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事例|エフビットコミュニケーションズ株式会社 ~「エフビットでんき」の新電力市場参入をアジャイル開発が支える

「エフビットでんき」の業務システムを
アジャイル開発で実現

2016年4月からスタートした電力小売の全面自由化とともに、エフビットコミュニケーションズは新電力市場に参入した。

「エフビットでんき」のブランド名を掲げ、北海道から九州まで全国19カ所の営業拠 点をベースに、法人向けの高圧電力から家庭・法人向けの低圧電力サービスまで、新電力事業の展開に意欲的に取り組んでいる。サービス開始に先立って、同社では「エフビットでんき」を支える小売電力請求管理システムの構築が大きな課題となった。これは顧客管理をはじめ、電気使用量に基づく請求・入金管理など、一連の業務を支える基幹システムである。

「今までインターネットサービスや高圧一括受電サービスなどでは、国産メインフレーム上でCOBOLにより開発したシステムを利用していました。しかし将来性や拡張性、新しいニーズへの対応を考えると、これ以上メインフレームにプログラムを追加していくのではなく、新規・既存システムともに、共通DBをベースにした新たなプラットフォームへ統合する必要があると考えました」と、管理本部 京都CC(カスタマーセンター)の平田茂寛次長は語る。

平田茂寛氏
管理本部 京都CC 次長

同社はここ17年間で、年商20億円から約100億円規模(2017年3月期)へと成長し、2020年には株式公開を目指している。IPOや今後の事業目標達成には、新しいシステム環境が不可欠と考えられた。そこで将来的な全体構想を視野に入れつつ、 2015年12月、小売電力請求管理システムに向けたプロジェクトが発足した。

「エフビットでんき」の実質的なサービス開始は2016年6月。どんなに遅くとも、同年秋までにはシステムを完成させて請求業務を開始せねばならない。平田氏は電気事業者向けのパッケージ製品からスクラッチ開発まで、さまざまなベンダーとコンタクトし、広範囲に調査を実施した。

「本稼働の最終期限まであまり時間がない ので、ゼロからシステムを開発するのは難 しく、パッケージ製品を使わざるを得ない と思いました。しかし調査を重ねるうちに、パッケージ製品は柔軟性に欠け、カスタマ イズには開発コストが嵩むことが判明し、 将来的なDB統合の視点からも、なかなか採 用に踏み切れずにいました。そんなとき、JBCCからアジャイル開発を提案されたのです」(平田氏)

JBCCが提案したアジャイル開発では、上流工程における要件定義に「Xupper(クロスアッパー)Ⅱ」を活用し、入力した設計情報を「GeneXus」へ連携して、プログラミングレスで自動生成したJavaアプリケーションをPCサーバー上で運用する。利用部門から寄せられるさまざまな要望・要求をまとめ、実際にプロトタイプ画面を確認しながら、運用までを含めたシステムを迅速に構築できるのが特徴だ(図表)。

「GeneXusであれば、スクラッチ開発の ような柔軟性や拡張性を担保できると同時 に、パッケージ導入時と同じように短期間 の構築が可能になると期待できました」と、平田氏は採用の経緯を振り返る。

実質3カ月の
超スピード開発で完成

「Xupper Ⅱ」「GeneXus」に 加 え、「Qanat 2.0」によるシステム間のデータ連携、JBCCのクラウドサービスである「俺のクラウド」を利用してWebでの申し込みや請求明細確認などの機能を提供する会員ポータル、さらにクラウド型のデータ解析ソリューション「Cloud 解析」やファイル共有サービス「box」など、一連の提案を正式採用したのが2016年6月。将来的な統合を見据え、DBには「Microsoft SQL Server」を導入した。

最初に法人向けの高圧請求システムから スタートし、並行して個人・法人向けの低 圧請求システムの開発が進行した。プロジ ェクトには平田氏を含め、「エフビットでん き」の料金管理を担当する4名のメンバー と、JBCC側から3~4名の技術者が参加。毎週2回のミーティングを開催し、約100 機能の開発が、実質3カ月で完了している。

プロジェクトメンバーの1人は、それまでITやシステム構築の経験はま ったくなかったが、「実際に画面を確認し、操作することで要望点を確認し、修正・改 善内容を伝えます。すると次のミーティン グではすぐに形になって修正されており、 画面や操作で確認できます。実際の画面を 前に話し合うと要件や運用の伝達に齟齬が なく、とてもスピーディに開発が進みまし た」と、当時の状況を語る。

ただし際限なく修正要求を繰り返して、開発時間を無駄に長引かせることのないよう、プロトタイプ局面での反復開発は4回で固定化するなどプロジェクト管理を徹底した。

「さらにXupperⅡの利用も評価しています。GeneXusへ設計情報を連携することで、開発工数の削減に役立つだけでなく、その場でフローチャート化することで、早い時点で課題・問題を可視化したり、マインドマップのように考え方を整理するのに効果的でした」(平田氏)

高圧請求システムは2017年10月から順次、稼働を開始し、同年12月までに全面本稼働した。また低圧請求システムのほうは 2017年1月に本稼働を開始し、Webでの申し込みや請求、ポイント管理などの機能を段階的に追加している。

現在同社では今回の開発経験を踏まえ、今後の事業目標達成に向けた直近3カ年の IT活用計画を策定している。その中核に位置するのが「XupperⅡ & GeneXus」である。今後目標としているIPOに向け、同社のIT環境もまた大きな飛躍の時を迎えているようだ。

[IS Magazine No.19(2018年4月)掲載]

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COMPANY PROFILE

エフビットコミュニケーションズ株式会社

本社:京都府京都市東京都中央区
設立:1964 年
資本金:4億2500万円
売上高:93億6000万円(2017年3月)
従業員数:157名(2018年4月)
事業内容:小売電気事業、ESP事業、メガソーラー事業、およびJPS(PBX)、ISP、VOD、CATV(ケーブルテレビ)の各事業

http://www.fbit.co.jp/

電話設備の販売店として創業。集合住宅向けの電話設備や利用料金の管理委託事業を経て、1984年に電話設備とコンピュータを組み合わせた独自の集合住宅向け情報ネットワーク「JPS」の販売を開始した。さらに集合住宅向けのインターネットサービスを提供する一方、2008年から電力関連事業に参入。電気料金を削減できる「高圧一括受電」サービス、太陽光発電など再生可能エネルギーを開発するメガソーラー事業、電力小売サービス「エフビットでんき」などを展開する。