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IBM分社化へ、売上規模の1/3、従業員の1/4を切り離す。「IBMの未来の再定義」

 

日本IBMは10月22日、今月9日(米国時間10月8日)に発表した分社化と新会社設立について記者説明会を開催した。オンライン形式で行われIBMからジム・ホワイトハースト社長、日本IBMから山口明夫社長が出席した。

10月9日の発表内容は、IBMのグローバル・テクノロジー・サービス(GTS)事業のマネージド・インフラストラクチャ・サービス(MIS)部門を2021年末までに分社化し、新しい公開会社とする。一方、MIS部門を切り離すIBMは、オープンなハイブリッドクラウド・プラットフォームとAIソリューションにフォーカスし、「(現在の)サービスが収益の半分以上を占める企業から、高価値のクラウド・ソフトウェアおよびクラウド・ソリューションによる収益が半分以上を占める企業へとシフトしていく」というもの。新会社はIBMの連結対象から外れ、IBMとは「強力かつ戦略的なパートナーシップ」を結ぶ、完全な独立会社になる。

新会社の事業規模は190億ドル(約1兆9700億円)で、IBM全体(590億ドル=6兆1300億円)の約1/3。従業員も約1/4が新会社へ移るという大規模な分社化である(IBM全体の従業員数は約35万人、新会社は9万人)。

分社化後のIBMと新会社(資料:IBM、以下同じ)

分社化の理由についてホワイトハースト氏は、「市場における2つのトレンドに応えるもの」としたうえで、「1つはIBMのノウハウに対するニーズ、もう1つはインフラを選ばないアプリケーションやオンプレミスのインフラのモダナイゼーションに対するニーズで、これへの対応として、マネージド・インフラストラクチャ・サービスを提供する会社を設立することにした」と語った。

米IBMの10月9日(米国時間10月8日)の記者発表会(オンライン)では、アービンド・クリシュナCEOは、「ハイブリッドクラウドとDXの採用が加速する中、顧客のニーズが変化しつつある。インフラとアプリケーションサービスの購入と利用が、それぞれ別のサイクルで、別の選択基準で、異なる意思決定者によって推進されつつある。これへの対応として、マネージド・インフラストラクチャ・サービス事業を分離し、独立会社とすることにした」と、分社化の理由を述べていた。

「新会社は、設立初日よりマネージド・インフラストラクチャ・サービス市場のリーダー企業になる。第2位の企業の2倍の事業規模で、フォーチュン100企業の75%以上を含む4600社以上を顧客としてもち、115カ国以上で事業を展開する。従業員数は9万人。年商は190億ドルで、600億ドル(6兆2400億円)の受注残高がある」(ホワイトハースト氏)

分社化後の新会社の事業​

一方、マネージド・インフラストラクチャ・サービスを分離して“新体制”となるIBMは、1兆ドル規模と見込むオープンなハイブリッドクラウド市場にフォーカスし、「AIを用いたソフトウェア、クラウド移行サービス、グローバルビジネスサービス(GBS)、システムハードウェア、セキュリティ、パブリッククラウドなどフルスタックな製品群を提供」するとともに、「イノベーションに注力し、より成長率の高い、より収益性の高い企業へと変わる」と、ホワイトハースト氏は述べた。

分社化後のIBMの事業

新会社へ移管される事業について日本IBMの山口明夫社長は、次のように説明した。

「IBMの製品・サービス事業は、メインフレームやPower Systemsを扱うシステムズ事業、クラウドサービスやソフトウェアを扱うソフトウェア(C&CS)事業、コンサルティングからシステム開発・保守を担当するGBS事業、製品保守とインフラのマネージドサービスを提供するGTS事業の4つで構成される。新会社へ移管されるのは、GTS事業のうちの一部で、基幹システムのマネージドサービスを提供しているインフラストラクチャ・サービス部門。そのほかはIBMに残る」

「グローバルの動きに合わせて、日本でも新会社を設立する。新会社はベンダーニュートラルな立場で、プラットフォームフリーな事業を展開する。IBMの外から見ると、独立したマネージドサービス会社が1つ新しくできる形で、パートナーからすると協業しやすくなるのではないか。新会社は、日本IBMの連結対象にはならない」

また、分社化の背景について、「5Gをはじめとするテクノロジーの進化が予想以上に速く、かつ新型コロナの終息が見えない中で、デジタル変革がより加速する形になっている」と述べたうえで、分社化の理由について「日本の事情も踏まえて」触れた。

「デジタル変革が進む中では、プラットフォームは企業の中だけに留まらず、社会全体に横串しに広がる。すなわち、マルチクラウド、ハイブリッドクラウド、他社の製品・サービス、ハードウェア、ネットワーク、5Gの先につながるさまざまなIoTデバイスがプラットフォームとなり、急速に広がりつつある。そしてお客様からは、プラットフォーム全体を管理しマネージすることが強く求められるようになっている。IBMは従来、基盤と業務を一緒に提供する、垂直方向のSIを提供してきたが、今はそれ以上に水平方向に広がるプラットフォームを管理し、より安定した企業基盤や社会基盤を提供することが重要である、との結論に至り、今回の分社化となった」

「IBMは今後、OpenShiftをベースとした業務プラットフォームにフォーカスし、新会社は他社を含めたインフラ、プラットフォームを提供する会社になる。IBMと新会社は、特別なパートナーシップを結び、協業していく」

IBMのクリシュナCEOは、「今回の分社化は、IBMの未来の再定義」と語る。

 

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特集|IBM分社化

・IBM分社化、年商の1/3、従業員の1/4を切り離す。「IBMの未来の再定義」
・米IBMの発表内容を、改めて読み直す(予定)
・海外メディア/ブロガーの反応(予定)

*コラム「ASobi/bar400」第3回「IBM iの分社化。IBM iは?」で、分社化について触れています。コラムはこちら