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ソフトウェア取引の買いたたき・減額・支払遅延・やり直し・中抜きの実態、公正取引委員会が「ソフトウェア業の下請取引等に関する実態調査報告書」を発表 

公正取引委員会は6月29日、「ソフトウェア業の下請取引等に関する実態調査報告書」を発表した。資本金3億円以下の法人2万1000社、フリーランスSE、従業員SEを対象にした調査で、法人は4739社、フリーランスSEは540人、従業員SEは1776人が回答した。調査期間は2021年10月~2022年6月。報告書は全102ページ。

報告書は「実態調査の結果」として、以下を挙げている。

・買いたたき、減額、支払遅延など下請代金にまつわる下流しわ寄せ型の問題が起きている。
・不当な給付内容の変更ややり直しなどソフトウェア制作取引の特性にかかわる問題がみられた。
・多くの事業者が不必要な「中抜き」事業者の存在を感じている。
・「中抜き」事業者の存在は、情報伝達の混乱を引き起こしやすくするなど、独占禁止法・下請法違反行為を誘引・助長するおそれがある。
・エンドユーザー・元請・下請間の契約内容が必ずしも明確でない。
・「中抜き」事業者の存在を含む複雑な取引関係を背景として、下請法違反行為が多く発生している。
・下請法の適用対象とならない取引が相当程度存在し、独占禁止法上の優越的地位の濫用として問題となるケースも潜在的に多数存在する可能性がある。

下請法の禁止行為に該当すると考えられる経験について、「経験がある」とした回答の中では「買いたたき」が最も多く(15.7%)、次いで「不当な給付内容の変更」(14.2%)、「下請代金の減額」(13.5%)の順だった。上位3件は、いずれも10%を超える。

下請法の禁止行為に該当すると考えられる経験がある
下請法の禁止行為に該当すると考えられる経験がある

「買いたたき」経験の内訳のトップ3は次のとおり。

・「予算が足りないから」などといわれて、著しく低い金額を一方的に定められた
・「今度、何かの案件で穴埋めするから」との具体性のない約束の下、著しく低い金額を一方的に定められた
・最低賃金の引上げ等に伴い労務費のコストが増加したため、単価引上げを求めたにもかかわらず、一方的に従来通りに単価を据え置かれた

さらに調査対象者からの声として、「エンドユーザーから値引き要請があったので、価格を一律20%下げてほしいなどと言われることは普通にある」「元請事業者の落札価格が低かったことを理由に30%カットされた」「大手元請会社の業績が悪化したことを理由に、その元請会社と資本関係があるわけでもない協力会社の契約単価が一律に10%カットされた」といった、なまなましい実態も紹介している。

買いたたきの経験
買いたたきの経験

下請法では4つの義務と11の禁止事項を定めているが(末尾参照)、元請事業者および下請事業者ともに「知識が十分とはいえない状況」が浮き彫りになっている。全体の約半数(49.0%)が「知識を有しているとはいえない」状況である。

優越的地位の濫用規制・下請法に関する知識
優越的地位の濫用規制・下請法に関する知識

また下請法では、契約内容に関する「書面の交付」を元請事業者・中間下請事業者に義務づけているが、全体の約8割は「常に発注書面が交付される」であるものの、アジャイル開発になると5~6割前後にとどまることが明らかにされている。「ウォーターフォール型の場合と比べると、発注書面で書かれていないことが多かったり、変化が速い等のため、補充書面が交付されなかったりすることが多かった」という回答が38.0%に上っている。

アジャイル開発と発注書面・補充書面の交付
アジャイル開発と発注書面・補充書面の交付

 

報告書では「今後の対応」として、独占禁止法・下請法の執行の強化、「優越Gメン」による立入調査、法令遵守へ向けた普及・啓蒙活動の強化などを提言している。

下請法の4つの義務と11の禁止事項
下請法の4つの義務と11の禁止事項

 

「ソフトウェア業の下請取引等に関する実態調査報告書」目次

第1部 調査の趣旨等

第2部 ソフトウェア業界の概況
第1 市場規模等
第2 多重下請構造と取引階層別状況

第3部 多重下請構造における事業者間取引の実態と問題点
第1 取引依存度
第2 多重下請構造から生じ得る問題点
1 ソフトウェア制作の多重下請構造から生じ得る問題点
2 「中抜き」事業者の存在
3 多重下請構造の今後

第4部 多重下請構造型サプライチェーン下における下請法の義
務・禁止行為に関する調査結果
第1 下請法の義務・禁止行為に係る調査結果(全体)
第2 下請代金にまつわる下流しわ寄せ型の問題
1 買いたたき
2 下請代金の減額
3 支払遅延
第3 ソフトウェア制作取引の特性に係る問題
1 不当な給付内容の変更
2 不当なやり直し
3 受領拒否
第4 発注書面の交付等
1 発注書面の交付状況等
2 アジャイル開発の場合
第5 下請法等の知識とコンプライアンス活動
1 優越的地位の濫用規制・下請法に関する知識等
2 大手事業者のコンプライアンス活動
第6 フリーランスSEへのしわ寄せ等
第7 その他の問題例
1 買いたたき
2 下請代金の減額
3 支払遅延
4 受領拒否
第8 (参考)最近の指導事例

第5部 今後の対応
第1 多重下請構造下で生じる問題への対応強化
第2 不当なしわ寄せ防止に向けた普及啓発活動の対応強化
第3 複雑な取引関係における優越的地位の濫用に関する対応強化

公正取引委員会「ソフトウェア業の下請取引等に関する実態調査報告書」
https://www.jftc.go.jp/houdou/pressrelease/2022/jun/220629_software.html

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