日本IBMの原寛世氏(理事 テクノロジー事業本部 Power事業部長)はPower 11の発表に際して、Power事業の戦略について語るとき、販売戦略、パートナー戦略、人材戦略の3つを強調した。そして人材戦略としては、IBM i、AIX、Linuxそれぞれの技術者に向けた人材育成を掲げた。とくに次世代の人材育成が遅れ気味であると指摘されるIBM iに関しては、以下の施策を展開するとしている。
① IBM iの技術者をプールし、日本IBM中心にしたIBM i技術者紹介制度を展開
② IBM i若手技術者コミュニティ「IBM i RiSING」を開催
③ 初めてのIBM Power/AIX、IBM iセミナーを開催
④ 各種リスキリングカレッジを開催。
このようにPower事業の人材育成戦略の重要な柱の1つになっているのが、IBM i若手技術者コミュニティである「IBM i RiSING」。IBM i 次世代エンジニアのための技術力向上と情報交換を目的とした、若手エンジニアのためのコミュニティである。
昨年にスタートし、好評につき今年も引き続き展開されている。年齢制限はなく、「IBM i の業務経験が10年以内の技術者」というのが参加条件であるが、参加メンバーはユーザー/ベンダーと取り混ぜて、20~30代と圧倒的に若手技術者が多い。今年は、昨年より多い76名のメンバーが参加している。
活動は募集締め切りとなる今年1月から進められている。リアルとオンラインのハイブリッド型で、全3回の全体会議を開催するほか(リアルもしくはオンラインでメンバー全員が顔を揃える)、メンバーは各研究テーマに沿ったワーキンググルーに所属し、全体会議の合間に毎週・隔週・月1など、それぞれの頻度で個別に研究ミーティングに参加する形式だ。
2月にオリエンテーション、および研究テーマと所属ワーキンググループの決定、キックオフミーティングが開催された。4月7日、7月9日と2回の全体会議で進捗報告、そして10月21~22日/22~23日には、2組に分かれて、天城ホームステッドで成果発表会が行われる。
7月9日には、第2回目の全体会議が開催された。日本IBMの箱崎事業所に足を運んだのは21名、大阪事業所には7名、名古屋事業所には4名。そして各地からオンラインで38名と、合計70名が参加した。
今年は合計12のワーキンググループが編成されている。それぞれの研究テーマは以下のとおりである。
Aチーム:RPG ⅢからFF RPGへの移行 ~それぞれの開発者から見た開発環境の違い
Bチーム:RPG ⅢからⅣへのコンバート
Cチーム:Gitを導入し、IBM i上でソースコード管理をしてみよう
Dチーム:IBM iの運用について
Eチーム:IBM iソースをGitで管理する仕組みの構築と検証
Fチーム:VS Codeを使用したFF RPGの開発
Gチーム:オープンソース「Note.js」を使用した開発
Hチーム:人材育成について
Jチーム:パフォーマンス分析解説
Kチーム:PVSと一般的なオンプレミス運用の違い、PVSの概要とマイグレーション
Lチーム:生成AIでRPG ILE初心者のコーディングをサポートできるか検証
Mチーム:Code for IBM i × FF RPG ~拡張機能でこんなことができる!
Nチーム:RPGとSQLの比較 ~IBM iでの開発における利点とは
(Iチームは存在していない)
これらのテーマを見てわかるとおり、全体的にRPG ⅣやFF RPG、SQL、オープンソースのGitやNote.js、生成AI、クラウドサービスなど、若手技術者が関心をもちそうな新しい開発環境やテクノロジーに関する話題が多い。個別のワーキンググループでも活発な意見が交わされていた。
こうした取り組みが、IBM iの世界で指摘される次世代の育成につながっていくことは間違いないだろう。
[i Magazine・IS magazine]