IBM iの研修サービスといえば、「アイ・ラーニング」の名前を思い浮かべる人も多いだろう。
同社は30年以上にわたりサービスを提供し続け、多くのIBM iエンジニアを輩出してきた。
同社は現在、「デジタル人材の育成をリードする」をキャッチフレーズに、研修サービスの領域を大きく拡大し、意欲的な取り組みを進めている。
その中にあるIBM i研修サービスの現在をレポートする。
ユーザー企業の間で
IBM i要員育成の“熱”が高まる
IBM iユーザーの間でIBM iのシステム要員を育成しようという“熱”が高まっている。弊誌が定期的にヒアリングをしているユーザーの中に、これまで実施してこなかった外部研修サービスを利用したり、教育・研修体系を整備してIBM iの研修を進めているところがある。また、IBM iを中心に事業展開しているSIerやソフトウェア企業の中に、IBM i関連の研修サービスに進出し、成果を上げているところが増えつつある。
この理由はいくつか考えられる。最も大きいのは、ユーザー企業におけるシステム要員の不足である。弊誌が毎年実施している「IBM iユーザー動向調査」にも、そのことは表れている。「システム要員の不足」が「情報システム部門が抱える課題・問題」のトップを毎年続け、それも毎回70%前後という高い回答率を獲得し、2位に20ポイント以上の差をつけている。
またその動向調査で「システム要員不足の対策」を尋ねた設問では、「中途採用の強化」(40.1%)、「新卒採用の強化」(23.8%)、「自社の他部門からの異動促進」(17.1%)がトップ3となり、ユーザー企業自らがIBM i要員の確保に動いていることがうかがえる。
アイ・ラーニングの
研修サービスの3つの特徴
IBM iユーザーがIBM i要員の育成に動き出す中で、“老舗”のアイ・ラーニングは、どのような考えと研修プログラムでIBM i研修サービスを進めているのか。
アイ・ラーニングは1990年に日本IBMの共同出資でスタートした研修専門会社である。当初はIBMの技術研修を中心に事業を進め、その後はほかの分野のITスキル研修にも進出し、さらにIT以外のビジネススキル研修や階層別研修(新入社員、年次、管理職、ビジネスリーダー、DX推進リーダー、次世代経営人材)などにも領域を広げて、現在に至っている(図表1)。

また研修の形式も、対面からオンライン、e-ラーニング、マイクロラーニング、サブスクリプションへと、受講者の多様化にあわせて広げてきた。
「当社の研修サービスはIT研修はもとより、ビジネス系・営業系の研修にも長い歴史があり、強みをもっています。これからは事業部の方たちもITやAIのスキルを身につけ、デジタル人材としてDXを推進していく役割を担います。
当社の研修サービスは、デジタル×ビジネスを網羅した実践的な研修コンテンツをご用意していること、日本IBMの出身者を中心に実務経験が豊富な講師陣が実践的なナレッジを提供していること、お客様の目的や課題に即してカリキュラムを組み立てるカスタマイズ力を有していること、の3つが特徴です。
デジタル人材の育成はワンタイムで終わるものではなく、継続的な取り組みが必要です。当社の研修コースは、受講される方の3年後までのキャリアパスを見据えて研修全体を体系化し、個々のカリキュラムを設計しています。当社は、デジタル人材の育成をリードする企業であることを目標としていますが、その中の1つの重要な要素がIBM i研修です」と説明するのは、代表取締役社長の杉山真理子氏である。
IBM i技術の主要事項を
カバーする34の研修コース
アイ・ラーニングのIBM i関連の研修は、現在34のコースで構成されている。IBM i入門、システム操作、運用管理、セキュリティ、ネットワーク、Power Virtual Ser
ver、Query演習、DB2 for i、プログラミングなどIBM i関連の主要事項を網羅する研修コースが用意されている(図表2)。

また、研修の形式も、オンライン対応(オンラインまたは対面)、オンライン専用、e-ラーニングなどいろいろある。
IBM i研修担当の中村潤氏は 「受講者のスキルレベルや目的・用途、受講形態に対するさまざまなニーズに合うようにコースを設計しています」と話す。
●IBM i入門編
「IBM i入門編」は文字どおり、IBM iを初めて使用する人向けのコースである。IBM iサーバーに関する基礎知識から5250画面の基本操作、データベースやプログラムの開発、データ操作などまで、IBM iに関する基礎的事項を1日(e-ラーニングは8時間、以下カッコ内の時間はすべてe-ラーニング)で学べるコースである。
●IBM iプログラミング入門、プログラミング関連
「IBM i入門編」に続けて同社が推奨している研修コースは、「IBM iプログラミング入門」である。
2日間のコース(16時間)で、1日目はプログラミングのための環境設定とSEUの基本操作、2日目はPDMの基本操作とRational Developer for iという内容で、座学と演習を通して学ぶ。
「2日間でSEU、PDM、RDiなどのツールと基本的なコマンドを操作できるようになります」と、中村氏。
IBM iのプログラミングに関しては、入門編のほかに以下の7つのコースがある。
・RPG Ⅲプログラミング基礎編(4日、32時間)
・RPG Ⅲプログラミング実践編(4日)
・ILE RPGプログラミング基礎編(4日、32時間)
・ILE RPGプログラミング実践編(4日)
・IBM i CLプログラミング基礎編(1日、8時間)
・IBM i CLプログラミング実践編(2日)
・RPG ⅢプログラマーのためのフリーフォームRPG(1日、8時間)
RPG ⅢとRPG Ⅳ(IEL RPG)の基礎編では、プログラムの作成手順とレポート印刷プログラムの基本、基本的なプログラミング方法とデバッグのやり方を学ぶ。
RPG ⅢとRPG Ⅳ(IEL RPG)の実践編では、データベース保守、サブファイル、組み込みSQLを使用したプログラミング方法を学ぶことができる。
「RPG ⅢプログラマーのためのフリーフォームRPG」は、RPG Ⅲプログラマーを対象とするコースで、RPG ⅢプログラムをフリーフォームRPG(以下、FF RPG)へ変換・移行するための方法を習得できる。
FF RPGについては、「ILE RPGプログラミング基礎編・実践編」でも学習できるが、RPG ⅢからFF RPGへの変換・移行を実践的に学べるコースである。このコースでは、Visual Studio Code(以下、VSCode)とRational developer for iによるFF RPGの編集方法もそれぞれ学習することができる。
●DB2 for i基礎編、データベース関連
「DB2 for i基礎編」は、「IBM iプログラミング入門」とその次の「IBM i CLプログラミング基礎編」に続けて受講が推奨されているコースである。
このコースでは、リレーショナル・データベースの概念と設計方法、SQLとQueryの基本的な操作方法を学ぶ。1日(8時間)のコース終了時には、SQLのSELECT、INSERT、UPDATE、ELETEの使い方と、QueryのRUNQRYとUPDDTAを扱えるようになる。
データベース関連ではこのほか、「IBM i Query演習」と「DB2 for i実践編」もある。
●IBM iシステム操作編、運用・管理関連
「IBM iシステム操作編」は運用管理担当者を対象とした4日間(32時間)のコースで、座学と演習をとおして運用管理の実践的な知識・スキルを身につけることができる。
中村氏は、「コース終了時には、運用管理に必要な情報をIBM iから取り出して、さまざまな分析を行えるようになります」と語る。
具体的な学習内容は、以下のとおり。
・システム画面の使用
・コマンド検索
・メッセージの取り扱い(5250エミュレータ)
・ライブラリーリストの設定
・印刷制御
・実行環境の調査
・バッチ投入
・機密保護の基礎
・保管/復元
・ログの使用
運用・管理関連のコースにはこのほか、以下の6つのコースが用意されている。
・IBM i機密保護演習(2日、16時間)
・IBM i実行管理演習(2日、16時間)
・IBM i回復設計演習(3日、24時間)
・IBM i TCP/IP機能と構成演習(6時間)
・Access Client Solution操作入門(0.5日)
・Power Virtual Server構成演習(1日)
●Power Virtual Server構成演習
「Power Virtual Server構成演習」は2023年にスタートした比較的新しいコースで、オンプレミスのシステムをクラウドへリフトした時のサーバーの構成方法やクラウド上の設定について実践的に学ぶことができる。以下の項目を学習する。
・Power Virtual Serverとは
・サーバーの構成
・コンソールの使用
・2次言語の設定
・SSHDによるPC接続
・ACSで5250エミュレータ構成
・ICOSを使用したデータ転送とバックアップ
●VSCode、Code for IBM i
IBM iユーザーの間では最近、VSCodeなど新しい開発環境への関心が高まりつつあり、導入・利用に取り組む企業も徐々に増えている。
アイ・ラーニングではこれまでにもユーザー動向を捉えて新しい研修コースを提供してきたが、2025年1月からはVSCodeのIBM i用プラグインである「Code for IBM i」の研修を「IBM iプログラミング入門」に加えてスタートさせる。
「IBM iの製品・技術動向をみると、SEUやPDMといった伝統的な手法・技法からSQLやVSCodeなど世の中に普及している技術へ移りつつある傾向が見て取れます。それを受けてIBM i市場でもVSCodeの話題が多くなり、Code for IBM iを利用する企業も増えています。当社でもその動向を踏まえて研修コースに組み込むことにしました」と、中村氏は説明する。
アイ・ラーニングの
IBM i研修サービスの強み
アイ・ラーニングの研修形態には、これまでに紹介してきた「オープン研修」のほかに、「プライベート研修」もある。オープン研修は、カリキュラムと開催日があらかじめ設定されている研修コースで、複数の企業が参加する形態。「プライベート研修」は個別の企業向けに企業の意向を踏まえてカリキュラムをカスタマイズして行う研修である。
「当社のIBM i研修は、30年を超える講習の経験を踏まえて、IBM iの活用に不可欠な事項をすべて網羅し、体系立って学習できるようにコース設計がなされています。研修に不可欠な十分な設備と環境、経験のある講師陣を揃え、いつでも研修を提供できる体制を整えているのが当社のIBM i研修の特徴であり、最大の強みです。IBM iが登場から30年以上経過した現在も使い続けられているように、当社のIBM i研修も、当社の研修コースの柱の1つとして継続していく考えです」(中村氏)



◎デジタル人材未来塾
アイ・ラーニングでは、デジタルとビジネスの両方のスキル・知見をもつ次世代リーダーの育成に力を入れている。「デジタル人材未来塾」はその1つの取り組みで、次世代人材が集まるコミュニティ。1年を通したプログラムで、オンラインの講座とオフラインの勉強会・交流会を開催している。







