Home モダナイゼーション/システム移行 ホクモウ | モダナイゼーションに向けて、「活かす資産」と「捨てる資産」を見極める

ホクモウ | モダナイゼーションに向けて、「活かす資産」と「捨てる資産」を見極める

by iida

オープン系への移行か
既存資産を活かすか

 ホクモウは1993年にAS/400を導入し、製網業務に特化した販売管理・生産管理システムをRPGで構築した。それ以降、5?7年の間隔でサーバーマシンをリプレースし、その都度、必要なシステム改善や機能拡張を実施してきた。社内に情報システム部門はもたず、導入以来、金沢および東京に本社を置く(株)エム・アイ・エス(以下、MIS)をパートナーとして、開発・保守・運用管理の一切を委託している。

 2011年にリプレースした後、通常のサイクルであれば、2016年過ぎに次のマシン更改を迎える予定であったが、システム運用の責任者である鯉野宏取締役(総務部 部長)は当時の状況を次のように振り返る。

鯉野宏氏 
取締役 総務部 部長

「AS/400を導入して以来、長年にわたり改修を重ね、業務に最適化したシステムを作り上げてきました。とくに大きな問題はなく、安定稼働を続けていましたが、次の更改が近づくにつれ、今後ずっとこのまま使い続けても大丈夫なのか、という漠然とした不安を抱くようになりました。既存のシステムやデータを本当に有効活用しているのか、今の業務に合わない機能をどう拡張していくのか、図面管理ソフトなど他システムとどう連携するのか、今後想定されるモバイルなど新しい利用スタイルをどう実現していくのか。こうした課題に、果たして今のままで対応が可能なのか、と不安を感じたのです」

 そこで2014年に入り、MISでは次期更改を見据えた2つの解決策を提案した。1つはオープン系サーバーへ移行して、スクラッチで全面再構築する案。もう1つは既存のプログラム資産を活かしつつ、新規開発により新たな機能や業務要件に対応させる案、いわゆるモダナイゼーションの提案である。

「2つをざっと試算したところ、オープン系へ移行すると、モダナイゼーションに比べて約3倍の工数が必要になると判明しました。オープン系は確かに自由度が高いものの、そこまでの工数とコストを費やし、リスク覚悟で移行する理由は見出せません。そこでスクラッチではないモダナイゼーション構想に考えを切り替えました」(鯉野氏)

 同社では2014年に提案を受けてから検討を重ね、こう結論づけた。そして2015年末に契約を締結し、翌2016年初頭からモダナイゼーションに向けたプロジェクトがスタートしたのである。

「活かす資産」と「捨てる資産」を
徹底的に分析する

 MISが示した方針は、既存資産を最大限に活用するため、「活かす資産」と「捨てる資産」を徹底的に分析し、見極めることであった(図表1)。

ホクモウの場合は、業務・システムフロー、Power SystemsとOS(IBM i)、DB、一部のアプリケーションは、「活かす資産」として継続利用する。一方、5250エミュレータや主要なアプリケーションは「捨てる資産」に位置づけ、新たに作り直す。そして捨てる資産は「Visual LANSA」および「Visual LANSA Framework」で新規に開発し直し、活かす資産は「RAMP」でラッピング開発する手法を採用した(製品はいずれもランサ・ジャパン)。

 DDSやRPGは修正せず、既存のDBもそのまま利用し、使用頻度の低い帳票、照会画面、マスタメンテナンスやバッチ処理については既存のRPGをRAMPでラッピングする。従来の使い勝手を保持するため、5250画面はカスタマイズせず、シンプルにGUI化する。

 またアプリケーションインターフェースにVisual LANSA Frameworkを採用し、主要な入力画面、照会、検索および機能拡張についてはVisual LANSAで新規開発した。

 プログラムの総本数は約380本(350機能)。その40%に相当する150本をRAMPで開発。52%、約200本をVisual LANSAで新規に開発。残りの8%、30本を既存改修している。

 開発に先立って、現在の課題や要望、追加機能の要件を明らかにするため、各部門でのヒアリングを実施した。総務部の前恭子マネージャーが全部門の取りまとめ役になると同時に、プラスチック事業部のヒアリングを実施。また営業部業務課からは保田章子チーフ、生産部からは西村由希チーフがプロジェクトに参加し、全員の意見や要望を集約した。 

前恭子氏
総務部 マネージャー

保田章子氏
営業部 業務課 チーフ

西村由希氏
生産部 チーフ

 これらのヒアリングをベースに、2016年4月から1カ月で要件定義を実施している。概要設計に約2カ月、詳細設計に3カ月。併行して進めた約5カ月間の開発期間を経て、同年末にすべての開発作業が終了した。そこから約2カ月のシステムテストを実施している(新しいPower Systemsは2016年夏に導入)。

 同社では4月が年度末になる。そこで、旧システムで決算を終えるため、約3カ月はプロジェクトを完全停止した。そして4月に入ってから主要なユーザーに操作トレーニングを実施し、テストランを終えた同年6月、無事に本稼働を迎えた。

 時間をかけてヒアリングし、ユーザーニーズを丁寧に収集した努力もあり、新システムは各部門で好評である。「商品の名称で検索が可能になった」「直感的なGUI画面で誰でも操作できる」「帳票のカラー化やプレビュー化ができる」「全社在庫の一括管理が可能で、不良在庫の削減が期待できる」「数時間を要していたバッチ処理が6分の1で完了するようになった」など、導入を喜ぶさまざまな声が寄せられている。データ参照権限の追加によりセキュリティ強化も実現しており、近い将来のモバイル運用も視野に入っているようだ。

 モダナイゼーションに取り組むうえで「活かす資産」と「捨てる資産」を徹底的に見極め、それにマッチする手法を選択した。DBをそのまま使用し、RAMPにより既存資産をラッピングすることで、通常より開発工数を削減し、短期間で高品質なシステム刷新に成功したと言えるだろう。

【i Magazine 2018 Summer(2018年5月)掲載】

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Company Profile

ホクモウ株式会社

本社:石川県金沢市
設立:1943年
資本金:1億4000万円
従業員数:256名(2016年4月)
事業内容:定置網漁業関連商品の製造・販売、漁具改良の提案、敷設、操業指導、コンサルタント業務、およびプラスチック製品の製造・販売。

http://www.hokumo.net/

1943年に北陸製網として創業。50周年を迎えた1994年、従来の枠に捉われない定置漁業専門メーカーとして企業体質の転換を図るべく、現在の社名へ変更した。漁網の製造・販売のみならず、定置網漁業に関連するあらゆる商品の提供、さらに漁場の調査・点検から、漁具改良の提案や敷設、操業指導、コンサルタント業務に至るまで、漁撈技術の専門家集団として幅広く事業を展開している。また事業多角化の一環として、自動車部品や各種容器などプラスチック製品の製造・販売にも進出している。

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