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food coach|Watsonを利用したアスリートのための食事トレーニングアプリ ~個々の身体状況や競技、ポジションに応じてアドバイス |Watson Solution Book●オンキヨースポーツ

by kusui

 

アスリート個々人に
最適な食事をアドバイス

「food coach」は、Watsonを利用したアスリートのための食事トレーニングアプリである。同アプリは、至学館大学のスポーツ栄養サポートチーム(以下、SNST)のノウハウをベースに誕生した。同チームは国内トップの実績を誇るスポーツ栄養のスペシャリスト集団である。健康科学部の杉島有希准教授を中心に研究員、公認スポーツ栄養士や管理栄養士など約80名体制で、年間500名のアスリートに栄養指導を行っている。 

 food coachがユニークなのは、アスリート個々の基準エネルギーや目的に応じてアドバイスする点である。

 同アプリには一般的な家庭料理、コンビニやファミレスなどの外食メニュー、さらに市販食品に至るまで約10万件の栄養・カロリーデータが登録されている。ユーザーは日々の食事内容をここから選び、撮影した写真とともに入力する(図表1)

 

図表1

 

 

 さらにアスリート個人の身体状況(身長、体重、体脂肪、筋肉量、年齢など)、競技種目、ポジション、試合のスケジュール、そしてその日の運動量などを入力する。するとfood coachが、今日の摂取エネルギーや基準エネルギーに応じた栄養素の過不足をグラフや点数でわかりやすく表示する(図表2、図表3)。たとえ同じ競技であっても、アスリートごとに異なる必要栄養素を個々の状況に応じてアドバイスするわけだ。

 

図表2

 

図表3

 

 さらに通常のヘルスケア・アプリと違うのは、アスリートの食生活に特徴的な「補食」「シーズンのオン・オフ」「試合食」に対応していること。たとえば不足する栄養素を補食として補うには、何を食べるべきかをアドバイスする。シーズンオン・オフの概念を取り入れる。そして最高のコンディションで試合に臨むため、数日前からアスリートごとに最適な試合食を指導するのである。

 

food coachを軸に
新しいビジネスモデルを展開

 food coachでは、「Watson Discovery Service」(以下、Discovery)を活用し、アスリートの食事データから必要栄養素を算定し、アドバイス内容を判断する。アプリケーションのバックグラウンドでは、ユーザーが入力したデータをもとに、想定した膨大な食事および運動・身体パターンをDiscoveryとやり取りし、そこから導き出された答えをfood coachに表示している。

「個々のアスリートのデータを確認して1人1人を指導していくので、SNSTで対応できるアスリートの数は自ずと限られます。現在は全国から栄養指導の依頼が多数寄せられていますが、残念ながらお断りするケースも少なくありません。しかしAI搭載のアプリであれば、スポーツ栄養士や管理栄養士に代わって、栄養面をアドバイスできる。そんな発想からfood coachは生まれました」と、オンキヨースポーツの坂野道郎取締役(兼 至学館大学 健康科学研究所 客員研究員、スポーツ栄養サポートチーム シニアアドバイザー)は語る。

 

坂野 道郎氏 オンキヨースポーツ株式会社 取締役

 

 すでに2016年にはfood coachのコンセプトが固まり、AIソリューションとしての具体的な開発方法を模索していた。そこで2017年秋に、至学館大学とティアックオンキヨーソリューションズ(株)が共同で、「IBM Watson Build Challenge 2017」に参加し、見事に日本部門の優勝およびグローバル部門の準優勝を勝ち取った。

 そして2017年9月にDiscoveryが日本語化されるとともに、本格的な開発に着手した。food coachを核にした新しいビジネスモデルの展開を目的に、2018年4月にオンキヨースポーツを設立。同年7月から、food coachのサービス提供を開始している。

 スポーツ栄養学の分野は現在、急速に注目度を高めており、food coachは国内外のトップ選手から一般、ジュニアアスリート、フィットネスクラブの会員まで、スポーツに取り組む幅広い層を対象にする。現在はチーム・団体がメインだが、今後は個人に向けても提供していく予定。料金は個人向けが450円/月、団体向けが500円/月(最低人数10名)。 

 団体向けには選手全員の食事を一括管理するチーム管理画面が搭載されている。チーム専属の管理栄養士がこのデータを参考にしながら、選手個々の心理状態や特性を見極めつつ独自のアドバイスを与えることもできる。

 またfood coachと並行して、3カ月もしくは6カ月単位で実施される総合食事トレーニングプログラムである「FOOD CAMP」も提供されている。

 これはアスリート個々人へのヒアリングに始まり、スポーツ栄養学のセミナー、食事トレーニングや筋力トレーニングのプログラム作成、選別別アセスメントやメンタリング、ビュッフェスタイルの食事実践トレーニングなどで構成されている。

 さらに身体組成や血液、骨密度、腸内フローラなどの検査結果を、アスリートの身体情報としてfood coachで利用するオプションも用意されている。

「毎日の食事や運動量をfood coachに入力するのは面倒な作業で、テスト運用の段階では途中で挫折するケースも見られました。しかしFOOD CAMPで、『なぜこれが必要なのか』といったメンタリングを行うと、例外なくfood coachの継続率が高くなり、食事で結果を出すところまで到達できます。そこで現在、food coachの利用を決定されたチームや団体には、FOOD CAMPのプログラムを推奨しています」(坂野氏)

 同社ではこのほか、food coachのアドバイスに基づき、試合食を届ける「food coachデリバリー」を2018年秋から提供する予定である。アスリートのためのAIソリューションは、今までにないビジネスモデルを創出しつつあるようだ。

[IS magazine No.21(2018年9月)掲載]

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