなく、重要なアプリケーションからのデータを活用して生成AIを強化できる。
Amazon Q インデックスとの統合により、IBM watsonxの各エージェントが、Adobe、Salesforce、Slack、Zendeskなどのアプリケーションからの領域固有のデータを活用することで、ユーザーはよりパーソナライズされた体験を実現できる。この新しい統合のプレビューがThinkで公開され、今年後半に利用可能になる予定だ。
IBM watsonx Agentおよびwatsonx Orchestrateは現在、米国、ヨーロッパ、シンガポールでSaaSおよびAWS Marketplace経由で提供されており、今年6月にはインドでの提供も予定されている。
AWS上のエージェント型AIの信頼性を支える基盤を構築するために、IBM watsonx.governanceに新機能を追加し、エージェントのライフサイクルにわたるガバナンス、カタログ化、評価を可能にする。ライフサイクル全体を通じて、責任ある透明で説明可能なAIモデルを実現するために、包括的なモデル評価やバイアス検出、ドリフト管理のためのモニタリングなどの新機能がAWS Marketplaceで提供される予定である。
IBMはまた、ユーザーがエージェント型AIを活用したエンドツーエンドの業務プロセス変革を実現できるよう、AIインテグレーション・サービスを設立した。
IBMのコンサルタントは、さまざまな業界のビジネス領域やAWS技術に関する専門知識と、IBM Consulting AdvantageのAIを活用した新機能を活用して、AWS上のエージェント型AIによるユーザーのプロセス再構築を支援する。IBM Consulting Advantage for Agentic Applicationsには、カスタマー・サービスや財務などの複雑なエンタープライズ・ワークフローをAWS上で変革するために最適化された事前構築済みのテンプレートのライブラリーが含まれている。また、Amazon QやAmazon BedrockなどのAWSネイティブ技術を活用して、エージェント型AIの構築と展開を加速するためのツールも提供している。
Granite 3.2モデルの提供
IBMのGranite 3.2大規模言語モデルは、現在、Amazon Bedrock MarketplaceおよびAmazon SageMaker JumpStartで利用可能であり、数回のクリックで専用モデルをデプロイできる。
さらにこれらのモデルは、2025年第3四半期にAmazon Bedrock Custom Model Import(CMI)を通じて利用可能になる予定である。CMIは、基盤となるインフラストラクチャを管理することなく、ユーザーが独自のモデルをAmazon Bedrockにサーバーレスでデプロイできるオプションを提供する。
AWS MarketplaceでのIBMソフトウェアの展開拡大
AWS Marketplaceで提供されているIBMの自動化ソフトウェアは、お客様とIBMビジネス・パートナーによって広く活用されている。ApptioやKubecost社のソフトウェアが新たに加わったことで、これまで以上の選択肢を提供している。IBMの子会社であるHashiCorpソフトウェアも、今年後半にAWS Marketplaceを通じてIBMから提供される予定である。
また、6月には、従来のワークフローをインテリジェントなAPIおよびエージェント駆動の自動化に置き換える次世代統合ソリューションであるIBM webMethods Hybrid Integrationが、AWS Marketplaceで提供開始される予定である。
一方、IBM Concertは生成AIを活用して脆弱性を特定し、修正策を提案することで、アプリケーション・エコシステム全体のレジリエンスを高め、リスクを軽減する。これらはすでにAWSを通じて利用可能である。
[i Magazine・IS magazine]