新型コロナの経験は、DX実現への推進力になる ~日本情報通信・須崎吾一氏に聞く

須崎 吾一氏

日本情報通信株式会社
代表取締役 副社長執行役員
デジタルイノベーション本部 特命担当

 

 

 

コロナ対策の取り組みは
3つの柱で推進

i Magazine(以下、i Mag) 日本IBMから日本情報通信へ移られて、現在の職責に着任されてから約4年ちょっとですね。職掌の1つにあるデジタルイノベーション本部はどのような役割のある部門ですか。

須崎 デジタルイノベーション本部では主に、社内の仕組みをデジタル化していくことがミッションです。当社では2年ほど前から、自社で実際にソリューションやサービスを利用し、使い勝手を検証して、その経験をベースにお客様へご提案、ご提供していくことを基本戦略の1つに掲げています。

 たとえば直近では、2018年にセキュリティ環境やそのためのソリューション&サービスを自社に適用し、その経験からお客様に最適なセキュリティ対策をご提案するようになりました。また2019年4月には、受注から請求までの基幹システムを刷新したり、今年に入ってからはコミュニケーション基盤をNotes/DominoからG Suiteへ移行したりして、その経験を新たなご提案に役立てています。つまり社内の仕組みや業務をデジタル化し、その経験をお客様への提案に活かしていけるように推進することが、デジタルイノベーション本部の役割です。

i Mag 新型コロナウイルスの拡大に対して、日本情報通信ではどのように取り組んでいますか。

須崎 コロナ禍に向けた社内の取り組みには、大きく3つの柱があります。1つはテレワークを基本に社員の働き方を変革し、そのために必要な環境やツールは何かを見定め、整備していくことです。当社では3月後半から着手し、4月に緊急事態宣言が発出されて以降は全面的にテレワークへ移行しました。社内ミーティングはもちろん、お客様とのやり取りもすべてオンラインで進めています。

 ただしその場合でも、テレワーク率は75%でした。言い換えると、25%の社員は出社せざるを得ない仕事を抱えていたわけです。そこで出社しなければ遂行できない業務とは何か、どのような業務プロセスがテレワークを妨げる障害となっているか、どのような環境整備あるいはツール導入を実行すれば、それらの課題を解消・解決できるかについて調査・検討し、社内業務のさらなるデジタル化に着手しました。これが2つ目の取り組みです。

i Mag 具体的にはどのような業務を対象にしたのですか。

須崎 まず検討対象に挙がったのは、紙の文書と押印です。これには社内文書はもちろん、お客様とやり取りする契約書や請求書などの文書も対象となりました。お客様の会社でも、ご担当者が出社できない状況にあるわけですから、同様のお悩みをおもちです。そこで1つ1つのケースを検討し、デジタル化を適用できないか検討することになりました。

 たとえば稟議書など当社の承認プロセスでは、ワークフロー化をより一層進めるとともに、現場への権限委譲を拡大し、何人もの承認ルートを得なくても、現場の責任者の判断で業務を進められるようにプロセスを改善しようとしています。出社しないから、実際に会えないからという理由で、承認・決済が遅れないように、こういう状況だからこそスピード感を高められるようにしたいと考えています。

 

コロナ禍がおさまっても
働き方の選択肢を充実させていく

i Mag  3つ目の取り組みは何ですか。

須崎 コロナ禍に直面して、社員1人1人がテレワーク環境のなかで何を感じ、何を必要としているかを迅速に把握できるように社内アンケートを開始しました。これには独SAP社のグループ企業となったクアルトリクスが提供している、社員が抱く会社と事業への理解と共感、および貢献意欲を調査・測定する「Qualtrics EmployeeXM」というツールを使用しています。今年8月に初めての社員アンケートを実施しており、今後も定期的に調査していく予定です。以前は外部の調査機関に依頼して、2年に1回程度の頻度で社員満足度調査を実施していたのですが、それでは社員の意識や意向をリアルタイムに調査するのは難しいと考え、このようなツールの利用を開始しました。

i Mag 社内アンケート調査では、何が見えてきましたか。

須崎 当初、テレワークに起因する社員の健康状態や精神状態の悪化を懸念していました。しかしアンケート結果からは大きな問題は見えず、思っていたよりも環境に慣れるスピードが速いようで、その点は安心しました。ただ新入社員など、一部の社員は孤立感・孤独感を感じているようなので、マネージャーにはタイムリーにアドバイスするなど、丁寧にケアするように指示しています。それからこのアンケート結果からは、テレワークで働ける環境や道具が自宅に不足している状況も明らかになりました。そこでまず、デスクや椅子、ネットワーク機器やモニターなど、必要な備品を貸与するプログラムをスタートさせました。

i Mag テレワークを基本とする働き方は、コロナ禍がおさまったあとも続ける予定ですか。

須崎 続けていきます。当社ではここ数年、働き方改革の一環として、またデジタルトランスフォーメーション(DX)への試みとして、そしてオリンピック開催時のテレワーク推進を想定して、さまざまな形で業務プロセスの改善に取り組んできました。それがコロナ禍を受け、推進スピードが一気に加速したように思います。

 さまざまな企業が、DXに向けて各社各様に取り組んできましたが、必要性は理解していても、なかなか思い切って前に踏み出せない状況があったと思います。それがコロナ禍に直面し、新しいノーマルや新しい働き方について真正面から考えざるを得なくなりました。ずっと考えてきたDXへの取り組みに対して、今回の事態が強く背中を押していると考えられます。

 私たちは、たとえコロナ禍がおさまったとしても、テレワークをはじめとする働き方の選択肢をなくすつもりはありません。業務の生産性向上やプロセス改革を前進させていくつもりです。また同じ課題を抱えておられるお客様に対して、私たちの経験をベースにしながら、最適なご提案をしていきたいと考えています。

[i Magazine 2020 Autumn(2020年10月)掲載]

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