IBMとデータ・ストリーミングのパイオニアであるConfluent社は12月10日、IBMがConfluent社の発行済普通株式を1株当たり31ドルで全株取得する正式契約を締結したと発表した。
同取引の企業価値は約110億ドルである。Confluent社は、オープンソースを基盤としたエンタープライズ向けのデータ・ストリーミング・プラットフォームを提供している。このプラットフォームは、再利用可能で信頼性の高いデータやイベントをリアルタイムで接続・処理するとともに、ガバナンスを図れる。このような仕組みは、企業がAIを導入するための重要な基盤となる。同取引は2026年半ばまでに完了する予定である。
IDCによると、2028年までに10億以上の新しい論理アプリケーションが登場し、業界全体の技術アーキテクチャを再構築すると予測されている。こうしたアプリケーションやAIエージェントが意味のある成果を生み出し、生産性を高めるには、リアルタイムで接続された信頼できるデータへのアクセスが不可欠となる。IBMとConfluent社は、アプリケーション、分析、データ・システム、AIエージェントのエンドツーエンド統合を可能にし、ハイブリッドクラウド環境におけるインテリジェンスとレジリエンスを強化する。
IBM会長兼CEOのアービンド・クリシュナ(Arvind Krishna)は、次のように述べている。「IBMとConfluent社が一体となることで、企業は生成AIやエージェント型AIをより迅速かつ効果的に導入できるようになります。これは、環境、アプリケーション、API間で信頼できる通信とデータフローを提供することによって実現されます。データはパブリッククラウド、プライベートクラウド、データセンター、そして無数のテクノロジー・プロバイダーに分散しています。Confluent社の買収により、IBMはAIに特化した企業IT向けのスマート・データ・プラットフォームを提供します」
Confluent共同創業者兼CEOのジェイ・クレプス(Jay Kreps)氏は、次のように述べている。「創業以来、Confluentは複雑化するIT環境において、データの可能性を最大限に引き出し、イノベーションを推進してきました。リアルタイム・データ・ストリーミング・プラットフォームを通じて、生成AIやエージェント型AIの次の時代を支える基盤を提供してきたことを誇りに思います。IBMと共に戦略を加速し、IBMの市場展開力、グローバルな規模、幅広いポートフォリオを活用できることに大きな期待を寄せています」
Confluent社のプラットフォームが持つリアルタイム性は、企業があらゆるIT環境に存在するデータを活用する上で極めて重要である。Confluent社は、今日のテクノロジーとデータの複雑な状況に対応するためのソリューションを提供している。特に、AIに適したデータを準備する能力に優れており、システムやアプリケーション間でデータをクリーンに保ち、接続し続けることで、エージェント型AIに内在するサイロ化を解消する。
過去4年間で、Confluent社の総アドレス可能市場(TAM)は500億ドルから1000億ドルへと倍増した(2025年時点)。Confluent社のリアルタイム・データおよびイベント・ストリーミング機能と、IBMのAIインフラストラクチャ・ソフトウェアや自動化製品を組み合わせることで、両社はこの市場機会をより確実に捉えられる。
IBMとConfluent社のシナジー効果
戦略的適合性
Confluent社はIBMにとって自然な適合先であり、IBMのハイブリッドクラウドとAI戦略に合致している。データとアプリケーションは急速に増加しており、2028年までに世界のデータ量は現在の2倍以上になり、さらに10億以上の新しいアプリケーションが登場すると予測されている。
この指数関数的な成長は、AIの継続的な普及によってさらに加速し、IT部門への負担を一層増大させる。世界中の企業は、複雑なシステムを簡素化し、自動化し、統合するためにIBMを頼りにしている。Confluent社が加わることで、IBMのデータおよび自動化ポートフォリオにおける既存の機能が強化される。
さらに、今回の買収は、Red HatやHashiCorpといったオープンソースのリーダー企業の買収に続き、IBMが25年以上にわたり続けてきたオープンソースのイノベーションと投資へのコミットメントをさらに強化するものとなる。
強力な相乗機会
Confluent社の買収は、IBMのポートフォリオ全体にわたって大きな製品相乗効果を生み出すと期待されている。これには、AI製品やサービス、自動化、データ、コンサルティングが含まれる。
またIBMの市場展開力を活用することで、収益成長を加速させられる。さらに、IBMの規模と最高水準の生産性向上施策により、運営効率の大幅な改善も見込まれる。
魅力的な財務プロファイル
Confluent社の買収は、時間の経過とともにIBMの成長を加速させると予想されている。IBMはまた、この取引完了後の初年度に調整後EBITDAに対して増加効果をもたらし、2年目にはフリー・キャッシュ・フローに寄与すると見込んでいる。
Confluent社の本社はカリフォルニア州マウンテンビューにあり、現在6500社以上のユーザーにサービスを提供している。その中にはFortune 500企業の40%以上が含まれる。同社はAnthropic社、AWS社、GCP社、Microsoft社、Snowflake社などと提携し、幅広い統合を進めている。これは、アプリケーション・プロバイダー、ISV、ハイパースケーラーを含む幅広くオープンなテクノロジー・エコシステムにおいて、深い業界パートナーシップを重視するIBMのアプローチと一致している。
Confluentは、データの移動を可能にするオープンソースのデータおよびイベント・ストリーミング・プラットフォームであるApache Kafkaを基盤としている。Apache Kafkaは、分析、モニタリング、イベント駆動型アーキテクチャに対応する高速で信頼性が高く、スケーラブルなデータ・ストリーミング機能を提供する。Confluentのプラットフォームには、Data Streaming、Connectors、Stream Governance、Stream Processing、Tableflow、Confluent Intelligence、Streaming Agentsが含まれている。柔軟な導入オプションを備えており、以下の構成が可能である。
Confluent Cloud
Confluentのデータ・ストリーミング・プラットフォームの完全マネージド型デプロイメント。サーバーレスのApache Kafkaエンジンにより、クラウドでリアルタイム・データストリームを効率的に展開・スケール可能。
Confluent Platform
クラウドネイティブでエンタープライズ・グレードのApache Kafkaディストリビューションを活用した、セルフ・マネージド型デプロイメント。
WarpStream
ハイブリッド型のBring Your Own Cloud(BYOC)モデル。クラウド・ホスト型ソリューションの使いやすさと、セルフホスト型のコスト、セキュリティー、データ主権を両立。
Confluent Private Cloud
オンプレミスやプライベートクラウドのKafkaワークロードに、Confluent CloudのKoraを適用し、クラウドネイティブなマネージド・サービス体験を提供。
[i Magazine・IS magazine]







