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05 クラウドサービス

クラウド利用で
風向きの変化

クラウドサービスの最初期のベンダーであるアマゾンが米国でAmazon Web Services(AWS)を開始したのは2006年。日本のJBCCがIBM iユーザー向けの「iクラウドサービス(当時のサービス名)」をスタートさせたのは、それから4年後の2010年。そしてIIJグローバルソリューションズがクラウド事業者として初めてIBM i対応のIaaSサービス「IIJ GIO Power-iサービス」をリリースしたのは2013年である。

日本でクラウドサービスが本格的に普及し始める起点をAWSの東京リージョン開設(2011年3月)と見れば、IBM i市場におけるクラウドサービスの始動は決して遅くはない。しかし、当初のIBM iユーザーのクラウド採用の動きは非常に鈍いものだった。実際、IBM iのクラウドベンダーは、2010年代前半には、ビジネスで非常に苦労する状況にあった。大半のユーザーが、クラウドを検討の俎上にも乗せなかったからである。それがここにきて、風向きの変化を指摘する声は多い。

困難な状況の打開策から
よりポジティブな利用へ

その背景の1つとして、IBM iユーザーが直面する困難な状況が挙げられる。ユーザー企業においてIBM i技術者の不足や運用負荷の増大が逼迫した状況となり、その解決策としてクラウドサービスが選択されているのである。

つまり、オンプレミスのIBM iをクラウド環境へリプレースすることによって、それまでの運用にかかっていた負荷をなくし運用要員不足の対策とするのである。これはIBM iユーザー特有のクラウド利用の1つであり、IBM iユーザーがクラウドサービスを採用する最大の理由となっている。

これに呼応するベンダー側の動きとして、IBM iを対象とする多様な運用サービスやマネージドサービスが登場している。

たとえば、福岡にクラウドセンターをもつ福岡情報ビジネスセンターの「Powerクラウドサービス」は、RPGやIBM iの技術者をセンター要員として配置し、IBM iの基本的な運用サービスだけでなく、システム監視や障害時の問題判別、アプリケーション保守といった、より幅広いサービスも提供している。

最近は、こうした手厚い運用サービスを評価して、オンプレミスのIBM iを積極的にクラウドサービスへリプレースする動きが増えている。こちらは運用をクラウド事業者に委ねることによって、自社のIBM i技術者をより付加価値の高い業務へ振り向ける考え方である。

システムリソースを
より効率的に活用する手段

クラウド採用のポジティブな動きとしては、IBM iのシステムリソースをより効率的に利用する考え方のもとでクラウドを選択する動きがある。

最近のIBM i(Power Systems)はローエンド機でも処理性能(CPW)が高く、CPU能力のごく一部しか使わないユーザーも少なくない。あるいは特定の期間・時期だけ大きなCPUパワーを必要とするので、それに合わせて大型のIBM iを導入しているケースもある。この場合は、繁忙期以外はシステムリソースを大きく余して利用する形態となる。

そうしたとき、IBM iのクラウドサービスであれば、ユーザーの利用実態に合わせて最適なスペックを選択できる。たとえばIIJ GIO Power-iサービスであれば480CPW単位でリソースを選択でき、利用状況に応じて1カ月単位でシステムリソースの増減が可能である。

また同様の考え方で、IBM iの開発・テスト環境をクラウドへ移行させる動きも増えてきた。クラウドサービスならばオンデマンドで利用でき、リソース面・コスト面で効率的である。ユーザーの本番機のリソースも節減できる。

このほかIBM iのバックアップデータをクラウド上で保管したり、DR環境をクラウド上に構築する動きも登場している(ヴィンクスの「Hybrid BACKUP」「Hybrid SYNC」など)。

IBM iの多様なクラウドサービスが揃い、システム構築・運用の1つの選択肢を提供している。[i Magazine編集部]

【図表 画像をクリックすると拡大します】

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●記事で紹介したツールのベンダー

福岡情報ビジネスセンター 
IIJグローバルソリューションズ
TIS
NTTコミュニケーションズ
北海道オフィス・システム
エス・ティ・アイ
インテック
JBCC

JBCC(俺のクラウド)
ソフラ
ビーティス
CSIソリューションズ
日本情報通信
シーイーシー
AGSビジネスコンピューター
ベル・データ
セイノー情報サービス
ヴィンクス
JBアドバンスト・テクノロジー
三和コムテック