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「IBM ERPフレームワーク」は“AIレディ”の次世代型ERPパッケージ ~ソースコードとDB設計を公開、ユーザーはカスタマイズ自由

日本IBMは10月2日、IBM iの新しい事業戦略としてIBM i利用の有無を問わず、日本の中堅企業を主な対象とする3つの施策を発表した。IBM iと生成AIを活用して基幹システムの再構築を促すという新戦略だが、そのうちの1つに次世代型の基幹アプリケーション・パッケージ「IBM ERPフレームワーク」がある。

IBM ERPフレームワークは、販売管理、生産管理、経理、給与、ワークフローの機能を備え、企業の基幹業務全般をサポートするアプリケーション・パッケージである(図表1)。

ERPパッケージは市場に数多く存在するが、その中にあって今回のIBM ERPフレームワークは「次世代型」という点で注目に値する。次のような特徴をもつという。

・ソースコード公開で提供されるため、自由にカスタマイズが可能
・データベースの設計も公開されるため、DBの変更が容易
・「AIレディ」として設計され、生成AIツールとの連携が容易
・REST API機能を備え、外部サービス/システムとの連携が容易
・IBMビジネス・パートナー各社より提供されている、IBM i ソリューションと連動が可能

「ソースコードが公開されていて、生成AIとも連携可能なので、生成AIツールを活用しながらアプリケーション開発が行えます。これは基幹アプリケーションの開発方法として先進的です。文字コードについてはJIS第4水準のCCSID1399、OSの言語コードも2930を前提としているので、IBM iと連動するシステム、つまり生成AIツールや外部システムとの連携をスムーズに実現します」と説明するのは、日本IBM テクノロジー事業本部の久野朗氏である。

パッケージされている販売管理、生産管理、経理、給与、ワークフローの機能の詳細は公開されていないが(11月20日現在)、久野氏によると「大規模企業の基幹業務を支え得る十分な機能を備えています」という。

ソースはILE RPGで書かれているため、基幹システムの再構築を検討中のIBM iユーザーも利用できる。また、ILE RPGの文法は極めてシンプルで、かつ業務プロセスをそのままコーディングでき、GUIはTypeScriptでの記述を予定しているので、オープン系のユーザーでも容易に使いこなすことが可能である。

日本のすベての中堅企業を新しい事業戦略の対象とした理由について、久野氏は次のように語る。

「日本の中堅企業ではERPパッケージが非常に多く使われていますが、大半がソース非公開のパッケージであるためブラックボックス化し、システムの改修をタイミングよく柔軟に行えていないのが実情です。またバージョンアップのたびにアプリケーションの非互換が多数発生し、大規模な改修と多額の費用がかかっています。AIへの対応もランサムウェアへの対応も遅れているため、DXを思うように進められないという声もよく耳にします。IBM ERPフレームワークはそうした状況にあるお客様への日本IBMからのご提案です」

図表2は、旧来型のERPパッケージからIBM ERPフレームワーク へ移行した場合のメリットを日本IBMがまとめたものである。

まず基盤をIBM iへ移行することによって、「圧倒的なパフォーマンス」を得ることができる。さらにIBM i OSはハッキングやランサムウェアに強いため、より強固なセキュリティを実現できる。またIBM i OSでは年2回新機能の追加があるため、システム環境の継続的なグレードアップも期待できる。

データベースに関しては、「対応データ容量とパフォーマンスの格段の違い」(久野氏)によって、IBM ERPフレームワークへの移行に大きなメリットがある。

「SQL ServerやOracle DBではパフォーマンス問題を回避するために、データの分析・活用を行う時は、別にDWH(データウェアハウス)を立てているのが実情です。Db2 for iは大きなデータ容量にも対応し、かつインメモリ・データベース・アーキテクチャであるため、ハードウェアとして圧倒的な性能を誇るPowerサーバー上で稼働することとも相まって、基幹データベースのパフォーマンスを大幅に向上できます。DWHの別建ては不要です」(久野氏)

アプリケーションはソース公開であるため、自由なカスタマイズが可能である。IBM ERPフレームワークは後方互換性を備えるため、システムが更新されてもアプリケーションの改修なしに使い続けることができる。

日本IBMではIBM ERPフレームワークを全国のパートナー経由で販売する計画。今年の秋口から全国のパートナーに説明を続けているという。

日本IBMのPower事業部では、この数年間、IBM iユーザーとパートナー向けの施策を次々に発表し、取り組みを進めて来た。今回のIBM ERPフレームワークを含む新しい事業戦略は、これまでのIBM iユーザー/パートナーへの取り組みの成果の上にある、新しいステップと見ることができそうである。

[i Magazine 2025 Winter掲載]

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