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社長の役割は「つなぎ直し」と自認、「ありがとう」と言われる、チャレンジし続ける会社を目指す |藤田洋一郎氏 ~IBM iの新リーダーたち❺

藤田 洋一郎氏
株式会社ソルパック
代表取締役社長

社長就任から4年。後半の2年はコロナの渦中にあったが、ソルパックの藤田洋一郎氏は「会社、自分、社長・リーダーの役割を見つめ直すいい機会になりました」と話す。同社は今年、創立25周年を迎える。次の25年へ向けてどのような事業を築こうとしているのか、話をうかがった。

 

コロナ禍の中で、自社・自分・
社長の役割を見つめ直す

i Magazine(以下、i Mag) 社長就任(2018年)から4年が経ちましたが、過去4年間、どのようなことに取り組んできましたか。

藤田 基本的には先代社長が築いた長期重視・利益重視という企業コンセプトを継承しつつ、少しずつテコ入れを行ってきました。企業としては今も先代社長が敷いた路線の延長上にあると思っています。

i Mag 先日、技術革新戦略室の田中良治室長(取締役 CDTO)にインタビューさせていただきましたが(こちら)、その沖縄での取り組みは、かつてのソルパックにはなかったものですね。

藤田 確かに、技術革新戦略室のような収益の見えない事業への投資は、先代社長はやってきませんでしたね。先代社長は利益重視で、投資は収益が読めるものにこそ行うべきという信念をおもちでした。

i Mag その殻を破ったのは、何か心境の変化があったのでしょうか。

藤田 僕自身からすると、ソルパックに入社して20年間続けてきたことの一環で目新しいことではないのですが、それでも社長になってほどなくして新型コロナの状況になり、在宅勤務が長期にわたって続いたことが大きかったと思っています。とにかく毎日、朝から晩まで社長室の椅子に座っていた人間がまったく異なる日常となったのですから、いろいろなことを見つめ直すいい機会になりました。

i Mag どのようなことを考えましたか。

藤田 ビジネスについては、コロナになって社会の仕組みが大きく変わろうとしているのですから、ITビジネスも変わらなければいけないということでした。人にん工くベースのビジネスではなく価値を創出するビジネスへの転換とか、お客様の囲い込み競争ではなくプラットフォームでベンダー各社がつながるビジネスへの移行とか、いろいろあります。自分のこと、自社のこと、社長やリーダーの役割ということでもいろいろと考えました。語弊のある言い方かもしれませんが、コロナは僕にとってはありがたかったという思いですね。

i Mag 4月に中期経営計画をスタートして、組織を再編されたそうですね。

藤田 これまでのPower Systems事業部を「ソリューションビジネス事業部」と「DXソリューション事業部」に分け、5事業部制を6事業部制にしました。

i Mag 各事業部を紹介していただけますか。

藤田 「コンサルティング事業部」は、IBMのMaximoによる総合設備管理マネジメント(EAM)を手がけている部門で、大手製造工場の設備全体の管理を担当させていただいています。EAM分野では、AIを活用して保全能力を高める動きが活発になりつつありますが、弊社ではWatsonやAIに取り組み、お客様のスマートファクトリー化をご支援する体制づくりを進めています。また中小の工場向けのInfor EAMやSAP PMのビジネスも拡大させています。

「ERP事業部」はSAP ERPを手がけている部門です。ERPは、DX意識の高まりやリモートワークの普及などによって再び注目が集まっていて、クラウド化の動きも活発です。この機をとらえて、SAP技術者の育成が2022年度の大きなテーマです。

i Mag 分割した2つの事業部は何に取り組んでいるのでしょうか。

藤田 「ソリューションビジネス事業部」は、中堅・中小のお客様の課題に幅広く対応し、SIや技術者の派遣、マネージドサービスなどをワンストップでご提供している部門です。IBM iのお客様もこの中に含まれ、IBM i技術者の不足や後継者不足への対応や、新しいIBM iの使い方などもお客様の実情に即してご提案しています。またこの事業部は、SAPの中堅・中小企業向けERPソリューションであるSAP Business Oneも推進しています。当社の基幹システムもSAP Business Oneで、その運用で培った技術と知見をご提供しています。

もう1つの「DXソリューション事業部」は、ソフトウェア製品のライセンス販売とサービスをご提供している部門です。セキュリティ、運用管理、モダナイゼーションなど8分野の約30種のソフトウェア製品のご提供と、導入・設定、マイグレーション、クラウド化などのご支援です。とくにサービスの拡充を急いでいます。

i Mag 残り2つはどのような事業ですか。

藤田 「サービスマネジメント事業部」では、お客様のPCライフサイクル管理やヘルプデスクサービスをご提供しています。最近、あるお客様の2万台に及ぶPCの入れ替えを受注しました。東京・お台場のサポートセンターで、PCの調達からキッティング、サービスデスク、運用管理、廃棄までのトータルサポートを行っています。

「BPO事業部」はバックオフィスの事務処理サービスを提供する部門ですが、当社のBPOは、オペレーターがITのスキルをもち、ITを駆使したBPOを展開できる点が強みです。当社のなかでは最近、デジタルマーケティング関連が急速に伸びています。この成長は、オペレータが在宅のままオペレーションセンターにいるのと同じようにオペレーションできる仕組みを構築できたことが大きかったと思っています。これによってオペレータを全国から採用でき、在宅のまま、オペレータの都合に合わせつつ勤務体制を組めるようになりました。

新卒採用を基本に、女子の比率を高める
最重要の施策は「人材育成」

i Mag じつに多面的にビジネスを展開していますが、どのような会社を目指していますか。

藤田 1つは、お客様と従業員から「ありがとう」と言われる会社です。そのためには、お客様には低価格で高品質なシステムを短納期でご提供し、お客様の売上拡大・利益拡大に貢献することです。従業員に対しては、ソルパックを世界一楽しい会社にすることが第一だと思っています。

もう1つは、チャレンジし続ける会社になることです。当社のチャレンジ精神は、2002年のFIFAワールドカップ(日本・韓国開催)のインフラ・ネットワーク構築と、センターシステムおよびスタジアムシステムの運用を担当したことが原点になっています。わずか50名足らずの小さな会社がそんなに大きなシステムを担えるのか、自分たちにも不安はありましたが、とにかく無事にやり切ったことが、その後のさまざまなチャレンジにつながっています。

当社は9月17日に創立25周年を迎えます。次の25年もお客様・パートナーとともにさらなる成長を目指し、ITテクノロジーを通して未来を笑顔にしていく、そうしたチャレンジを続けます。

i Mag そのための施策は何ですか。

藤田 最重要施策は、何をおいても人材育成です。先ほど、ITビジネスも変わらなければいけないという話をしましたが、これからは人を増やして売上を伸ばすというビジネスモデルは通用しなくなると思っています。従業員一人ひとりが高い志とモラル(倫理観)をもって新しい価値を不断に創出していく。そうしたITプロフェッショナルが求められています。そのためには人材育成こそ最重要で、人が最大の武器になると思っています。

当社では一部の例外を除いて中途採用は行わないことにしています。新卒を採用し、5年、10年と時間をかけて育てていくのが基本です。それが社員の満足度を高め、ひいてはお客様の満足度向上につながり、「ありがとう」と言われる会社に直結すると考えています。

今年は25名の新卒社員を採用しましたが、女子が12名、男子が13名でした。来年度は30名を採用する予定ですが、男女同数か、男子よりも女子を多く採用したいと思っています。社会やお客様企業で女性の登用が進み、女性の視点を交えたビジネスが進んでいる以上、当社もそれにならい、リードしていく存在になることが必要です。全社では男62.5%、女37.5%という比率ですので、道半ばという状況です。

i Mag 技術革新戦略室はどのような位置づけなのですか。  

藤田 企業としてありたい姿ややってみたいことを、過去の経緯にとらわれずに、まったく新しいアプローチで描き出そうという取り組みです。昨年(2021年)は全国の地方銀行5社が主催する「X-Tech Innovation 2021」の沖縄地区予選に参加して、不動産賃貸契約時の手続きを簡便にするスマホアプリを開発し、2つの協賛企業賞を受賞しました。そのスマホアプリは銀行の金融サービスにAPIで連携し、一連の契約手続きのなかで振込処理まで終えるものです。従来、当社のお客様はユーザー企業やIT関連企業が中心でしたが、この取り組みでは、スマホアプリを利用するコンシューマーとAPIを提供する銀行が取引先となり、当社は不動産アプリというプラットフォームを提供する事業者になりました。こうした新しいビジネスモデルを当社も展開できるということを内外に示せたと思っています。

i Mag まさにチャレンジですが、そうしたチャレンジを促し、「ありがとう」と言われる会社になるための社長の役割は何でしょうか。

藤田 私は「つなぎ直し」だと思っています。会社のなかで光るものがあるにもかかわらず伸び悩んでいることがあれば、これまでとは異なる観点でほかのものと結び合わせたり、そのための機会や場を提供すること。そうしたつなぎ直しやリコネクトが自分の役割だと自認しています。それはアドホックなことであったり、仕事からやや離れた研究プロジェクトを応援することだったりしますが、芽を伸ばそうとしているものにいち早く気づき、水や光や栄養を与えていくことが自分の仕事です。すでに事業部単位や社内横断で複数の研究プロジェクトが走り出しています。

i Mag そのプロジェクトに何かアドバイスをしていますか。

藤田 自分の経験に従えば、口は出さずに、懇親会や研究を広げるための資金を提供することがポイントでしょう。そう肝に銘じています。

 


藤田 洋一郎 氏

大学卒業後、大手建設会社を経て、2001年にソルパック入社。サービスマネジメント事業部長、取締役、ソルパックタイランド社長などを経て、2018年4月に現職。大のサッカーファンで、日本最古のシニアサッカークラブ「四十雀クラブ東京」ほか4チーム・5リーグに所属。ポジションはフォワード。趣味はFIFAワールドカップの決勝戦を現地で観戦すること。第16回フランス大会(1998年)から昨年の第21回ロシア大会(2018年)まで6大会連続で皆勤賞を続けている。

株式会社ソルパック
本社:東京都港区
設立:1997年
資本金:1億円
売上高:26億1000万円(2022年3月期)
従業員数:296名(2022年4月1日現在)
https://www.solpac.co.jp/

*シリーズ  IBM iの新リーダーたち(「IBM iの若きリーダーたち」を改題)

[i Magazine 2022 Summer(2022年7月)掲載]

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