IBM Rational Development Studio for i
Application Development Toolset(ADTS)の6つのツール
Rational Development Studio for i(5770-WDS)オプション 21のApplication Development Toolset(ADTS)で提供されている6つのツールがサポート終了となる。
ADTSに含まれているソース・エントリ・ユーティリティー(SEU)、プログラミング開発マネージャ(PDM)とインタラクティブ・ソース・デバッガ(ISDB)は引き続きサポートされている。ただし、2008年以降、機能強化はされていない。SEUでは、フリーフォームRPGの構文チェックなどの機能拡張がなされておらず、RPGのエディタとして、Rational Developer for i、Visual Studio CodeのCode for IBM iの利用を推奨している。
今回、サポート終了となったADTSの6つのツールの代替機能の概要とIBM i 7.6の対応は図表7の通りである。

ここからは、それぞれのツールの詳細について紹介する。
◎報告書設計ユーティリティー(RLU)
役割:メンバー・タイプがPRTF(印刷装置ファイル)のメンバーを、ソースではなく報告書のイメージを表示しながら、編集できる(図表8)。

後継製品:Rational Developer for iのレポートデザイナー(設計モード)。メンバー・タイプがPRTFのメンバーをクリックすると、レポートデザイナーの画面が表示され、報告書の完成イメージを確認しながら編集できる(図表9)。

◎画面設計機能 (SDA)
役割:メンバー・タイプがDSPF(表示装置ファイル)のメンバーを、ソースではなく画面イメージを表示しながら編集できる(図表10)。

後継製品:Rational Developer for iのスクリーンデザイナー(設計モード)。メンバー・タイプがDSPFのメンバーをクリックすると、スクリーンデザイナーの画面が表示され、画面の完成イメージを確認しながら編集できる(図表11)。

◎ファイル比較および
組み合わせユーティリティー (FCMU)
役割:ファイル比較の機能では、2つ以上のデータ物理ファイル、ソース物理ファイルのメンバーを比較し、その違いを識別し、結果を表示する。組み合わせは、ソース物理ファイルのメンバーで使用でき、複数のバージョンの同期が必要な場合、比較の出力を取得し、違いをベース・ファイルに統合できる。
後継製品:Rational Developer for iの比較機能、コピー機能。ソース物理ファイルの2つのメンバーを選択し、右クリックし、メニューから比較を選択すると、2つのメンバーが左右に表示され、違いを表示できる。さらに、比較内容を確認し、競合しない変更をコピーできる。ただし、データ物理ファイルのメンバーの比較機能はない。
比較機能の後継製品として、Visual Studio Codeの比較機能も使用できる。ソース物理ファイルの2つのメンバーを表示、2つのタブを選択し、右クリックし、メニューから「選択項目の比較」を選択すると、2つのメンバーが左右に表示され、違いが表示される。ただし、こちらもデータ物理ファイルのメンバーの比較機能はない(図表12)。

◎拡張プリンター機能 (APF)
役割:拡張プリンター機能(APF)は、IBM 5224および5225ワークステーション印刷装置で使用する印刷機能を提供する(図表13)。

後継製品:拡張印刷機能(APF)の直接的な後継製品はない。IBM 5224および5225ワークステーション印刷装置での拡張された印刷機能として使用されるため、 現在は使われていないと考える。
◎文字作成ユーティリティー (CGU)
役割:特殊文字、漢字を新規ユーザー定義文字として登録する(図表14)。

後継製品:IBM iでの直接的な文字作成ユーティリティーの後継製品はない。後継製品ではないが、ユーザー定義文字(外字)を減らす方法として、文字セット環境を「CCSID 1399」へ移行する方法がある。「CCSID 1399」は、EBCDICのCCSID 5035/939を拡張する形で定義され、JIS第三、第四水準文字やNEC選定文字(丸で囲まれた1、“①” など)が追加されている。使用されている外字がCCSID 1399で拡張されている文字のみであれば、CCSID 1399の利用も代替策の1つとなる。
また、現在のIBM iの機能では、CGU外字ではなく、Windows外字を使用していることが多い。そのため、Windows外字があれば、表示や印刷、他システムとのデータ送受信の運用が可能と推測される。しかし、利用している可能性もある。2025年5月現在、CGUで作成されたIBM i上のCGU外字を利用している機能は限定的であり、図表15を参考にCGU外字が必要かの確認、またテストの実施を検討いただきたい。

◎データ・ファイル・ユーティリティー(DFU)
役割:プログラミング言語を必要としないデータ入力・照会を行うプログラム開発を支援する(図表16、図表17)。


後継製品:SQLなどのプログラミング言語、たとえばACSのSQLスクリプトの実行(図表18)やVSCodeのDb2 for IBM i(図表19)、RPG/COBOLでの同等プログラムの開発、サードパーティー製の同等機能製品など複数の代替策がある。


IBM i 7.6では、STRDFUコマンドのオプション1と5は、IBM i 7.5以前と同様に使用可能である。ただし、オプション2、3、4はIBM i 7.6では削除されている(図表20)。IBM i7.5までのDFUプログラムやUPDDTAコマンドは従来どおり使用できるが、DFUプログラムの新規作成や定義修正ができないため、代替方法の検討が必要となる。

Merlin 1.0.0
RDi 9.6
IBM i Modernization Engine for Lifecycle Integration(以下、Merlin)1.0.0は、2024年5月7日付で営業活動終了、2024年9月30日付でサポート終了となった。後継製品は、Merlin 2.0.0である。Merlin 2.0.0では、Visual Studio Codeとの互換性がある統合開発環境となり、Code for IBM iの拡張機能が利用できるなど機能拡張がなされている。
IBM Rational Developer for i(RDi)9.6は、2024年8月5日付で営業活動終了、2025年4月30日付でサポート終了となった。RDi 9.6 RPG and COBOL Tools Editionの後継は、RDi 9.8 RPG and COBOL Tools Editionがある。ただし、Modernization Tools、Java Edition は、V9.6で終了となっているので注意してほしい。IBMのJava開発ツールとしての後継製品は、IBM Rational Application Developer for WebSphere 9.7である。
将来的に必要になる
後継製品や代替策への移行
今回、紹介した機能はサポート終了となるが、現行の環境で今すぐに使えなくなるわけではない。ただし、IBM i 7.6以降では提供されない機能やコマンドがあり、将来的には後継製品や代替策への移行が必要となる。
まずは現行資産の棚卸しを実施し、どの機能を使っているかを確認してほしい。その後、使われている頻度やリスクなどから優先度をつけて、代替機能を選定し、段階的な移行を考える必要がある。
その際、RDiやSQLのスキル習得などが求められる。IBMでは、昨年からIBM iリスキリング・カレッジやテクニカル・セミナーなどを開催している。今年もすでに開催が予定されており、ぜひ参加いただきたい。また、新しい製品や機能への移行の際にIBMやパートナー企業と連携して、相談いただければ幸いである。
[i Magazine 2025 Summer号掲載]

著者
児玉 尚子氏
日本アイ・ビー・エム株式会社
テクノロジー事業本部
IBM Power テクニカルセールス