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事例|株式会社トーカン ~基幹系はRPG、Web系はGeneXusで。組織体制と人材教育を考える

基幹系はRPG
Web系はGeneXus

 i Magazine(以下、i Mag) 最初にシステムの運用状況を教えてください。

岩田 当社の導入はシステム/36、システム/38時代に遡ります。2000年問題の対応時に、販売・会計を中心とする基幹システムの全面再構築を実施しました。パッケージ製品などは使わず、外部ベンダーの協力を得ながら、RPGで独自に開発し、改修を重ねながら、現在も利用しています。当時から「卸」という商売の仕組みとそれに必要な機能は大きく変わりませんが、取引先が新たに増えるなど、さまざまな理由でシステムを拡張しており、今も大小含めて毎月30件ぐらいの新規・改修案件が発生しています。

岩田泰往氏
管理統括部 流通システム部 部長

i Mag 開発言語はRPGメインですか。

岩田 当社はずっとRPGⅢメインで開発しており、IBM iではRPGと決めていますが、数年前、WindowsやLinuxなどオープン系環境でWebアプリケーションを構築する際に、いろいろな開発言語やツールを検討しました。JavaやPHPなども考えましたが、RPG以外の開発言語は敷居が高く、当社には向かないだろうと悩んだ結果、Javaのスキル不要でJavaアプリケーションを自動生成する「GeneXus」(ジェネクサス・ジャパン)を採用しました。2012年にGeneXusを導入して以来、基幹系はRPG、Web系はGeneXusという役割分担です。

i Mag システム部門の人員体制はどうなっていますか。

岩田 システム部門に相当する流通システム部は、私を含めて23名体制です。20代が5名、30代が7名、40代が8名、50代が3名います。このなかで設計・開発に従事するのが20代で3名、30代で4名、40代で6名の13名です。あとの10名はインフラ系の運用管理、マネジメントを担当する部課長職、一般業務ですね。このほか外部ベンダーの契約スタッフが5名います。 

 GeneXusを採用してから、組織体制も変更し、現在の流通システム部は業務企画課、システム1課、システム2課という3つの課で構成しています。業務企画課は要件定義やユーザー部門との折衝、インフラ系の運用管理を担当します。システム1課はRPGによる基幹システムの設計・開発、システム2課はGeneXusによるWebアプリケーションの設計・開発を担当します。

i Mag 人材育成はどうお考えですか。

岩田 当社は会社の人材育成方針として、入社後4?5年で部門をローテーションさせています。流通システム部も同様で、開発者として育ったころに他の部門へ異動になることも珍しくありません。各年代の人員バランスが比較的揃っているのも、社内の人材流動と関係していると思います。ITスキルは特殊なので、せっかく開発者として育てても、数年でいなくなるのは正直、痛手です。しかしその一方、ITのスキルを備えた人材が各部門に分散することでシステム部門との橋渡し役になったり、業務知識を備えた人材がシステム部門に配属されることもあり、業務と密接に連携したIT利用を発想できるなどのメリットがあります。

採用された提案の数で
個人の実績を評価する

i Mag 教育はどうしているのですか。

岩田 1名が異動すると、必ずその分を新入社員や異動受入で補充しますが、例外なくIT経験のない、多くは文系の社員を一から教育することになります。現在はシステム1課に配属されたらRPG、システム2課に配属されたらGeneXusと、どちらかを習得させています。どちらの場合もマニュアルやEOLなどで1カ月程度自習し、ベテランをトレーナー役にして、すぐに実践の開発に入ります。ただし教育の狙いはプログラマー育成ではなく、要件定義やシステム設計、業務の組み立てが可能な人材を育てることにあります。言語やツールの習得はあくまでその第1ステップで、重要なのは業務部門とのコミュニケーションのなかで育てていくことです。

 システム部門はユーザー部門からの依頼を受けて動くことが多く、受け身の姿勢になりがちです。でも言われて作るだけでは、なかなか仕事に喜びを見出せません。そこで流通システム部では、ユーザー部門ごとに担当者を決め、部門と会話しながら詳しい業務内容を徹底して学習し、課題・問題点を調べ上げ、その解決策をITで提案するよう奨励しています。提案がユーザー部門に採用されたら、開発に着手するわけです。今は提案した案件の数で個人の実績を評価していますが、ゆくゆくは採用された数で評価したいと思っています。システム経験者が各部門に配置され、かつ各業務の経験者がシステム部門に配属されることは、提案や発想、コミュニケーションという点でうまく作用していくのかもしれません。

i Mag システム開発を社内で担う内製主義の考え方に変化はありましたか。

岩田 ちょうど私が部長に就任した2011年ころ、組織の方針として、アウトソーシングへ移行しようという方向に舵を切り始めました。実際にシステム要員の数を減らし、外注に比重を高めた時期もあったのですが、いくらもたたず内製に戻しました。実際にアウトソースしてみると、スピードやコミュニケーションなどの点で不満が多く、スムーズに運びませんでした。それ以降は、内製化をより鮮明にしています。社内だとやはり、「あうんの呼吸」で業務の理解度が高く、システムに対する思いも異なります。当然ですが、社員であれば、ITで会社に貢献しようという思いが、より緻密なシステム作りにつながっていきます。

i Mag IBM iを使い続けるのに、不安材料はありますか。

岩田 少し前まで、IBM iもRPGも将来的に消滅するのでは、との不安がありました。またベンダーから状況を聞き、RPG開発者は年々減り、外部からの供給が難しくなりつつある現実は理解しています。しかし、そのことについて不安は感じていません。今、目の前に、IBM iという優れたプラットフォームがあり、当社の業務ノウハウの結晶とも言うべき基幹システムが問題なく稼働しています。IBMがIBM iやRPGを提供し続ける限り、当社は使い続け、外部からRPG開発者の供給が難しいなら、社内で育てていきます。まったくIT経験のない社員をJavaやPHPで開発者に育てていくのは難しいかもしれませんが、RPGという言語であれば、それが十分に可能だと考えています。

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株式会社トーカン

IBM i User Profile

運用歴:システム/36時代から
運用システム:販売管理システム、会計システム
RPGのプログラム本数:約1万1000本
開発言語:RPG
開発ツール:GeneXus
システム部門人員数 23名
構成 23名
20代 5名
30代 7名
40代 8名
50代 3名

COMPANY PROFILE

本社:愛知県名古屋市
創  業:1947年
設  立:1949年
資本金:12億4330万円
売上高:1688億円(2016年9月期)
従業員数:383名(2016年9月末)
事業内容:食品卸売業

http://www.tokan-g.co.jp/

[i Magazine 2017年 Spring (2017年3月)掲載]