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事例|エム・シーシー食品株式会社 ~システム診断サービスを利用し、自社の今後について展望を拓く

COMPANY PROFILE
本 社:兵庫県神戸市
設立:1954年
資本金:9000万円
売上高:129億円(2019年8月)
従業員数:302名
事業内容:業務用および家庭用調理食品の製造・販売
http://www.mccfoods.co.jp/

前身は1923(大正12)年創業。1931年にイワシやいちごジャムなどの缶詰の製造を開始。以来80年以上にわたり、独自の切り口で商品を開発し、新しい食のトレンドを創造してきた。「世界の味と食文化を日本へ、日本の味と食文化を世界へ」が現在のキャッチフレーズ。

 

 

IBM iについて
一から手ほどきを受ける

 1954年に設立され今年65周年を迎えたエム・シーシー食品は、つねに時代を先取りするチャレンジ精神で、日本の業務用加工食品市場を切り開いてきた総合食品メーカーである。1950年代には「プレザーブ(果肉)タイプのいちごジャム」、1960年代には「調理カレー缶詰」、1970年代には「湯せんだけで焼き立ての味が楽しめる調理冷凍ハンバーグ」など、“市場初”となるジャンルの商品を次々に送り出してきた。

 さらに2000年代に入ってからは家庭用調理食品市場にも参入し、「100時間かけたカレー」などの100シリーズ、バラエティ豊かな「スパゲッティソース」シリーズ、丹波黒豆を甘煮した「味道・丹波黒」などのヒット商品を誕生させている。

 同社では1998年にメインフレームからIBM iへの切り替えを行い、あわせて基幹システムをRPGで全面的に再構築し、保守と改修を続けてきた。

 同社は現在、ベンダーのデータセンターにIBM iとWindowsサーバー数十台を配置し(ハウジング)、広域LANを使って、全国4カ所の支店、3つの工場、物流センターを結ぶシステムを運用している。

 情報システムを担当する石川真法氏(管理本部 情報システムグループリーダー 兼 経理グループ サブリーダー)は2000年の入社で、その当時は基幹システムの再構築を段階的に進めている最中だった。

「私は今でこそ、PCからサーバーや電話交換機まで会社のあらゆるシステムを“ゆりかごから墓場まで”担当していますが、入社当時は右も左もわからず、システム部門の先輩に付いてIBM iを一から勉強しました。その先輩は、IBM iはメインフレームと比べても格段に優れている、ということを常々口にしていました。私はその後、オープン系システムも含め担当しましたが、先輩からIBM iの手ほどきを受けたことが私自身にとっての大きな財産だと思っています」(石川氏)

 

 

大局的な観点から
専門家の意見を聞く

 石川氏は2016年にシステム部門のリーダーとなり、それ以降中心となってシステムを切り回してきた。そして一昨年(2018年)秋に自らの提案により、日本IBMの「ITインフラ最適化セッション」を導入した。

 このITインフラ最適化セッションとは、ユーザー企業のビジネス課題やIT課題などについて日本IBMとユーザー企業がディスカッションを行い、日本IBMがユーザー企業の現行システムの「診断」と「評価」、今後に関する「所見」を提供する無償のプログラムである(図表1、図表2)。

 

 

 当セッションを導入した動機について石川氏は、「私自身のなかでIBM iに対する信頼は揺るぎないものでしたが、その一方で、次々に登場する新しい技術を会社の方向性に合わせてどう活用していくか、全体の最適化をどのように図っていくかがテーマになっていました。先輩方が構築したシステムの継承や発展について、大局的な観点から専門家の意見を聞いてみたいと思い、私のほうから日本IBMにアプローチしました」と話す。

 

 

18の項目は「高いレベル」
2項目で「他社の平均を下回る」

「診断」の結果は、20あるアセスメント項目のうちの18項目で他社の平均値を上回り、「高いレベル」との評価を得た。そのなかで、とくに高く評価されたのは、システムのトラブル防止と安定稼働のための予防措置である。

 同社では従来、基幹サーバーの入れ替え時にキャパシティプランニングを綿密に行い、ライセンス期限までのリソース使用量を予測して、切り替え時にその全量を搭載するということを実施してきた。これは、「システム稼働後のリソース追加作業に伴うトラブルを回避するため」(石川氏)だが、コスト削減にもなる。

 また、IBM iもP05ではなく、あえてP10マシンを選択するという措置も講じてきた。

「当社の業務処理量から言えば、プロセッサ性能はP05で十分と考えられます。しかしRAS(Reliability Availability Service
ability:信頼性、可用性、保守性)の観点ではP05とP10には大きな開きがあり、当社のようにIBM iを1台で運用しつつ、トラブルによる停止が絶対に許されないシステムでは、万が一の場合を想定して、よりRAS性能の高いP10を選択してきました。そうした措置は、長い目で見れば余計な費用の発生を抑え、高性能で安定的な運用につながります」と、石川氏は理由を述べる。

 その一方、2つの項目について「他社の平均を下回っている」との指摘が日本IBMからあった。1つは事業継続性をレベルアップさせるための災害対策について、もう1つはIBM i上に膨大に蓄積されている業務データの活用についてである。業務データの活用に関しては、従来から主として営業担当者を対象に積極的に取り組んできたが、新たなビジネスチャンスの創造や競争優位を得るためのデータ活用の必要性が指摘された。

「挙げられた2項目については、以前からウィークポイントと感じていた点でしたが、どのように理解し対処すべきかまで踏み込んで指摘いただき、今後について具体的な展望がひらけました」(石川氏)

 災害対策については、次のステップへ向けてすぐに検討を開始した。現在、IBM iのバックアップ機を関東地区のデータセンターに配置し、関西地区にある現行データセンターとの間で事業継続性を高めるシステムを計画中である。

 

 

WindowsのRDP機能を使い
「できることから着手する」を実践

 一方、IBM i上の業務データの新たな活用については現在検討を進めているが、それとは別に「できることから着手する」(石川氏)との考えから、いくつかの仕組みを構築している。

 その1つに、営業担当者が外出先で利用するAndroid端末に5250画面を表示させる“基幹-モバイル連携”の仕組みがある。遠隔地にあるPC上のWindows画面を、WindowsのRDP(リモートデスクトッププロトコル)を使って取得するシステムで、外出先から自席のPCに入って5250エミュレータを立ち上げると、自席にいるのと同じ環境でIBM iを利用できる。また、PC上の各種ソフトウェアの利用も可能である。営業担当者用の端末をiPadからAndroidに変えたのを機に、システムを構築した(図表3)。

 

 

「以前に利用していたiPadはRDPとの親和性が低くRDPによる5250画面の使用を実現できませんでしたが、Androidに切り替えたのを機に、すぐに構築しました。費用はVPN回線を用意しただけで、ほかにかかっていません。今後も使える技術をどんどん使って、データの活用を簡単に行える仕組みを社内ユーザーに提供していくつもりです」(石川氏)

 石川氏は今、「先輩方が構築した基幹システムを継承していく重要性を痛感しています」と話す。

「IBM iは使えば使うほど、そのアーキテクチャの卓越性に気づかされます。私の使命は、そうした特性をもつシステムを、新しい技術を用いて発展させていくことだと認識しています」(石川氏)

 

石川 真法氏 管理本部 情報システムグループリーダー 兼 経理グループ サブリーダー

 

[i Magazine 2020 Spring(2020年2月)掲載]