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IBM i市場に新風、「Project Techno-Cube」が目指すもの | 金澤 廣志氏(アイエステクノポート)× 深井 淳氏(クレスコ・ジェイキューブ) ~製品化の第1弾、IBM i上で稼働するデータ活用ツールを発表へ

アイエステクノポートとクレスコ・ジェイキューブは2024年2月から、「Project Techno-Cube」という名の協業パートナーシップをスタートさせた。
IBM iソリューションで高い実績を誇るアイエステクノポート。
クレスコ・グループ3社の統合で誕生したクレスコ・ジェイキューブ。
IBM i市場の活性化に向けて、この協業が生み出す成果はなにか。両社のトップがその狙いと計画を語る。

 

金澤 廣志氏
株式会社アイエステクノポート
代表取締役社長

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深井 淳氏
株式会社クレスコ・ジェイキューブ
代表取締役社長

Project Techno-Cube
誕生の背景

i Magazine(以下、i Mag) アイエステクノポートとクレスコ・ジェイキューブは2024年2月から、「Project Techno-Cube」(プロジェクト テクノキューブ)という名の協業パートナーシップをスタートさせました。「テクノキューブ」は両社の名前をミックスさせたネーミングで、今回の協業を象徴していますね。まず協業に至った背景から教えてください。

金澤 IBM i市場の活性化に向けて、両社いっしょに何かしたいとずっと話していたのですが、今回の協業が具体的な議題として進みだしたのは2023年12月からでした。

深井 そうでしたね。そのあたりから具体化に向けて密接に、かつ頻繁にディスカッションを重ねるようになりました。クレスコ・ジェイキューブは、2022年7月1日にクレスコ・グループの3社、すなわちアルス、エヌシステム、ネクサスが統合合併して誕生しました。それから1年以上が経過して、統合に伴う処理や業務、体制づくりがやっと落ち着き始めたので、具体的に動き出す余裕が出てきたという感じでしょうか。

金澤 前身のアルス時代からIBM iビジネスに注力していることは知っていましたが、新たに誕生したクレスコ・ジェイキューブも、IBM iビジネスに積極的に取り組んでいくのを知ってうれしかったです。IBM i市場を盛り上げていく頼もしい仲間が増えた印象ですね。

アイエステクノポートはIBM iの世界で長くビジネスを展開し、IBM i向けのアウトプットソリューションである「UT/400-iPDC」など実績も築いてきたので、それなりに当社を存じていただいているお客様も多いのですが、クレスコ・ジェイキューブはまだ誕生したばかりで、ご存じないお客様もおられるように思います。これほどIBM iビジネスに注力している会社であることを、ぜひ多くの皆さんに知っていただく狙いもあって、今回の協業では当社のこれまでのマーケティングノウハウを活かしながら、クレスコ・ジェイキューブの知名度向上にもお役に立ちたいと思っています。

金澤 廣志氏

深井 ありがたいですね。3社の統合後にあらためて、当社としてのIBM iビジネスを検証しました。もともとアルスはIBM iビジネスを中心に展開していましたし、エヌシステムとネクサスにも、IBM iを利用されるお客様が多くおられます。その3社の力を合わせると、IBM iの技術者が70名を超えるなど人的リソースが豊富で、これはビジネスの大きな推進力になると考えたわけです。そこでIBM iビジネスを中核業務の1つとして位置付けることに決定しました。今年4月からはそれに沿って、IBM iビジネスにより強みを持つ新しい部門を立ち上げるなど、組織改革にも着手する予定です。

金澤 日本IBMが提供していた「iSeries Site」向けのサービスをクレスコ・ジェイキューブが引き継いだことで、IBM iユーザーのお客様がさらに増えたことになりますね。

深井 そのとおりです。それがIBM iビジネスに一層注力する1つのきっかけになりました。当社では2023年7月から、それまで日本IBMが運営・提供してきた「ケア・サービス for iSeries Site」を引き継ぎ、あらたに「J CUBEケアサービス」としてスタートさせました。iSeries SiteはIBM i上で人事・給与・経理・ワークフローなどの業務を運用する多くのシリーズで構成されますが、J CUBEケアサービスはそのスムーズな運用に向けて、法改正への対応や機能強化、利用者からのお問い合わせ、サービスメニューの最新情報や各種セミナーのご案内などを提供するサービスです。今後はiSeries Siteを含む多くのお客様に向けて、業務アプリケーションの開発・運用・保守、ソリューション製品の開発・販売、DXの提案、そしてJ CUBEケアサービスの提供など、全方位のサービスを展開していく計画です。それに関して、IBM iの卓越した技術力を誇るアイエステクノポートと協業できればと考えたわけです。

金澤 当社はアウトプットソリューションのUT/400-iPDCを筆頭に、IBM iの開発支援やデータ活用に向けた多彩なミドルウェア製品を開発・提供してきました。IBM iに関する技術力やノウハウには自信がありますが、逆にオープン系のWebアプリケーション開発などに関するノウハウはまだまだだと認識しています。そのあたりはクレスコ・ジェイキューブに多くのノウハウがあるので、お互いの強みを活かすことで、ソリューション開発や提供サービスの幅が大きく広がるのではないかと期待しています。

i Mag アイエステクノポートでは今までも、多くのアライアンスパートナーと協業してきましたね。

金澤 そうですね。UT/400-iPDCでは、スプールファイルから生成したPDFを、プリントサーバーやプリンタセッションを経由せず、IBM i からダイレクトに指定メーカーのレーザープリンタや複合機などに印刷する「UT/400-iPDC ダイレクト印刷オプション」をご提供しています。そのため富士フイルムビジネスイノベーション、キヤノンマーケティングジャパン、コニカミノルタジャパン、理想科学工業、リコーなど代表的なプリンタメーカーとアライアンスを組んできました。

またプリンタだけでなく、コクヨが提供するFAX送信/ファイル送信のクラウドサービスである「@Tovas」、NTTビジネスブレインズの統合型電子データ保管サービス「ClimberCloud」、日鉄日立システムソリューションズの電子契約・電子取引サービス「DocYou」、JFEシステムズの電子帳票システム「FileVolante」、日鉄日立システムソリューションズの電子帳票システム「Paples」など、多彩なアライアンスパートナーと協業してきました。 

ただしこれらはいずれも特定の製品やソリューションをターゲットにした協業であり、システム開発・保守、ソリューション開発・販売、マーケティング支援など、包括的なパートナーシップを結ぶのは今回が初めてです。

IBM i市場の課題
ベンダーから見える風景とは

i Mag 昨今のIBM i市場について、どのように感じておられますか。

深井 IBMはIBM iに継続的に投資していて、新しい機能を実装したり、最先端テクノロジーを反映させたりして、IBM iを絶え間なく進化させてきました。私は、IBM iがほかに例を見ない強力なビジネスサーバーだと思っていますが、そのことが正確に理解されているかどうかには、少し疑問を感じています。ユーザーの方々が必ずしも最新機能をうまく使いこなしていない、あるいはIBM iの新しい使い方に挑戦していないように見えるのが残念です。メーカー側とユーザー側に立ちはだかる認識のギャップを埋める必要があると、かねてから考えてきました。

深井 淳氏

金澤 ユーザーが新しい機能を知らない、OSが標準で備えている豊富な機能群を使いこなしていないのは、そのための情報が的確に提供されていない点に理由があると思っています。新機能の説明だけだと、従来のユーザーにはハードルが高く感じられるようです。それが、IBM i市場の大きな課題ですね。メーカーやベンダー側にはさらなる情報発信の工夫努力が求められ、ユーザー側では情報収集能力の強化が求められるでしょう。既存資産の継承性はIBM iの最大の優位性ですが、それがある意味では、ユーザーが新しい使い方に目を向けない理由となっているのかもしれません。何も新しいことを取り入れなくても、とりあえず基幹システムは問題なく動き続けてくれるわけですからね。

深井 ユーザー側だけでなく、ベンダー側にとってもそれは課題であるかもしれません。IBM iはベンダー側にとって面倒をみやすい、とてもよいプラットフォームです。でもご指摘のとおり、何もしなくても問題なく動くので、新しい使い方を提案する機会やタイミングを逃してしまう面があると思います。

Project Techno-Cubeによる
今後の戦略と計画

i Mag  Project Techno-Cubeではこれからどのような協業を予定しているのですか。

金澤 まず製品化の第1弾として、今春にIBM i上で稼働するデータ活用ツールの新製品を発表します。サポートが終了した「Db2 Web Query for i」と同様の機能があり、定義も活用いただけます。DXに欠かせないデータの有効活用を狙いにしており、データベースの情報だけでなく、帳票データも同じレベルで活用できる点が今までにない特徴です。ほとんどのユーザーでは最終的な実績データや評価データを管理帳票などで出力している場合が多いので、そのデータをこのツールで再利用できることは大きなメリットとなります。さらに生成・分析したデータをRESTなどのさまざまな方法で、他のシステムと連携することも可能です。

深井 IBM i上のエンジンはアイエステクノポート、ユーザー・インターフェース周辺はクレスコ・ジェイキューブが担当するなど、両社の共同開発で誕生するソリューションです。販売を担うのはクレスコ・ジェイキューブで、当社としては「スマートワークソリューション」「お天気勤怠」に続く、3番目のオリジナルソリューションになります。

金澤 近々、第2弾、第3弾のリリースも予定しています。私は製品のアイデアはいろいろと温めているのですが、当社の開発人員を考慮すると、すぐに開発に取り掛かるのは難しい実情がありました。今後はクレスコ・ジェイキューブとの共同開発で、実現への道筋がはっきりと見えてくるように思います。

深井 共同開発以外にも、Project Techno-Cubeはいろいろな協業を考えています。たとえばUT/400-iPDCなどアイエステクノポートの製品を当社のソリューションと連携したり、ご提案のなかに組み込んだり、iSeries Siteの機能強化に向けてアイエステクノポートの技術を活用するなどですね。またマーケティング施策でも、両社の持ち味を活かしていくことができるでしょう。

金澤 そうですね。両社のサイトをコンテンツ連携したり、メルマガで双方の情報を提供したり、いろいろと考えられそうですね。

深井 これからはIBM iユーザーの方々が今、何に悩んでおられるかを理解し、その解決策を的確にご提案するために、そして業務に真に必要なDX領域の課題解決に向けてご支援していくためにも、Project Techno-Cubeでの成果を活かしていきたいと考えています。

 

[i Magazine 2024 Spring(2024年4月)掲載]