株式会社東郷製作所
本社:愛知県愛知郡
創業:1881年
設立:1947年
従業員数:870名(2024年)
事業内容:ホースクランプ、板ばね、リターンスプリング、弁ばね、圧縮ばね、クイックコネクタ、樹脂ばね、電動化関連商品などの製造・販売
https://www.togoh.co.jp/
開発生産性の向上を目指しLANSAを選択
東郷製作所は、愛知県東郷町に本社を置く。「ばねの東郷」と称されるように、自動車向けを中心にした各種の小型・精密ばねを製造している。
主力製品は、車内のパイプとホースを固定するばね部品「ホースクランプ」で、国内で約70%、海外でも約30%のシェアを誇る。このほかにも、自動車のエンジンおよびトランスミッションに使う圧縮ばねや組立品など、多彩なばね製品を製造している。
また最近は板材や樹脂材などの固有技術、要素技術を組み合わせ、電子関連部品の開発にも力を注いでいる。
1881年(明治14年)の創業から、2021年には創業140周年を迎えた。このときから10年後、つまり創業150周年を迎える2030年には、さらなるグローバルブランドの確立と売上の10%向上を目指し、「TOGO 2030」と呼ばれる経営ビジョンを打ち出した。
これに向けて2023年11月には、DXグランドデザインプロジェクトが始動した。各部門の業務課題を洗い出し、解決策を追求し、会社全体の業務改善を実現する全社プロジェクトとして展開している。どういった形で実現するかによらず、ITが重要な手段となるのは間違いなく、同社のIT部門であるTPS・デジタル推進部は、このプロジェクトで重要な役割を果たしている。
同部は現在、3つの課で組織されている。IBM i上で稼働する生産・販売・在庫管理といった基幹システムの開発・保守・運用およびネットワーク管理などを担うシステム課、製造部門のIT化を担当するデジタル推進課、そして今年4月に発足し、トヨタ生産方式に基づくモノづくりをシステム的に支援するTPS推進課の3つである。
このなかで、IBM iの開発・保守・運用を担当するシステム課が、RPGと並ぶ開発手段として、「Visual LANSA」(ランサ・ジャパン)を導入したのは、創業140周年を迎える2021年のことであった。
同社におけるIBM i運用の歴史は、システム/38を導入した1985年ごろまで遡る。基幹システムはRPG Ⅲで開発していたが、最近は主要なRPG ⅢプログラムをILE RPGへ変換するなど、今後に向けた環境整備に余念がない。
ただしWebアプリケーションの開発には、これまでJavaScriptを使用していた。社内に多く稼働する5250画面のWeb化、あるいは新規のWebアプリケーションなどをJavaScriptで開発していたのだが、これが開発の効率化を妨げていたと、後藤秀斗氏(システム課)は次のように語る。
「我々はRPGで育ってきたので、どうしてもJavaScriptやHTML、CSSなど、新しい技術の習得がいくつも求められるような開発言語は使いづらいというか、効率的に開発を進められないでいました。そこでより高い開発生産性を目指して、ローコード開発ツールの導入を考えたわけです」

代表的なローコード開発ツールを比較検討し、最終的にはLANSAの導入を決めた。
「採用理由は、LANSAがPCサーバーではなくIBM i上で開発・運用できることと、RPGと同じような考え方で開発を進められることでした。今まで利用部門からの要望に、RPGできめ細かく対応してきたので、それと同じように柔軟かつ迅速にサポートできる点も魅力でした」と、語るのは、足立芳宏課長(システム課)である。

新旧のWebアプリケーションを
LANSAで開発
現在、TPS・デジタル推進部は部長と副部長をはじめ、システム課に8名、デジタル推進課に8名、TPS推進課に3名と、合計21名の人員を擁し、内製での開発体制を目指している。開発生産性の高さは、今後の計画を考えるうえでも重要な鍵であり、それがLANSAの採用につながったようだ。
LANSAによる開発の先頭に立ったのは、後藤氏である。まずシステム課の開発者全員がランサ・ジャパンのトレーニング講習に参加。導入後すぐに後藤氏が、すでにJavaScriptで開発していた会議室予約システムをLANSAで再構築することになった。
「初めての開発でもあり、まずランサ・ジャパンにサンプルプログラムを作成してもらい、それをベースに開発を進めました。ほかの作業との兼務でしたが、1人で2カ月もかからなかったと記憶しています。体感で言うと、JavaScriptに比べてLANSAでは開発時間が3分の1程度に短縮された印象です」(後藤氏)
LANSAで開発するWebアプリケーションは大きく2種類ある。1つは、JavaScriptですでに開発していたWebアプリケーションを再構築していくこと。もう1つは、新規のWebアプリケーションを開発することである。
その後、後藤氏を含む数名のスタッフで、EPA(経済連携協定)に対応した関税管理システムなど、新旧のアプリケーション開発を進めていった。現在は、新規の開発/既存の再構築を含めて、14システムが完成している。
さらに、昨年からは製造実績収集システムの開発も進んでいる。これは生産現場でタブレット端末を活用し、製造実績データを入力していく同社の中核システムの1つで、厳密な原価管理システムを実行するうえでの基礎データとなる。
同システムは、2024年夏に本稼働を迎えて以降、現在も機能強化が続いている。
「当社では製品によって、それぞれの生産現場からの要望が異なります。製造実績収集システムについては、共通機能を集約させた一種のパッケージのように開発し、生産現場固有のニーズに対しては、対応モジュールを入れ替えるような形で開発を進めています」(足立氏)
同社では既存アプリケーションの保守やバッチ型処理、画面を1つ追加するなど比較的小規模な開発はRPGで継続する一方、新規のアプリケーションはLANSAで開発していく方針である。また外部ベンダーにC#での開発を依頼し、IBM iと連携しつつ、オープン系サーバーで稼働するWebアプリケーションなども、今後はLANSAで再構築したいと考えている。
システム課では、若い世代の技術者を育成しており、新入社員はまずRPG、次にLANSAを学習させて、バイリンガルでの開発を可能にしていく方針だ。
冒頭で記したように、同社では「TOGO 2030」に向けた全社プロジェクトの下、大規模な業務改革が進行中である。それに伴い、中核となる原価管理システムと生産計画システムの刷新も予定されており、それに向けた検討が重ねられている。
自社要員での開発生産性を高め、内製開発を強化する。RPGとLANSAの併用で、それを可能にする体制を確立していくようだ。

[i Magazine 2025 Summer号掲載]