岡谷システム株式会社
本社:愛知県名古屋市
創立:1979年
資本金:4567万5000円
従業員数:274名(2025年2月)
概要:システム開発をはじめ、インフラの設計・構築、システム運用・保守、大規模災害に備えたバックアップサイトの構築など多彩なITサービスを提供
https://www.okaya-system.co.jp/
Web EDIを構築し
異なるデータベースを同期する
岡谷システムは、製造業向けのシステム開発・運用を柱に、物流・販売・介護・インフラなど、多種多様な業種に向けたソリューションを幅広く提供している。
企業に属する情報システム部門が分離・独立し、1994年に現在の社名になって以降、国内外に展開する多数のグループ企業に対してシステム化を推進してきた。その一方、グループ外部の企業に対しても、多彩なITサービスを提供している。
同社のITインフラ事業本部 SI&サービス部は、IBM i導入の有無に関わらず、多様なIT環境を運用するグループ企業に向けて、開発・運用・保守などのITサービスを提供してきた。
グループの基盤となるIBM iは2008年、メインフレームから移行する形で導入を果たした。現在は、IBM iが稼働する2台のIBM Powerを本番機として運用・管理している。販売管理システムを中心に、グループ各社の事業を支える多様な基幹システムが稼働する。
同社が、配管機材を扱う親会社およびグループ会社に向けてWeb EDIサイトを再構築し、運用を開始したのは2024年12月のことである。
これは、配管機材の取引先(客先)に向けたECサイトである。顧客はこのWeb EDI上で、在庫照会をはじめ、商品情報やメーカー在庫情報などを照会し、注文情報を送信する。そしてその注文情報を受けて、購買先となる各メーカーへは自動的に発注情報を送信する。
以前から運用していたECサイトは開発から長い時間が経過し、続々と寄せられる最新ニーズに対応する必要があったのに加え、今まで電話やFAX、メールなどで受けていた客先からの問い合わせや受注業務を新しいWeb EDIへ移行することに、構築の狙いがあったようだ。
Web EDIの検討がスタートしたのは、2022年春のことである。
開発はすべて自社要員で進めるが、大きな検討課題となったのは、基幹システム側で在庫情報などを管理するDb2 for iと、Web EDI側で同じ情報を同期・管理するSQL Serverの双方を、どのような手法で同期・連携するかという点であった。
異なるデータベース間の同期に関しては、対応する複数のソリューションを検討したが、最終的に導入を決めたのは、「VI-DBLinks」(ヴィンクス)である。
「これまで、IBM iから出力される障害などのメッセージを管理するHybrid MESSAGEや、ジョブスケジュールを管理するHybrid SCHEDULERといった運用管理ツールを利用していた経験があったので、ヴィンクスのソリューションは以前から理解していました。今回異なるデータベースの連携を検討するに際して、VI-DBLinksであれば、当社の求める連携要件を満たすのに加え、ノーコード型で開発できるので、IBM iのスキルが不要である点も、採用の理由になりました。開発に参加する人材は、IBM iのスキルや経験に差があるので、IBM iスキルをあまりもたない開発者でも対応できるのは大きなメリットでした」と語るのは、ITインフラ事業本部SI&サービス部の藤原崇マネージャーである。

VI-DBLinks を利用して
Db2 for iとSQL Serverを同期
開発期間は、2023年10月から2024年10月末までの約1年間。開発チームはインフラ系が3名、アプリケーション開発系が7名という体制である。
Web EDIのアプリケーションは、PCサーバー上でJavaを使って開発し、その環境にVI-DBLinksを導入する。そして基幹システムが稼働するIBM i上のDb2 for iからSQL Serverへ、最新の在庫情報などを同期させる仕組みである。各基幹システムからWeb EDIへは、片方向の直接通信のみを許可している(図表1)。

同社では、本番機として2台のIBM iを運用・管理するのに対し、バックアップ機として別のIBM iを遠隔地に設置し、災害対策の一環として、両者をリアルタイムに同期している。
「VI-DBLinksは、PCサーバー側のMACアドレスをベースにライセンスを発行するため、本番機とバックアップ機の間で同期する際、このライセンス発行に関するトラブルが発生することが開発段階で確認されました。しかしヴィンクス側が即座に対応モジュールを用意してくれたことで、無事に問題解決を図れ、現在に至るまで問題なく動いています」と、開発チームに参加した伊藤高洋氏(ITインフラ事業本部SI&サービス部)は語る。

「本番稼働は2024年12月でした。スモールスタートでの運用から始め、これから取引先のユーザー数を徐々に増やしていく計画です」と語るのは、田中日美杏氏(ITインフラ事業本部SI&サービス部)である。

異なるデータベースを連携したこのWebサイトの仕組みは、同社が予定しているほかの製品のWeb EDIにも展開できないか、現在検討を進めているようだ。
このほかにも、ITインフラ事業本部SI&サービス部には、近々予定されているデータセンターの移設をはじめ、スマートファクトリーの構築、IBM iのコンテナ化や5250画面のWeb化など、多くの開発課題がある。
1つ1つを丁寧に検討し、構築に向けて 最善の努力を重ねながら、今後も前進していくことになりそうだ。
[i Magazine 2025 Summer掲載]