
株式会社日本マンパワー
本社:東京都千代田区
設立:1967年
資本金: 1億円
従業員数:約240名
概要:企業向け教育・
研修、キャリアコンサルタント養成、通信教育、キャリアカウンセリング・キャリアコンサルティング、人材紹介、その他のキャリア形成支援
https://hr.nipponmanpower.co.jp/
社内DX化の推進を目標に
Salesforceを大規模改修
日本マンパワーは、キャリア開発支援を目的に1967年に設立された。企業向け教育・研修、キャリアコンサルタントの養成、通信教育やeラーニング、キャリアカウンセリング・コンサルティングなど、教育・研修を核にした幅広いサービスを提供している。
北海道から九州まで全国規模のネットワークを活かし、企業や個人の多様なニーズに応えることで、持続可能な人材育成と組織開発を支援している。
同社は2023年から始まる3カ年の中期経営計画の中で、「キャリア支援サービスの強化」「企業向け研修プログラムの拡充」「地域連携プロジェクトの展開」「デジタルコンテンツの強化・社内DX化の取り組みの推進」などをビジネスの柱として掲げている。
上記の最後に挙げた「社内DX化の取り組みの推進」で大きな役割を果たしているのが、営業支援・顧客管理システムである「Salesforce」の大規模改修、および基幹システムが稼働するIBM iとSalesforceをリアルタイムに連携することである。
同社では1990年ごろにIBM i(当時のAS/400)を導入し、販売管理を軸とする基幹システムをRPGおよびCLで開発してきた。一方、営業支援システムについては当初、独自に開発していたが、機能拡張を行う場合に自社社員の工数が新たに発生してしまい、また相応のコストも必要であったことから、2020年にSalesforceへ切り替えている。
「ただしSalesforceを利用し始めてからしばらくは、受注後の処理作業を中心に運用していました。受注後の後工程は各段に効率化されましたが、これは営業支援という本来の狙いとは異なります」と語るのは、森泉竜一課長(経営戦略本部 経営・事業支援部 情報企画課)である。

Salesforceと基幹システムは連携していたが、定時連携で日に2回のみ、SalesforceからIBM iへデータを送信していた。バッチファイル経由なので処理過程も複雑になり、更新時間によってはどうしてもデータに差異が生じる。
そこで基幹システムとのリアルタイム連携を実現し、案件の状況照会・フェーズ管理という本来の目的に沿って、Salesforceの大規模改修に踏み切ったのである。
プロジェクトの開始は2024年5月。現状確認と要件定義からスタートし、Salesforceが備える独自言語であるApexを使って機能改修に着手した。プロトタイプを作成し、同年9~10月にかけて、特定のユーザーによる検証作業を実施。そのフィードバックを受けて改修作業を継続し、2025年4月には本番運用を想定したテストを開始した。
約2カ月のテスト期間を経て、同年6月に本格運用が始まっている。利用ユーザーは、営業および営業事務を担当する150名ほどである。
SalesforceからIBM iへ
API-Bridgeで連携
基幹システムとSalesforceの連携方法については、プロジェクトがスタートした2024年5月当初から検討を開始していた。同社では当初から、同種製品と比較して、メンテナンス性を考慮した設計やコストメリットなどを評価し、「API-Bridge」(MONO-X)に着目していた。無償のトライアル期間で使い勝手を確認したのち、正式に採用を決定している。
IBM iとSalesforceをリアルタイムにAPI連携するデータは2種類ある(どちらもSalesforceからIBM iへの連携である)。
1つは受注データ連携。Salesforceで登録された受注データおよび関連データを基幹システムのDb2 for iに反映させる。これはAPI-BridgeおよびApexを用いたカスタマイズ開発で実現している。
もう1つは在庫データ照会。Salesforceで登録された受注商品の在庫引き当て可能数を、基幹システムから参照する連携を実装した。この機能により、受注時に正確な在庫状況を把握できるようになった。ちなみに同社の在庫とは、教育・研修に利用する教材やテキストなどを意味している。
「API-Bridgeはユーザー・インターフェースも理解しやすく、とくに支障もなく開発を進められました。課題となったのは、Apexを利用した機能開発における標準化でした」と、明石健太氏(経営戦略本部 経営・事業支援部 情報企画課)は指摘する。

情報企画課は現在、6名の人員を擁している。そのなかの1人は外部ベンダーからの常駐スタッフで、今回の開発はそのスタッフが1人で担当した。ただし今後は、情報企画課のスタッフ全員がメンテナンスや追加開発を担当できるようにするため、開発の標準化が求められた。今回はSalesforceの標準機能であるカスタムメタデータを活用することでシステム全体の標準化を図ったが、この設計には多くの施行錯誤が必要となったようだ。
また技術的なポイントとしては、Salesforceの項目とSQLのマッピング情報をカスタムメタデータに持たせたことが挙げられる。これにより新しい項目を追加する際、Apexによるプログラム改修が不要になり、高いメンテナンス性を実現できたという。
今年6月の本稼働以降、同社では次のような導入効果・業務改善効果を確認している。
最も注目されるのは、最新の在庫情報をリアルタイムに参照できるようになったことである。またAPI-Bridgeにより、SalesforceとIBM i間の処理がシンプルになったことで、運用や保守が効率的に実施できるようになった。
本来はSalesforce上で受注承認まで完結させることに目標を置いていたが、現時点では基幹システムとのリアルタイム連携の段階にとどまっている。しかし今後は業務のさらなる効率化を目指すため、社内LANに接続せずとも(基幹システムが稼働しているIBM iは社内LANに接続されており、そこにアクセスしないと利用できない)、クラウド上で受注業務を完結できる環境を目指す。
またAPI連携処理の更新機能を強化し、処理速度の向上を計画している。これにより、今以上にスムーズなデータ連携が期待される。
このほかSalesforceのデータローダーや手作業で行っているデータ反映作業を順次API連携に置き換えていく予定である。近日中に、Salesforce側で入力したデータを基幹システム側へマスターデータとして登録可能にする連携もAPI-Bridgeで実現する予定である。
さらに経理システムなど、Salesforce以外のシステムとIBM iとのAPI連携も視野に入れている。同社内には多種多様なシステムが稼働しており、IBM iとの連携を必要とする対象システムは数多い。
Salesforceを大規模改修し、基幹システムとリアルタイム連携することで、社内DXを推進するという目標に向けて、同社は着々と前進しているようだ。

[i Magazine 2025 Autumn号掲載]







