ガートナージャパンは4月10日、2027年までに企業が小規模でタスクに特化したAIモデルを導入するようになり、その使用量は汎用の大規模言語モデル(LLM)の少なくとも3倍に達するとの見解を発表した。
汎用LLMは強力な言語処理能力を提供するが、特定のビジネス領域における文脈を必要とするタスクでは、応答の正確性が低下する傾向にある。
バイス プレジデント アナリストのスミット・アガルワル氏は、次のように述べる。
「ビジネス・ワークフローにおけるタスクの多様性と、より高い正確性へのニーズが、特定の機能やドメイン・データに特化して微調整(ファインチューニング)されたモデルへの移行を促しています。こうした小規模でタスク特化型のモデルは、応答が迅速で、計算リソースも少なくて済むため、運用や保守のコストを抑えることができます」
企業は、ファインチューニングの手法を用いることで、特定のタスク向けにLLMをカスタマイズした特化型モデルを構築できる。また、検索拡張生成 (RAG) を用いることでLLMに自社データを組み合わせ、自社のビジネスに必要なテキストを生成できる。
このプロセスでは、自社のデータが差別化要素となるため、データの準備、品質管理、バージョン管理、そしてファインチューニング要件に沿った構造化が必要となる。
自社独自のモデルを商用化することで、企業は新たな収益源を創出すると同時に、より相互接続されたエコシステムの形成を促進できる。
小規模・タスク特化型AIモデルの導入に向けた推奨事項
小規模でタスクに特化したAIモデルを導入しようとする企業は、以下のポイントを検討する必要がある。
文脈に即したモデルの試行
ビジネスの文脈が重要な領域や、LLMが応答品質や速度が期待を下回っている領域で、小規模かつ文脈特化型のモデルを導入する。
複合的アプローチの採用
単一のモデルによるオーケストレーションでは不十分なユースケースを特定し、複数のモデルやワークフローを組み合わせた複合アプローチを採用する。
データとスキルの強化
ファインチューニングに必要なデータを収集・整備・構造化するためのデータ準備作業に注力する。同時に、AI/データ・アーキテクト、データ・サイエンティスト、AI/データ・エンジニア、リスク/コンプライアンス・チーム、調達チーム、ビジネス領域の専門家 (SME) など、テクノロジおよびビジネス機能に関わる人材のスキルアップに投資する。
ディスティングイッシュト バイス プレジデントの亦賀 忠明氏は、次のように補足している。
「日本では、多くの企業が既にRAGにチャレンジしていますが、精度に関する課題を抱えています。しかしこうした状況を乗り越え、さらに自社のAI能力を強化するために、今後、小規模かつタスク特化型のAIモデルやそれをベースにしたAIエージェントやエージェント型AIへの取り組みを強めていくでしょう。そのために、AIに関わる人材のスキル、マインドセット、スタイルを含むケイパビリティを高める動きが拡大していくと見ています。時代はもはや人々がAIを使うのが当たり前の『AI共生時代』に入りました。よって、すべての企業は、このような時代への対応力を獲得、強化する必要があります」
[i Magazine・IS magazine]