弘長 勇氏
株式会社テクニゲート
代表取締役社長
2020年に統合会計パッケージ「SuperStream/400」のNESCO SUPER SOLUTIONを買収したテクニゲートがビジネスを伸ばしている。同社の強みは、IBM iとオープン系のそれぞれに精通した技術者を擁していること。同社を牽引する弘長勇 代表取締役社長に、同社の事業とIBM i市場の魅力を語っていただいた。
3つのシナジー効果をどう生み出すか
i Magazine(以下、i Mag) 2022年4月にNESCO SUPER SOLUTIONを買収して、新たなスタートを切りました。この3年間はどのようなことに取り組んできたのですか。
弘長 最も重要な取り組みと考えたのは、NESCO SUPER SOLUTIONとランドコンピュータとのシナジー効果をどう生み出すかでした。NESCO SUPER SOLUTIONからは約20人のエンジニアと、700社以上のSuperStream/400のお客様、IBM i市場で活躍する20社を超えるパートナーが私どもの経営資源となりました。それらの経営資源とランドコンピュータの経営資源を組み合わせて結果を出すことが取り組みのテーマでした。
i Mag 具体的にどう進めたのですか。
弘長 最初に3つのシナジーを考えました。1つ目は人的リソース、2つ目は顧客基盤、3つ目はランドコンピュータとの協業です。
人の面では、NESCO SUPER SOLUTIONのエンジニアはIBM i技術と会計パッケージについて知見と経験をもち、製品を開発して育てていく技術をもっています。一方、ランドコンピュータのエンジニアは、他社が開発した製品・サービスを深く理解して、お客様の多様なニーズに合わせてソリューションをご提案し、導入から保守・運用までトータルにご支援する技術をもっています。
また営業も同様です。NESCO SUPER SOLUTIONの営業はIBM iのお客様の会計業務に精通し、ランドコンピュータの営業は幅広い製品・サービスについて知見をもち、お客様の状況を踏まえた提案ができます。
この両社の営業と技術者の特徴とパワーを合わせれば、お客様のニーズにより広くより深くお応えできるはずです。この3年間はそのための仕組みや“文化”の醸成に努めた期間で、情報の共有をふだんから密にし、案件が発生すれば速やかに一体となって動ける体制を整備してきました。
i Mag 実際に動いてみてどうでしたか。
弘長 メンバー同士がうちとける懇親会のような場を設けたりしましたが、一番効果があったのは、実際のプロジェクトで一緒になり、仕事を通してお互いの強みやよさを認識し合うことでしたね。それがあると、何かあるとあの人に聞いてみようとか、プロジェクトをどう進めればスムーズにいくかといったことが見えてきて、風通しがよりよくなる印象でした。
i Mag 2つ目の顧客基盤についてはどのような取り組みですか。
弘長 SuperStream/400のお客様は中堅・中小企業から大企業まで広がり、ほぼすべての業種をカバーしています。実にさまざまなお客様がおられ、多様なシステムを運用されています。それを踏まえればIBM iをご利用中の企業は、多種多様なシステム・ニーズをお持ちであることがわかるのですが、従来はそうしたお客様に対してSuperStream/400の会計ソリューションしかご提案できませんでした。
それが今は、インフラから専門性の高い業務システムや、IBM i全般からオープン系、クラウド、AI、IoTなどいろいろなシステムやサービスをご提案できます。まずはSuperStream/400をお使いのお客様に対して、より幅広いクロスセルをかけていくのが、2つ目のシナジー戦略でした。
i Mag 3つ目はどのようなシナジー展開ですか。
弘長 2つ目と重なりますが、オープン系システムに強みをもつランドコンピュータとの協業によるIBM iのお客様への新しいソリューションのご提案です。既に両社の営業・技術者をメンバーとするプロジェクトが立ち上がり、案件獲得に至ったケースもいくつかあります。お客様がIBM i上のシステムの一部をオープン系基盤へ移行させたり、IBM iとオープン系システムとの連携を望まれるときに、この協業は力を発揮します。IBM iとオープン系システムを対象とするマルチプラットフォームの保守サービスも協業の1つで、IBM iのお客様がご利用中です。
欲しい人材はIBM i技術者と
会計コンサルティングを担える人
i Mag シナジーを生み出すために注力してきたことは何ですか。
弘長 人への投資です。お客様の高度なご要望にお応えするには、人こそが鍵を握ります。
i Mag それはどういう人材ですか。
弘長 1つはIBM iの技術者、もう1つは会計コンサルティングが行える人材です。
IBM iおよびSuperStream/400は当社の中核で、ビジネスの屋台骨です。その中核をこれからも安定して支え、より強固にしていくには、それを担う人材が不可欠です。
会計コンサルティングのほうは、会計に対するお客様のニーズが大きく広がっていることが背景です。従来からの財務会計に対して、管理会計や会計に絡む申請・承認のワークフロー、予算管理システムなどのニーズが高まっています。また会計システムと他システムとの連携のご要望も多いですね。単にシステムをつなぐだけではなく、データを高度に活用していくためのご要望です。
会計業務は企業を運営していくときの根幹ですから、なくなることはありません。そして会計業務で捉えられるデータをより高度によりスピーディに活用し、ビジネスをより高度にしていこうというニーズは、今後高まる一方だろうと思います。そのためには会計業務のエキスパートが何よりも必要なのです。
i Mag 過去3年間の業績・成果はいかがでしたか。
弘長 社名をNESCO SUPER SOLUTIONからテクニゲートへと変更した2023年度はインボイス制度への対応を求められるお客様が急増し、特需といえる年でした。業績も飛躍的に伸びました。2024年度は特需が終息したので極端な伸びは収まりましたが、前年度の特需分を引いた通常のビジネスは堅調でした。
i Mag それでは、2025年度の方針と戦略をお聞かせください。
弘長 1つはSuperStream/400の製品力を高めることです。SuperStream/400にはすでに25年の歴史があり、お客様・パートナー様から本格的な統合会計パッケージとして高い評価をいただいている完成された製品です。しかしながら会計システムには新しいニーズとご要望が多数寄せられています。それらにきちんと対応していくには、何よりも、ビジネスの土台となる製品力を高めていくことが必要です。
もう1つはパートナー戦略の見直しと強化です。SuperStreamを軸にした当社のパートナーは全国に20社以上ありますが、お客様のインボイス制度への対応に弊社もパートナーも追われていたので、パートナー制度のテコ入れに専心している余裕がありませんでした。しかし特需が終わり、お客様の会計ソリューションに対する新しいニーズやご要望にきちんと向き合う時期が来ています。それには個々のパートナーの強みと特徴を踏まえた新しいパートナーシップが必要です。その新しい関係を築く取り組みを今年度は進めます。
そして3つ目は、弊社の開発、運用・保守の各分野で技術者の拡充と強化を進めることです。ビジネスが伸びているので、エンジニアの継続的な確保と強化は欠かせない取り組みです。
ただし、技術者といっても人数だけ増やすのではなく、AIや生成AIを活用して、開発・運用・保守作業の効率化と高度化を同時に並行して図っていくことも必要だと考えています。
i Mag その中で具体的に進めていることはありますか。
弘長 IBM i市場で多くの実績をもつ大手ベンダーとSuperStream/400に関して協業の話を進めています。啓蒙・提案活動と、導入支援、運用・保守サービスを両社の特徴と強みを活かしながら一緒にやろうという協業です。
IBM i市場は非常に魅力的
お客様層と先進技術を活かせる基盤
i Mag テクニゲートのビジネスから見て、IBM i市場は有望ですか。
弘長 IBM iのお客様は、IBM iというプラットフォームに対して非常に高いロイヤリティをもっておられると感じています。とはいえ、そうした高いロイヤリティをもつお客様でさえ、IBM iシステムの開発・運用・保守を担ってきたベテラン層の引退や、クラウドやオープン系など新しい技術への対応が困難なことによって、IBM iから他のプラットフォームへの移行を余儀なくされています。このことはIBM iの安定性や資産継承性、ポテンシャリティを考えたら、とてももったいない、残念な動きです。
これへの対処としては、IBM iを丸ごと捨ててしまうのではなく、IBM i上に残すものと他のプラットフォームへ移すものとを峻別し、それぞれに対応していく考え方があると思います。ただし、それすらも要員難やスキル不足などよって断念せざるを得ないお客様もおられます。
一方、私どものビジネスも従来のようなSuperStream/400の販売と導入支援だけでは大きな成長を望めないのは明らかです。お客様の多くがシンプルな会計ソリューションではなく、会計システムを高度に活用する新しいソリューションを求めておられるからです。言い換えれば、「会計システム+アルファ」のアルファを求めておられるのです。このことは私どもの過去3年間のSuperStream/400ビジネスの内容をみれば一目瞭然です。過去3年間、SuperStream/400が成長したのはベースとなるSuperStream/400本体ではなく、プラス・アルファの部分だったからです。
私どもは現在、IBM iとオープン系に強い技術者を多数そろえ、さまざまな基幹・業務システムのニーズに対応できる体制を整えています。そしてそのリソースを活用して「SuperStream/400+アルファ」のアルファを推進していくことが可能です。
その意味で、高いロイヤリティをもつお客様層と、盤石なアーキテクチャと先進テクノロジーを備えるIBM iとその市場は当社にとって非常に魅力的で、有望な市場です。
i Mag 2025年度は、そのプラス・アルファの提案が増えそうですね。
弘長 そこは私どもにとってビジネスチャンスであり、お客様をご支援するベンダーの使命であるとも考えています。
i Mag 対前年比でどの程度の成長を見込んでいるのですか。
弘長 対外的には慎重な数字をご紹介していますが、 社内では2ケタ成長は当然のことと受け止められていますね。
式会社テクニゲート
本社:東京都港区
設立:2008年5月
資本金:2億6000万円https://www.technigate.co.jp/
弘長 勇氏
ランドコンピュータに入社後、SEとして汎用機での金融系システム開発からキャリアをスタート。その後にオープン系へ移り、さまざまな業種・業務のシステム開発に従事。2007年に部長職に就き、現場を離れてからは主にパッケージ等のソリューションビジネス、クラウド、AI、IoTなど先進・トレンド分野のビジネス推進を担当。2022年6月、
NESCO SUPER SOLUTION(現、テクニゲート)の代表取締役社長に就任。ランドコンピュータの取締役 ビジネスイノベーション事業本部長を兼務。
撮影:広路 和夫