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組織に所属するLGBT+当事者5474人を調査、デロイトが発表 ~日本では約10%が「よりLGBT+インクルージョンが進んだ組織」への転職を検討中

デロイト トーマツ グループは7月31日、日本を含む世界13カ国のさまざまな業界・組織に属するLGBT+当事者5474人を対象にした調査報告書「LGBT+ Inclusion @Work:A Global Outlook」の日本版を発表した。

「当事者を対象に、職場で当事者が日々直面する現実や、組織における取り組みがどのように機能しているかなどを把握し、組織が抱える課題を示すことを目的として行ったもの」という。

調査はオンラインと1対1の対話による方法で、2023年1月~2月に、オーストラリア、ブラジル、カナダ、中国、フランス、インド、メキシコ、オランダ、ポーランド、南アフリカ、英国、米国、日本の13カ国で実施。日本では425人のLGBT+当事者が回答した。

日本の回答者の属性 ~40代以上が64% 

日本の回答者425人の属性は以下のとおり。回答者の8割が「フルタイムで勤務」している。

●年代
・Z世代またはミレニアル世代:36%
・40歳以上:64%

●セクシャリティ
・ノンバイナリー/ジェンダークィア:2%
・アセクシュアル:71%
・バイセクシュアル:12%
・パンセクシュアル:9%
・レズビアン:1%
・ゲイ:5%

日本の組織における取り組み状況 ~当事者にとって十分なレベルには程遠い

所属組織のLGBT+インクルージョンへの取り組み状況について、「組織内・組織外ともに取り組みを行っている」と回答した割合は、日本は5%(グローバル35%)。「組織内・組織外ともに取り組みを行っていない」は、日本90%に対してグローバル43%という結果だった。日本の状況は「当事者にとって十分なレベルには程遠い」と調査報告書はコメントしている。

よりインクルーシブな組織への転職意向 ~7%が転職を検討中

「よりインクルーシブ(LGBT+な組織」への転職について考えを聞いた設問では、

・「所属組織が、LGBT+インクルージョンに全く注力していないため」転職を検討中:4%(グローバル15%)
・「所属組織のLGBT+インクルージョン施策は自身が望むレベルに達していないため」転職を検討中:3%(グローバル19%)

という意向で、それ以外は以下の結果だった。

・転職は考えていない:49%(グローバル52%)
・どちらともいえない:40%(グローバル12%)

日本では10%弱のLGBT+が、所属組織のLGBT+インクルージョンへの取り組み不足(不十分)を理由に転職を検討中という結果である。

転職を考える際に重視するポイント ~第1位は「多様な人材が働いていること」

日本のLGBT+当事者が「転職を考える際に重視するポイント」の上位項目は、次のような結果となった。全回答者と、ミレニアム世代(20~30代)、X世代(40~50代)の世代別に回答を整理している。

トップ3は共通で以下が挙げられている。

・多様な人材が働いていること
・LGBT+インクルージョンに関する、組織内での取り組み(例:Employee Resource Group (ERG) など)
・LGBT+インクルージョンに関する、組織外での取り組み(例:プライドイベントやパレードへの参加)

職場でのカミングアウトを妨げる要因 ~35%が「職場でプライベートの話をしたくない」

「職場でのカミングアウトを妨げる要因」として、図表のような多様な要因が挙げられている。そのうち日本のトップ3は、以下の通りである。

・職場でプライベートの話をしたくない
・差別や嫌がらせを受けるのではないかと懸念している
・リスペクトをもって対応してもらえないのではないかと懸念している

職場でセクシャリティをオープンにする対象 ~抵抗はあるが「親しい同僚」「CEOなどの経営陣」にオープンしようとしている

しかし、前掲のような「カミングアウトを妨げる要因」状況がある一方、「抵抗はあるがオープンにしようとしている」LGBT+も少なからずいる。

以下は、「職場でセクシャリティをオープンにしている」対象者別の回答結果である。日本では35%が「親しい同僚」に、26%が「CEOなどの経営陣」に、「抵抗はあるがオープンにしようとしている」という結果になっている。「CEOなどの経営陣」については、「抵抗がなくオープンである」は11%にとどまっており、LBGT+はCEOなどの経営陣へのオープンに「抵抗を感じている」状況が読み取れる。

性的指向・性自認に関する社会の関心の高まりを背景として、誰もが働きやすい職場環境を実現していくことが、国をあげて重要な課題となっている。また、LGBT+インクルージョンへの取り組みは、優秀な人材を確保でき、従業員の生産性を向上させるなど複数のポジティブな影響があるとされている。

今回の調査報告書は、その現状が“道半ば”であることを示す内容で、示唆に富むと言えるだろう。

・調査報告書「LGBT+ Inclusion @Work:A Global Outlook」の日本版
https://www2.deloitte.com/jp/ja/pages/about-deloitte/articles/news-releases/nr20230731.html

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