IBM iの開発において、PDM/SEUに代わるツールがVSCode + Code for IBM iであることはイメージしていただけただろう。
それでは、生成AIツールについて話を進めていこう。2025年5月時点で開発に利用可能なツールはVSCodeの拡張機能として提供されているものが多く、そのツールに慣れておくことがIBM iの開発でとても重要になってくる。紹介するのはすべてVSCodeで稼働するツールだ。VSCode + Code for IBM i + 生成AIツールという組み合わせがどのようなものか、皆さんに興味を持ってもらえるように話を進めていきたい。
では、生成AIツールの仕組みの解説から始めよう。
LLM(大規模言語モデル)
皆さんがふだん生成AIを使う際のインターフェースは何だろうか。おそらく多くの人がブラウザ経由でチャットができるサイトにアクセスして、自然な日本語で質問し、回答をもらうというのが一般的だと思う。
よく使用されるサービスは以下の3種類ではないだろうか。
・ChatGPT(OpenAI)
・Gemini(Google)
・Claude(Anthropic)
上記はあくまでインターフェースであり、そこで入力された質問は裏側の大規模言語モデル(Large Language Model:以下、LLM)が処理する。LLMにはいろいろな種類がある。代表的なものを列挙してみよう(2025年4月29日現在)。
図表6のLLMはクローズドなモデルであり、限られたインターフェース(提供されたWebインターフェースおよびAPI経由)でしかアクセスできない。無料で利用可能なモデルもあるが、セキュリティを担保したうえで業務で本格的に使用するには、有償版が必要な場合が多い。

LLMにはオープンなものも数多く存在する(図表7)。

ローカルLLMを利用するにはハードウェアを自前で用意(クラウドサービスでもよい)して運用することになる。クローズドのLLMに比べると、セキュアな環境でさまざまなことを行うことが可能である。
最新のモデルを使用して本格的に運用するには、やはり各社が提供するクラウドサービスを使うのがベストだろう。ローカルLLMはPCでも稼働可能な小さなモデルもあるので、テスト的に使用するにはこちらも検討対象となるだろう。
余談だが、IBMが開発を進めているIBM watsonx Code Assistant for i(旧RPG Code Assistant)も最初はクラウドサービスとして提供されると思う。
VSCodeから
生成AIサービスを利用する
2023 Summer号で書いた「検証 ChatGPT」では、LLMとしてはGPT-4(2025年4月30日で提供終了)を用いて以下を行っている。
・ILE RPGの概要説明
・テーブルを作成するSQL文の生成
・テーブルにレコードを追加するSQL文の生成
・プログラムの簡単な仕様を渡してRPGプログラムの生成
2023 Summer号やi Magazineサイトの記事を参考にしてほしいが、検証はWebインターフェースを使用して質問し、回答もそのインターフェースに表示されるところまでだったので、たとえば生成させたRPGプログラムを検証するには、そのコードをコピーしてVSCodeに貼り付けるなどの手間がかかっていた。この手間を省ければ、開発生産性はさらに向上するだろう。
今回のテーマは、「VSCodeと生成AI連携」。VSCodeにインストールした生成AIツールが、VSCodeとLLMとの橋渡しをどのように行い、この手間を省いてくれるのか。代表的なツールを通して検証していこう(図表8)。

LLMにVSCodeからアクセスする際に必要な拡張機能(AIコーディング・アシスタント)はたくさんの種類があるが、今回はクローズドのLLMにアクセスするものと、ローカルで稼働するLLMにアクセスするものをそれぞれ紹介する。使用するツールは以下である。
・GitHub Copilot
・Continue

著者|
小川 誠 氏
ティアンドトラスト株式会社
代表取締役社長 CIO CTO
1989年、エス・イー・ラボ入社。その後、1993年にティアンドトラストに入社。システム/38 から IBM i まで、さまざまな開発プロジェクトに参加。またAS/400 、IBM i の機能拡張に伴い、他プラットフォームとの連携機能開発も手掛ける。IBM i 関連の多彩な教育コンテンツの作成や研修、セミナーなども担当。2021年6月から現職。
[i Magazine 2025 Summer号掲載]
特集 VSCode+生成AIで加速するIBM i開発
PART 2 VSCode + Code for IBM i復習
PART 5 Continue + Graniteを使ってみる
PART 6 SEUからVSCodeへの移行ロードマップ
PART 7 Code for IBM i+生成AIの次に来るもの