ガートナージャパンは12月10日、2026年に向けて獲得すべきマインドセットを発表した。
2026年に向けて獲得すべき新たなマインドセットは、「適切な時代認識」「New Worldの創造」「江戸の店じまい」「ファンダメンタル」の4つのカテゴリに分けられる。

時代認識と時代精神を理解し、共有する
自動車業界やメディア業界を中心に、デジタルによる産業革命的な破壊的時代変化が起こっている。これらのリアリティを直視し、適切に対応し、実行しない企業は、この先の厳しい競争で生き残るのは難しくなり、10年以内に消滅する可能性がある。企業や組織はこのような事態を正しく認識し、正しく対応するためにテクノロジーと人と知による武装を行い、結果を出すために備える必要がある。
People-Centricを徹底する
産業革命、AI共生時代においては、テクノロジーに関わる「人」がより重要になり、企業や組織が、従業員に心理的安全性を確保し(大事に)、彼らが元気に、活躍できる職場環境を提供することは、不可欠になる。
新しいビジネス・アーキテクチャへと舵を切る:機械にできることは機械にやらせる
Gartnerは、機械的な対応をしている伝統的なコールセンター担当者の多くが、2030年までにAIによって置き換えられると見ている。また、事務的な業務の80%はハイパーオートメーションによって置き換えられるという仮説も立てている。企業や組織は、テクノロジーに出来るものはテクノロジーに任せ、人は人間ならではのサービスに注力することがこれからの大きな方向になる。それには、従来の業務中心の考え方から、既存の業務がなくなることを前提にした、新しいビジネス・アーキテクチャへの転換が求められる。
デジタル、AIを前提とした企業へと再定義する
テクノロジーの進化による歴史的な変化の大きい時代においては、業務を中心にIT部門が対応を取る従来のやり方では、柔軟な変化対応を推進できない。企業や組織は、歴史的な大競争に備えるために、デジタルを「活用」する企業から「デジタルが前提の企業」への転換が必要であり、それにはテクノロジーを駆使して、テクノロジーや従業員に対するかつてない投資を行う必要がある。AIをはじめとしたスーパーパワー (想像を絶するテクノロジー) を駆使できる高度な人材が、企業としての能力を強化、進化させられる。産業革命を実現できるエンジニアとしてのスキル、マインドセット、スタイルの能力を獲得すべく人材を強化することは、これからの企業の生き残りを左右する。
AI共生時代へ備える
AIエージェントやヒューマノイドの登場など、AIが強化され、すべてがAIとなり得る時代に突入している中、私たちは今まで以上に人間として何をすべきか、人間力や人間性の強化が問われている。
江戸ダッシュ問題を認識する
ITインフラの近代化はインフラストラクチャ&オペレーション (I&O) リーダーにとっての喫緊の課題であり、レガシー・マイグレーションの議論が活発になっている。一方、多くの場合では、現在の業務システムを引っ越すべきか、それとも維持すべきか、という「江戸ダッシュ」の議論に終始している。業務を変えないでテクノロジーだけを変えてもシステムはあくまでも従来のまま(江戸ダッシュ)であり、時代変化への対応という観点では相当にリスキーな状況である。また、レガシー・システムに対応できる人材は高齢化により、今後さらに人材不足は深刻化する。時代に即したビジネス・プロセスやアーキテクチャに再定義しなければ時代の変化に取り残される可能性がある。
高コストへ対応する交渉人となる
オンプレミス・インフラの老朽化対応やレガシー・インフラの維持に関するベンダーの製品コストやサポート・コストが上昇している。2028年までに、メインフレームのマイグレーションを行おうとする企業の70%が、移行費、運用費、それぞれ300%以上の値上げを要求されるとGartnerはみている。I&Oリーダーには、ベンダーが提供するコストの値上げに対応する高い交渉能力が求められる。
引っ越しを成功させる
クラウドという名称が登場して約20年の間、クラウドは大きな変遷を遂げてきた。中でもクラウド・ネイティブとAI、特に生成AIやAIエージェントのトレンドは、クラウドの進化を加速させている。すべての企業は、クラウドのスーパーパワー化に備えるべく、クラウドそのものの見方を捉え直して戦略を抜本的に見直す必要がある。「本物のクラウド」を使ったオンプレミスからのメインフレーム移行 (引っ越し) に向けて、I&Oリーダーはもとより経営者は、引っ越しは企業の重大なビジネス・リスクにもなり得るテーマと捉え、業務の見直しができるところは見直し、断捨離し、無理なく無事に引っ越しを成功裏に終わらせる必要がある。昨今ではAIもうまく使いながら、効率よく引っ越しをさせるノウハウの獲得も急務となっている。
ベンダーとの関係を見直す
企業が産業革命クラスの大変化に対応するには、従来のベンダーとの関係性を見直すことも重要になる。それには、まず自分たちが変わる必要がある。IT部門は、ビジネス部門の下請け的な立ち位置で業務中心に考える、ベンダーに丸投げするという前時代的なやり方から、新しいスキル、マインドセット、スタイルを獲得して、企業内のプロとして「テクノロジーを自分で運転する」能力を高めていくことが重要である。また、テクノロジーを駆使してデジタルが前提の新しいビジネス・アーキテクチャを構築できるベンダーを中長期的な戦略的パートナーと捉え付き合いを深めることが推奨される。
時代の変化を踏まえ適切な言葉を使う
時代変化への対応という点では、何かを決断、実行する際に使う言葉を見直すことも重要である。これは、大きな戦略を作るということではなく、すぐに経営から現場まで対応できる実行しやすい (アクショナブルな) 施策であると言える。新しいことを始めたり投資したりする際に、「もうかるのか」「できるのか」「事例はあるのか」など「~なのか」が口癖になっている経営者やリーダーが今でも日本企業に多く見られる。『なのか』は他人事としての表現となるが、まずは自分で『勉強』『運転』してみるなど自分事として捉えて、自ら戦略を描いて実行する意識を持つことが重要である。
Gartnerは、2028年までに、日本企業の70%は、時代に合わない言葉を無意識かつ継続的に使うことで衰退すると見ている。
[i Magazine・IS magazine]







