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IBM、AIアクセラレーター「IBM Spyreアクセラレーター」を提供開始 ~Power11では12月上旬から、企業の生成AIやエージェント型AIワークロードの拡張を支援

IBMは10月14日、基幹業務のセキュリティとレジリエンスを重視しながら、生成AIおよびエージェント型AIのユースケースを支える低レイテンシー推論を可能にするAIアクセラレーター「IBM Spyre(スパイア)アクセラレーター」の提供を開始すると発表した。

IBMは2024年10月、将来のPower製品にIBM Spyreアクセラレーターを組み込み、AIコンピューティング機能の追加提供を予定している、と開発意向を表明。2025年初めに、IBM SpyreアクセラレーターはIBM z17、LinuxONE 5、Power11で利用可能になる計画を発表していた。

また今年7月に日本IBMがPower11を発表した際にも、IBM Spyreをベースとした新しいオフチップAIアクセラレーションの搭載を明らかにしていた。実装予定は2025年第4四半期(10~12月)と公表しており、予定どおりの発表となった。IBM z17およびLinuxONE 5向けには10月28日から、Power11向けには12月上旬から提供開始する予定である。

AIエージェントには、低レイテンシーの推論とリアルタイムのシステム応答性が求められる。IBMは、メインフレームやサーバー上で、最も要求の厳しい基幹業務のワークロードを処理すると同時に、スループットを損なうことなくAIモデルを実行する必要があるとしてきた。

このような需要に対応するには、基幹データやトランザクション、アプリケーションのセキュリティとレジリエンスを維持しつつ、生成AIおよびエージェント型AIに対応できるAI推論用ハードウェアが求められる。IBM Spyreアクセラレーターは、リスク軽減のためにミッション・クリティカルなデータをオンプレミスで保持できるとともに、運用効率やエネルギー効率にも配慮した設計となっている。

IBM Spyreアクセラレーターは、IBM ResearchのAIハードウェア・センターによる革新的なイノベーションと、IBMインフラストラクチャによるエンタープライズ・グレードの開発を融合した、IBMの研究開発から製品化までのパイプラインの強みを体現するものとしている。

IBM Spyreアクセラレーターは当初、プロトタイプ・チップとして発表され、IBMヨークタウン・ハイツの研究所でのクラスター展開や、アルバニー大学の先端AIシステム・センター等との協業を通じて、迅速な反復型開発により改良された。

IBM Researchのプロトタイプは、IBM Z、LinuxONE、IBM Powerシステム向けのエンタープライズ・グレード製品へと進化し、32個のアクセラレーター・コアと256億個のトランジスタを搭載した商用のシステム・オン・チップ(SoC)として提供される。

5nmプロセス技術を用いて製造され、各IBM Spyreアクセラレーターは75ワットのPCIeカードに実装されている。IBM ZまたはLinuxONEでは最大48枚まで、IBM Powerでは最大16枚までカードをクラスター化して、AI処理能力を拡張できる。

IBM Spyreアクセラレーターは、IBMユーザーに、オンプレミスでのAIアクセラレーション技術による高速かつ安全な処理を提供する。これは、IBM Z、LinuxONE、IBM Powerシステム上にデータを保持しながら、AIを大規模に活用できるという重要なマイルストーンとなる。

IBM ZおよびLinuxONEでは、IBM Telum IIプロセッサとの組み合わせにより、セキュリティの強化、低レイテンシー、高トランザクション処理能力を実現する。これにより、企業はIBM Spyreアクセラレーターを使用して複数のAIモデルをスケーラブルに展開し、高度な不正検知や小売業の自動化といった予測型ユースケースを強化できる。

またIBM PowerベースのサーバーでIBM Spyreアクセラレーターを利用するユーザーは、AIサービスのカタログを活用してエンタープライズ・ワークフロー全体にAIを統合することで、エンドツーエンドの業務最適化を実現できる。

カタログに掲載されたAIサービスは、ワンクリックで導入可能。IBM Power向けのIBM Spyre アクセラレーターは、オンチップ・アクセラレーター(MMA)と組み合わせることで、生成AIのデータ変換を高速化し、企業内の複数の業務プロセスやシステムを、より密接かつ効率的に連携させる高スループットを実現する。

さらに、128のプロンプト・サイズに対応し、1時間に800万件以上の文書を取り込むことが可能となり、ナレッジベースへの統合を大規模かつ迅速に実現する。この性能は、IBMのソフトウェア・スタック、セキュリティ、スケーラビリティ、エネルギー効率と組み合わせることで、企業が生成AIフレームワークを業務に統合する取り組みを強力に支援する。

 

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